第5話・拠点は何処に?その前に新米助けちゃった子

「ところで、アリシア様は拠点を持たないのでしょうか?アリシア様程の資産が有ればエレノの町中に拠点を持てますが?」

「拠点ですか?そうですね……いつまでも快適なポンチョさんの宿に居るわけにもいきませんかね……」(うーん、快適なんですよね……)

《うむ、俺もポンチョの宿は好きだな》


「いえいえ、ギルド的にはアリシア様にポンチョの宿屋を拠点として頂いても全く問題は御座いませんよ。只、一般的な冒険者の方々ですと、パーティーの装備やアイテムなどを置くスペースとして広い拠点を持つ方々が多く、鉄級上位ランクの方は大抵がギルド近くに拠点を構えていらっしゃいますので如何かと。だいたい賃貸契約ですと冒険者一人用の部屋が一月で銅貨五十枚、パーティー用が銀貨一枚ですね。購入を希望でしたらば安い物件で金貨ニ十枚程です」


「うーん、暫く考えようかと思います。現状が快適過ぎて不便が全く有りませんから」(ほんと快適過ぎて……太りそう)


《うむ、あの場所は確実に太るな。既に胸や腰まわりが太り始めている》


(う…師匠、これは凄く痛いんですよ!)


《あー、確か成長痛だったか?手足も伸びてるし間合いが掴めんのは困るな》


(師匠……)


「左様でございますか。一応、拠点を購入される場合は金貨ニ十枚程で良い物件が有る事を覚えておいて下さいね。パーティー単位でも住めますから長く見ればお得です。当ギルドと致しましても、アリシア様程の優秀な冒険者がエレノに拠点を構えて下さると大変助かりますので、是非とも御一考下さいませ」


「はい、ゆっくりと考えてみますね。では、また明日」

「はい、本日もギルドのご利用ありがとうございました」


 アリシアがギルドを出ようとするとぼろぼろの冒険者が転がり込んで来ました。どうやら、ゴブリン辺りと戦闘して怪我をしたようです。


「すいません!傷薬とポーションは有りますか!仲間が酷い怪我を負ってしまって死にそうなんです!」


「大丈夫ですか?ちょうど普通品質+ランククラスの傷薬とポーションが入荷しておりますので販売可能です」


「では、ポーションをお願いします!」


「普通品質+のポーションは一本金貨二枚ですが持ち合わせは有りますか?」


「く、今は装備を更新中で持ち合わせが足りません。なんとかなりませんか?」


「それは…真に申し訳無いのですが規則でお譲り出来ません」


「畜生……どうしたら良いんだ……」


 冒険者達はどうやら新米らしい。


 アリシアが一日で白金貨1枚以上を稼いでいるので金貨二枚なんて安いものだと思うと全くの誤解で、石級ランク冒険者の一月の稼ぎがだいたいを金貨一枚を下回る位であり、当然な事にゴブリンは鉄級ランク下位モンスターで有るので低ランクの冒険者だと返り討ちにあったりする。


 目の前にいるパーティーもそんな部類で有る。


 意気揚々と薬草採取の依頼を請け、ホーンラビットなどを狩りつつ森の奥に進んだ結果、格上のゴブリンと遭遇して討伐したは良いものの、メンバーが深傷を負って自家製の薬草を擂り潰しただけの粗悪品の傷薬でなんとか止血してエレノの町まで戻って来たが、装備を新調したので金はない。


 メンバーの状態は悪化していくばかり、それを黙って見ていられるアリシアでは無く、師匠が止め、ターシャも止めたが、ぼろぼろになったパーティーに走り寄って治癒の魔法を唱えてしまう。


《いかんアリシア!》


(でも!私なら助けれるんですよ!)


「アリシア様!ギルド内で魔法はいけません!」

「エクストラエリアヒール!」


《やっちまったか……もう少し周りを見て思慮深く生きろよ馬鹿者!》


「アリシア様、困りますって!」


 アリシアが魔法を唱えると優しい光が冒険者達を包み込み、深傷を負っていた冒険者の傷がみるみる塞がっていく。


 本来、冒険者の依頼中の怪我は自己責任でギルドのポーション販売を妨げるような行為はルール違反なのだが、それを理解出来る程アリシアは大人では無かった。


キラキラ……ホワホワ……。


「え?傷が……塞がっていく」

「うう……身体が……動く?」

「なんだこれ?」


「皆さん、大丈夫ですか?」


「えーと、貴女はネームドのエルダーゴブリンジェネラル討伐の英雄の魔法使い殿ですよね?聖女様なんですか?」


「はい、咄嗟に治癒魔法を唱えましたが……ギルドのルール違反でしょうか?」


「アリシア様、本来はギルドの利益を失する行為はルール違反では有りますが……我々は冒険者同士のいざこざや利益供与に関しては感知しません。あまりに酷いルール違反やギルド内での戦闘行為は流石に止めますが、今回はあくまでも軽いルール違反程度ですので大丈夫です。石級ランクパーティーの燕団の方々はアリシア様に感謝して下さいね。それと、燕団の方々も事前に傷薬やポーションを用意しておかないと危険ですので要注意して下さいませ」


 燕団は12歳~14歳の石級ランク冒険者6人パーティーで、戦士3人、弓兵2人、シーフ1人のバランスが良いパーティー、薬草などの採取メインの依頼を請けており、エレノの町を拠点にしている。





今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!


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