12月24日
クリスマスイブの日、夕方から雪みたいだから早く帰ってきてね、ってお母さんに言われながらみいちゃんと遊びに行った。隣の駅のショッピングモールの雑貨屋さんでお互いプレゼントを買って交換した。みいちゃんがくれたのはいい匂いのハンドクリームで、わたしがあげたのはかわいいハンカチだった。
四時ぐらいになって、雪が降ってきて、二人でちょっとはしゃいで、それからじゃあねを言った。
帰り道、一瞬だけ、行宏さんの家の近くまで行ってみようかなって考えて、でも、もし、もしその窓に明かりが見えたら、行宏さんに彼女がいるってことが本当に絶対のことになっちゃう気がして、そうやって思っただけで心臓がすごい痛くなって、だから走った。走って帰った。ばかみたい、ばかみたいってそれだけずっと頭の中にぐるぐるしてた。
家の前までついたとき、やっと少し落ち着いた。玄関のドアを開けるときにはもう、ちゃんと明るい声でただいまって言えた。キッチンでお母さんがシチュー作ってて、お父さんが買ってきたケーキが冷蔵庫に入ってた。ブッシュドノエルだった。
クリスマスだからってみんななんとなくウキウキしてて、寒かったんじゃない、ご飯の前にお風呂入ったら、ってお母さんの声もいつもよりもっと優しかった。窓の横にちっちゃいクリスマスツリーを飾って、お父さんがCDプレーヤーでクリスマスの曲のCDを流し始めたら、一気に雰囲気もすごいクリスマスっぽくなって、そしたらやっぱり楽しいなって思った。窓の外で空がどんどん暗くなって、雪もどんどん降ってきてた。積もるかな? ってちょっとわくわくする。
お風呂入って、上がって、髪乾かしてたら、夕ご飯できたよってお母さんが呼びにきて、リビングに戻ったらお父さんがお皿とか並べてた。
お母さんを手伝ってシチューをよそって運んで、みんな食卓にそろったらいただきますをして、おいしいねって言いながら食べて、ジングルベルが流れてて、それはすごい幸せなんだって思った。行宏さんのこと思い出しそうになってもがんばって別のこと考えた。だって今は楽しいんだから、行宏さんのことなんか知らない。
だいたい食べ終わったらお母さんがケーキを出してきて、お父さんが切り分けてお皿に乗せて、それもすごいおいしくて、ずっと楽しい夕ご飯だった。クリスマスってやっぱりなんか特別だなって思った。
そのあとみんなでテレビとか見たりして、十時ぐらいにおやすみを言った。静かで真っ暗な部屋でベッドに入って、だんだんうとうとしてきたとき、急に行宏さんのこと思い出しちゃって寝れなくなった。
行宏さんに会いたい。行宏さん、今、彼女と一緒にいるのかな、嫌だ、そんなの絶対嫌だ。あのかっこいい顔で、すてきな笑顔で、今誰の顔を見てるの? 嫌だ。だってそれはわたしじゃない。嫌だ。嫌だ。わたしと一緒にいないんだったら、誰とも一緒にいてほしくない。でも、会ったらどうせちゃんと喋れないくせにこんな自分勝手なこと考えてる自分がいちばん嫌だ。こんなに大好きなのに、なんて、ばかみたい。
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