第50話・ゴブリンに囚われた村人達
エレノ防衛戦四日目、アリシアの登場によりエルダーゴブリンジェネラルの軍は退却し二日経ち、エレノの町ではピリピリしていた空気が少しばかり緩んでいた。
「おい、斥候部隊が東の魔物の森付近でエルダーゴブリンジェネラルの群れを監視してるみたいだぞ」(魔物の森って…かなり遠いよな)
「ふーん、もう二日も襲撃して来ないんだし、エレノの町を襲うのは諦めたんじゃねぇか?魔法使い殿に散々蹴散らされたからなー」(もう、ほんと勘弁してくれよ)
「いやいや、エルダーゴブリンジェネラルの群れが、他のゴブリン達の群れと合流してるらしい。どうやらゴブリンシャーマンの別働隊がいたみたいで数は5千近くになりそうだ」(最悪だ)
「マジかよ!また増えんのか?脅威度どんだけ上がるんだよ!」(うわ、めんどくせぇ)
「ああ、しかもな、斥候部隊の情報だと、エルダーゴブリンジェネラルの群れが野営してる洞窟の中には生存者達がいるかもしれんのさ」(これが大問題なんだよな)
たまたまポンチョの食堂に向かって歩いて居たアリシアは、その兵士達の情報に食いついた。
「あの、その生存者とは?」(まさか、村のみんなじゃ?)
「おお、魔法使い殿、どうされましたか?」(あちゃー聞かれたか)
「今、ゴブリンの野営地の洞窟内に生存者がって言ってましたよね?」(やっぱりみんな生きてたの?)
「はい、エルダーゴブリンジェネラルとゴブリンシャーマンの率いる群れの野営地、東の洞窟内に人間が囚われているようですが……詳しい情報は有りません」(誰かって情報は曖昧なんだよな…)
「もしかしたら、囚われているのは名もない村の人達でしょうか?」(どうなのです?)
「そうですね。情報が曖昧なので判断出来ませんが東の洞窟にてエルダーゴブリンジェネラルが他の群れであるゴブリンシャーマンらしき群れと合流、遠見の魔道具で確認された洞窟内にはエレノの兵士もいるようですが、村人らしい者も居るとか……ここ2日で数名が洞窟内から運ばれてエルダーゴブリンジェネラルに食われたそうですが……」(まあ、今は無事とは思えないけど)
「直ぐに皆を助けに行きましょう!」(助けなきゃ!)
「いやいや無理ですよ!魔法使い殿。それは無理です!エルダーゴブリンジェネラルとゴブリンマジシャンが率いる5千に届く大群がいるんです!無理ですよ!」
「どうかお願いします!村のみんなを助けて下さい!」(みんなを助けなきゃ!)
「うーん、現状ゴブリンの数が多すぎます。合流したゴブリンと合わせれば5千匹以上の大群なんです!せめて半数以下まで減らせれば、援軍が到着次第ギリギリ攻勢も出来ますが……」(なんせ5千匹近くいるんですよ?)
アリシアは必死に仲間の救出を進言するが、エレノの兵士達からは色良い返事は貰えない。尚も言い募るアリシアだったが、それに兵士隊長が横やりを入れた。
「魔法使い殿、気持ちは分かりますが現状は無理ですな。兵士の数が全く足りません。王都からの援軍が到着すれば救出するのもやぶさかでは有りませんが、こちらの守備隊は千人以下なのです」(こちらは全軍で千人以下、冒険者も合わせてもゴブリンの数以下ではさすがに無理ですな)
アリシアが東の洞窟に囚われた仲間の救出を兵士達に嘆願している時、王都に目掛けて昼夜を問わず、馬を潰す勢いで伝令達の早馬は動いていた。エレノの町へのエルダーゴブリンジェネラル侵攻、グラントの街ではオークキングとの攻防戦が行われている中、王都には状況を報せる伝令の早馬が一人、二人と到着している。
「伝令!大変です!エレノの町に東の森からエルダーゴブリンジェネラル率いるゴブリンの大群が攻めて来ました!」
「こちらはグラントの街からの伝令です!グラントの街にドワーフ領セレニム方面からオークキング率いる5体のオークジェネラル率いるオークの大群が押し寄せています!」
「うむ、伝令ご苦労!即刻、国王様に奏上する。詳しくは国王様が直接聴かれるゆえ、身なりを整えた後に王の間へ急ぎたまえ」
「「畏まりました!」」
現在、エルト小国では困った事態が起こっている。それはエレノやグラントでのモンスター災害も含むものの、現状より深刻なのは隣国との戦争であった。
エルト小国の西側にはリアナ大陸東端の国々の中でも特に広大な版図を誇るカリオン帝国のカルナック辺境伯領が広がっており、カリオン帝国の国是として平和を尊ぶカルナック辺境伯は魔物多き国で有る隣国のエルト小国の自治も認めており両国は同盟も結び、その関係は良好なのだが半島の根の部分より山脈で隔たれた北東に広がるオーランド帝国とは非常に仲が悪かった。
カリオン帝国のカルナック辺境伯領はエリアナ半島の根の北西にもさらに大きな所領を持ち、エリアナ半島の山脈に隔てられた北部、西部、南部にまで支配が広がる肥沃な土地と豊かな鉱山資源の有る帝国領である。
このカリオン王国のカルナック辺境伯領はエルト小国の数倍の規模の領地を統治しており、エルト小国は大量の魔物由来の素材との交易や魔物を直接自領に押し寄せなくする壁の意味でもカルナック辺境伯は重宝していた。
北のオーランド王国の所領はカルナック辺境伯やエルト小国よりも大きいものの食料以外の各種資源には乏しく、常に各種の資源豊富なカルナック辺境伯領とエルト小国を狙って軍を差し向けて来ているのだが……今回も半月ほど前からエルト小国側に侵攻を開始し、これに対してエルト小国は二人の将軍と兵士5万がオーランド王国と隣接する北のライバホルン城塞都市に駐屯、カルナック辺境伯領からも応援として将軍一人と3万の兵士が近くの交易都市であるカルコス近郊の野営地に送り込まれてオーランド王国軍10万と睨み合いを続けている状況である。
今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!
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