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96.混乱、混乱、サプライズ!
起き上がったゴーレムは
だが棍棒は直前で停止し、ゴーレムは地と一体になっている上体の根元から折れてしまう。壊れたゴーレムと動かなくなった棍棒は何かに操られたように、嫌に滑らかさの欠けた直線的な軌道でこちらへ飛んだ。あっと言う間に巨大な影となり私達を呑むも、鉄村が檻を編み直そうとするより速く再度裁の
最後の瓦礫の影が私達を呑んでは吐いて過ぎ行く中、俯き加減の裁は手紙を肩越しに放って吐き捨てた。
「……何が美術館の魔法使いや」
「面晒すんやったらさっさと正体明かさんかいボケ!」
「親父!
それが合図のように、無数の円形の何かが影を落としながら頭上を駆けた。見上げると壁の内側へ落下していくゴーレムの瓦礫と入れ替わるように、『苦海の檻』によるモトロの群れがセンター方向からこちらへ放たれている。狙いは青砥部長だ。
だがモトロは青砥部長に届く前に、見えない刃でも受けたように身を引き裂いて落下する。落ちたモトロは建物にぶつかり、駅周辺で無数の土煙が上がった。
その土煙を掻き分け、裁のゴーレムが青砥部長へ襲いかかる。ゴーレム達が伸ばした腕や振るった棍棒に呑まれていく中、青砥部長のご機嫌な声が、拡声器でも使っているようにはっきりと聞こえた。
「
全てのゴーレムが、風船が割れたような音で弾ける。本当に風船になったような質感を持つ色とりどりの破片へ姿を変え、空を彩るように飛び散った。
青砥部長の声は並の人間でも聞こえる奇妙な明瞭さを持つようで、鉄村も青砥部長の声を頼りに、私と裁が見ている方向を見ると目を見張る。
「この声、あの美術部の部長か……!?」
裁とは全くの別方向にだが青砥部長も、その才能とそれを台無しにするような私生活のだらしなさで学校中に名を轟かせており、彼を知らない生徒はいない。
青砥部長は鉄村の声も聞こえているようで、驚く鉄村に嬉々として目を輝かせた。
「いーい反応だ少年! これだからサプライズってのはやめられない!
青砥部長は、逆様になって宙に浮いている所為でポケットチーフが抜け落ちそうになり、慌てて手で押さえる。続けてスクエア型メタルフレームの眼鏡も落ちそうになり指で押し上げた。
眼鏡を押し上げたばかりの手の陰で、青砥部長の表情がやや曇る。
「……いや先に、関係者以外は退いて貰うべきか」
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