ドッジボール

帆高亜希

第1話

今日の体育はドッジボールだ、いやだなぁ…。


私はドッジボールが大キライ、

だってボールこわいもん。


みんななんであんなに好きなんだろう?


たまに授業が中止になって先生が、



「今日は天気がいいから外でドッジボールをしましょう」



って言うとみんな、



「イエ~イ!」



ってよろこぶんだもの、信じられない!



ああ、

今日も当たらないようにしなくちゃ、そして最後まで残らないようにしなくちゃ…。


「ね、陽子ちゃん、お願いだからずっと内野でいてね」



私は仲良しの陽子ちゃんの洋服を引っぱってお願いした。



「うん、なるべくね!」



仲良しの陽子ちゃんはドッジボールが大好きで、いつもよくボールをとり、敵を当てていた。



ピーッ!



先生がホイッスルをならし、ドッジボールがはじまった。



はじめにボールなげるのは敵だ、早くにげなきゃ!



まず、体の大きな陽子ちゃんのうしろにかくれてにげた。


私はだれよりもちっちゃいから、

いつもみんなのうしろにかくれてにげるのだ。


ドサッ!



あっ!



陽子ちゃんがボールをとろうとして当たっちゃった!


早く敵を当てて中へ入ってくれないかな~!


タイヘン、敵がボールなげてくる!


他の大きい子のうしろにかくれなきゃ!






気がつくと私一人でにげまわっている…。


いっつも同じパターン、

今日こそ最後まで残りたくなかったのに…。


陽子ちゃんをはじめ、

他の子たちは敵のだれかを当ててもどってきても、まただれかに当てられ外野へ行ってしまう。


いいかげん、いたくなさそうなボールに当たっておしまいにしたいけど、

どれもいたそう…。



「おーい、宮坂!いいかげん早く当たれよー!」



敵の男子がはやしたてる。



私だって早く当たってラクになりたいよ!



でもどういうワケだか体が勝手によけちゃうし、当たっても体がちっちゃいからファウルになってしまう、どういうルールなのよ!


味方の外野を見る。

みんなドッジボールそっちのけでオシャベリしている!



陽子ちゃんまで…!




「陽子ちゃぁん、だれか当ててもどってきてよー!」



私はさけんだ。


すると陽子ちゃんはフッとわらって、



「ミドリ、いいかげんあきらめたら?」



ああ、いっつも冷たい!


すると味方の外野のみんながわらいだす、ひどいよ!



「おい、宮坂行くぞー!」



敵の男子が勢いよくボールを投げつけてくる…。









「 っ!」



私は自分の声にならない悲鳴で目が覚めた。



またあのころの夢か…。



あれから30年くらいは経つのに…。



小学校3年まではドッジボールが付き物で地獄だった。

毎回最後まで内野に残って駆け回っていた。

最初は当たりたくなくて逃げまわっているのに、最後には当たりたくて仕方ないから不思議だった。


ボールを取ることができないくせに、

とっさに避けられる反射神経の良さが、我ながら腹立たしかった。



なんでこんな夢を今さら見るのだろう?



もしかして、今の状況がドッジボールで一人だけ残ってしまっている感覚と似ているのかもしれない。



気がついたら、「アラフォー」と呼ばれる年齢になってしまった。



あの頃の同級生たちはとうに結婚してしまい、独身女性は私くらいしかいないだろう。



勇敢にボールを取って敵を当てていたあの陽子ちゃんが、先日結婚が決まった。



なんかあのときみたい…。


さて、

ここでどうする私?



あのころみたく逃げているつもりはない。



焦ってる?



焦ってないと言えばウソになる。

どうにかしたいけれど、どうにもならないあのころの自分と似ていてもどかしく、

だからこそこんな夢を見てしまったのかもしれない…。









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ドッジボール 帆高亜希 @Azul-spring

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