第83話・エルダーゴブリンジェネラル討伐式典①

「魔法使い殿バンザーイ!」

「魔法使い様って可愛い!」ざわざわ…ざわざわ…


「うー、恥ずかしいですー」ブツブツ…

《ま、仕方あるまい》


「師匠、私こんな可愛い服初めて着ましたー。スカート?ひらひらしてスースーして下半身が心許ないですー。ブラジャー?ショーツ?も初めてですよ師匠ー」ブツブツ…

《アリシア……あんまり男の俺にそういう話を振られても分からんぞ?見た目は美少女と言っても差し支えないし、お前は一応、今後は魔法使いで通すらしいから今は武骨な装備は要らんだろ》


「ううう……でも、みんなこっち見てますよー」ブツブツ…

《慣れろ!コレも修行だ!笑顔で手でも振っておけ!》

(うー、は~い師匠……)


 本日はエレノ町の中央に有る役場前広場でエルダーゴブリンジェネラル討伐の式典が執り行われる。民衆の前に現れたアリシアはサラサラした銀髪にパッチリ二重で可愛らしくも愛嬌があり、十歳とは思えない身長と発育した身体にスラリとした手足をレースがあしらわれた蒼いワンピースに包まれ、冒険者を後ろに従え登場した。


「あー、では今回のエルダーゴブリンジェネラル討伐の功績を称え、魔法使いアリシア殿にはエレノ町の栄誉町民の称号と町の施設で使える各種サービスの目録を与える!皆も町の英雄であるアリシア殿に敬意を払ってくれ!改めて魔法使い殿達には感謝する!」


パチパチパチパチパチパチ!


アリシアは伯爵から目録を貰うと民衆の拍手には、少しはにかみながら手を振って応える。


「いいぞ魔法使い殿ー!」

「冒険者達も頑張ってくれてありがとう!」ざわざわ……


「続いて冒険者代表!蒼き盾クランの団長アイオス殿を含めた勇士達に報酬を与える!皆よ!北門、西門、そしてゴブリン達を追撃して撃破した彼等に拍手を!」


パチパチパチパチパチパチパチ!


「うおー!冒険者スゲーぜ!」

「さすが!アイオス!」

「エレノオーガ万歳!」


 アイオス達は伯爵から大きな革の袋を受け取ると民衆に向かって手を振って力こぶを見せつけた。


「ガハハハ、照れるなこりゃー」

「臨時報酬は助かるっすね。セシリーに何か買っていくっす」


「ジャッシュはマジで娘にべったりだなー。お前、娘を嫁に出す時に大変だぞ?」

「セシリーちゃんは妻を病気で亡くした俺っちの宝です!まだ六歳なんすよ!まだまだ嫁にいかせるつもりは無いっす団長!」


 ジャッシュは蒼き盾クランの団長アイオスの右腕であり、銅級上位のシーフであり、会計や細かい書類にギルドとの調整などをこなす苦労人である。そして、愛する妻とはニ年前に死別している。


 そのため、現在六歳の娘のセシリーには非常に甘く大切に育てている。


「あー、すまん。俺もアリシアのあの可愛い姿を見たら、妹分のアリシアが変な木っ端貴族や教会とかに連れてかれたらガチでキレると思うわー」

「そうっすねー」


 アイオスもこの数日でアリシアの事を妹のように可愛がっており、無謀にもエルダーゴブリンジェネラル討伐に着いていったお調子者達を無事に連れて帰ってくれた事にも感謝していたのは他の冒険者達も同様である。


「キャー!アリシアちゃん可愛いー!」

「あの子には後で色々と女の武器を教えましょ!」

「今日はお姉さん達と着せ替えパーティーね!」


「あー、姉御達もメロメロだな。コレはアリシアになんかしたらエレノ中の冒険者がキレるな……」

「そうっすね団長……冒険者だけじゃ無さそうっすけど……」


「あー、ほんじゃ、アリシアが治癒魔法の使い手で凄腕の薬師ってのは誰にも知られんように手配しとけ」

「そこは大丈夫っすね。ターシャ姐さんには伝えときましたし、衛兵達は既にアレっすからね……」


「あー、アレな……アリシアファンクラブかー」

「アリシアちゃん、めっちゃ人気有るっすからね」


 尚、アリシアが魔法使いである事は、本人の意思にかかわらず有る程度は今回の式典で町民達に周知されてしまったものの、エレノに現れた謎の聖女で有り凄腕の薬師である事は冒険者ギルドの各冒険者達が冒険者ギルドの副ギルドマスターのターシャと自称アイオスお兄ちゃんと愉快な仲間達、アリシアファンクラブの面々が中心となり完全に秘匿し、エレノの町の義理堅い兵士達も命の恩人であるアリシアが他勢力の無駄な面倒事に巻き込まれないように配慮して仲間内だけの秘密とする。


「うっし、お前ら!アリシアちゃんが天使のような聖女だって事は絶対に漏らすなよ!」

「もちろんすよ!」

「アリシア嬢がクソみたいな貴族や教会なんぞに連れてかれたら目もあてれんしな」

「アリシアちゃんは我らの天使だからな!」


 エレノの衛兵隊員は既にアリシアファンクラブと化していた為、その結束はオリハルコンよりも硬い。


 そして式典は続く。


「あー、それから名もない村からの避難民の方々にもアリシア殿の獅子奮迅の働きを鑑みて各自一時金と町営住宅の優先貸与権を与える事を応募中の町民の皆には許してほしい。町営住宅は次々と建設予定なので抽選に漏れても今少し我慢してくれ」


「魔法使い殿の仲間なら大歓迎だ!」

「ま、優先貸与は羨ましいが魔法使い殿の仲間だしな!」

「あー、また抽選に漏れるのかー。ま、仕方ねぇか」


 エレノの町の住民からは凄腕の魔法使い、エルダーゴブリンジェネラル討伐の大英雄、エレノの町を守った守護神的な扱いが為され、アリシアの活躍のおかげで名もない村からの避難民は一時金として各自金貨五枚と町営住宅の優先的な貸与権が与えられた。


 

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