第84話・エルダーゴブリンジェネラル討伐式典②

現在、エレノ町の役場前広場では町長主導の元、エルダーゴブリンジェネラル討伐の式典が盛大に執り行われていた。


式典の開催者であるデュヴァル・リュパン伯はエルト小国の伯爵でありエレノの町長をしている。平民にも貴族にも等しく接する好人物だがエルト小国内の政治的にはやや?いや、かなーり脆弱さが目立つ苦労人である。


 基本的に魔物の森に囲まれたエレノの町から西と南の小さな地域を所領とする弱小貴族だが、領内ではエレノの町の通行税と人頭税、西の廃坑跡ダンジョンの素材収益以外にまともな収益を得る場所はない。


今回のエルダーゴブリンジェネラル討伐のおかげでエルト小国の国王から昇爵や報奨が与えられるのは棚からぼたもちで万々歳であり、エルダーゴブリンジェネラル討伐の功績者であるアリシアに対して多少の恩が売れるならば避難民の優遇程度はこちらから願い出たい位であった。


「魔法使いアリシア殿にエレノ町の町長として改めて表彰させて頂く。皆、エルダーゴブリンジェネラル討伐の若き英雄に再度拍手を!アリシア殿、乾杯の前に一声お願いします」


パチパチパチパチパチパチ!


「魔法使い殿万歳!」「小さな英雄だ!」「すごいぞ嬢ちゃん!」


「えーと、今回の勝利は一緒に戦って下さった兵士さんと冒険者達のおかげです!ありがとうございました!」


「あー、魔法使い殿にはアーサー・リンバルト将軍からエルダーゴブリンジェネラルの莫大な懸賞金を受け取りに王都まで来るように指示が出ていますので宜しく頼みますね」


「はい、なるべく早く向かいたいと思います」


「ははははは、私も王都から代官が来しだいのタイミングで王都に向かいます。アリシア嬢は半年位なら王都の方々を待たせても大丈夫ですので、ゆっくり王都に向かって下さい。とりあえず、魔法使い殿の要望である名もない村の避難民への一時金とエレノへの移住に関しては私の名前で証書を書いて保証いたしますよ。エルダーゴブリンジェネラルの討伐、本当にありがとうございました」


「いえいえ、避難民の受け入れをありがとうございます。エルダーゴブリンジェネラル討伐に関しては皆さんの協力が有ったからの結果ですので!」


「ははははは、冒険者の方々からは全てアリシア殿の手柄と聞いておりますよ。一人でエルダーゴブリンジェネラルと闘われたと。おかげでこちらも昇爵や報奨などを得られるのですから感謝に堪えません。では、堅苦しい話はやめて宴会を始めましょうか。アリシア殿も楽しんで下さい」


「はい、楽しませて頂きます!」


《アリシア、分かってると思うけど酒は禁止だからね》


(はい、師匠……)


「これよりエルダーゴブリンジェネラル討伐を祝して宴会を始める!みんな、今日は存分に飲んで騒ぐと良い!さあ、杯を取れ!乾杯!」


「「乾杯!!」」


 アリシアはリュバン伯爵からの感謝状と村人達への待遇に関する書類を受け取り、代わりに討伐したエルダーゴブリンジェネラルの身体を提供する事となった。


 その代わりにアリシアがエルダーゴブリンジェネラル討伐に向かった後に行われた剥ぎ取りで収集された三千匹ほど分の莫大な量のゴブリンの装備や魔石にカードなどを受け取る事になってしまう。


「しかし……本当に宜しいのかな?魔法使い殿が討伐したエルダーゴブリンジェネラルの身体をエレノの町に頂いても?」


「はい、たまたま持って来ただけですし、首はリンバルト将軍が王都に運んで下さるそうなのでエルダーゴブリンジェネラルの身体は要りませんし」


《アリシア、あの中身空っぽの死体でも魔素が大量に詰まったエルダーゴブリンジェネラルの死体だぞ?色々と錬金やらの素材に使えるんだがな》


(師匠、気持ち悪いので私はあんまり欲しく無いです)


《ま、いっか。あの死体は本物じゃないからなー、一番必要な魔石はこっちに有るし》


「ふむ、左様ですか……これはこれで色々と大変な価値が有るのだが……まあ、魔法使い殿の好意、有り難く防腐してエレノの町の広場に飾らせて頂こう」


「えーと、これを広場に飾るんですか?この気持ち悪いデカい死体を?」(え?)


《あー、この程度の町なら強力過ぎる護符代わりに丁度よいだろ》


(護符?)


「本来はアリシアさんが王都のオークションなどで売却するのが普通なんですが、これを広場に飾らせて頂ければ上級、中級、下級を問わず魔物の森のモンスターは近寄れなくなりますし、そうなると町の外も浄化されて木材が手に入るので非常に有り難いのですよ」


「はあ……お守りみたいなものなんでしょうか?」


《ほれ、子供の時に渡しただろ?あの首飾りも魔物の棲む森の奥に居る俺の配下の強い魔獣の毛とかが材料だったんだぞ》


(あー、そうなんですね)


「はい、かなり強力なお守りですね。では、アリシアさんも宴会を楽しんでいって下さい」


「はい、楽しませて頂きます!」







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