23.もやもやインターネット
……まだ一年生なのに、卒業後の話とか超しっかり者。
感心するも困ってしまって、つい頭を右へ傾けて唸る。
「うーん……。私の進路って、生まれる前から魔術師って決まってたから」
「ええそうなんですか? そんなのおかしいですよ」
「魔術師の家に生まれたなら、珍しい話じゃないよ。鉄村だって生まれて間も無い頃から、家督を継ぐのを決められてたし」
「拒否出来ないんですか?」
「出来るけれど、する人は多くないかな。ほら、老舗の商家生まれの人とか政治家って、何代にも渡ってその仕事を続けるでしょ? それと同じ感じ。自分のお父さんとかおじいちゃんが、歴史のある家ならもっと多くの人が守って来たものを途絶えさせてまで、やりたい事があるって言い切れる人も多くないしね。魔術師って仕事上、重みもあるし。勿論危ない仕事だから、興味が無いならやらなくていいんだよ? 無関心な事の為に命を懸けろなんて、流石に魔術師でも言わないな」
「なら説得します」
「え?」
「
目を丸くして聞き返した私に、裁さんは大真面目に答えていた。
「義務でなくて意思によるものなら、考えが変わって他の事を始めても、罰せられたりしませんよね? なら私、これからも天喰先輩を美術部に誘います。
話しながら裁さんはスマホを取り出して、青砥部長を呼び出そうとする。
いや行動が
裁さんを止めようと慌てて身を乗り出すと、
果汁と分かる透明感はあるけれど、名前の通り、血みたいに真っ赤だ。ちょっと驚く。少し粘性が出る程度に片栗粉を混ぜて見せられたら、血だって勘違いするかもしれない。そうだ血って言えば今朝の吸血鬼、狩人は捕まえただろうか?
裁さんは気勢を削がれたような格好になりながらも、去って行く店員さんに笑顔で会釈している。……勢いこそこの通り凄まじいけれど、決して礼儀は忘れないんだよな、この子。
その隙にスマホを取り出すと、吸血鬼事件について検索してみた。……まだネットニュースにもなっていない。が、検索に用いた言葉の何かが引っかかったのか、今朝のぶよぶよマンとの一件を思わせるタイトルの記事が何本も現れる。内心ぎょっとしながら画面をスクロールするも、検索結果の一ページ目の全てが、もうぶよぶよマンと私についての情報で埋め尽くされていた。
背後から覗かれているような、寒気を覚える。
……見ない方がいい。嫌な気分になるだけなのは、もう何度も味わって覚えてる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます