第71話・ズタボロなのに…何してるんですか?


 女の冒険者達(後衛職の狩人やシーフ)はアリシアを木陰に運ぶと、辺りをぼろ布で仕切ってアリシアのぼろぼろの装備を脱がせ、身体を丁寧に拭くなどの介抱を開始し、男達はゴブリンジェネラルとゴブリンナイトの死体から剥ぎ取りを開始する。


 女冒険者達はアリシアの身体を覆うどす黒い内出血に顔をしかめた。ここまでのダメージを受けながらも自分達を守ってくれたアリシアに感謝し、散乱した道具袋から傷薬やポーションを取り出すと入念に塗り付けていった。


「よう、みんな!コイツらの素材はどうするよ?」(これは魔法使い殿の戦果だよな)


「おいおい、それは聞くまでもないだろ?」(全部魔法使い殿の戦果だよ)


「おーい、エルダーゴブリンジェネラルの巣穴に色々と有ったぜ!隠し部屋に金銀財宝の山が有る。とりあえず、酒と肉はどうする?」(もちろん財宝は魔法使い殿に献上するがな)


「ははは、それを聞くなよ。宴会だろ!」(もちろん飲むに決まってるだろ)


 鉄級ランク冒険者達は瀕死の筈だった自分達を救ってくれた小さな魔法使いの前に山のようにエルダーゴブリンジェネラルの巣穴から集めた戦利品を並べ、巣穴の隠し部屋から大量に持って来た酒と食べ物で冒険者達は宴会を始めた。


 こんな場所でも宴会を開く冒険者は根っからの冒険者なのだった。


 エレノの町に襲来したエルダーゴブリンジェネラル率いるゴブリンナイト隊との死闘の果て、満身創痍となりながらも見事にこれを討ち取ったアリシアと鉄級ランク冒険者達であったが帰還までにはかなりの時間が掛かった。


先ずは翌朝…


「あの…鉄級ランク冒険者の皆さん、お酒はほどほどにお願いしますね」(じと…)


「「「すんませんでした!」」」


 鉄級ランク冒険者達は全員アリシアの前で正座している。


次いでアリシアと女冒険者達に見事な土下座をしていた。


何故、このような事になったのであろうか?


※もう、分かりきってますよね。


 前日、アリシアが自らに掛けていた封印を解き、師匠の力を借り、闘気と付与魔法による攻撃でエルダーゴブリンジェネラルを討伐し、瀕死の冒険者達にエリアヒール系の魔法を命を削るように連発して唱えた結果、鉄級ランク冒険者達は完全に回復するも、アリシアは封印解除と闘気、付与魔法の限界使用と治癒魔法の行使による肉体と精神への疲労と魔力の欠乏により気絶してしまう。


 アリシアの治癒魔法により完全回復した鉄級ランク冒険者達は次々と目を覚ますと、エルダーゴブリンジェネラルの死体と気絶したアリシアを発見して驚きつつ、起きたアリシアからエルダーゴブリンジェネラル討伐の経緯を聞く。


 疲れきったアリシアは冒険者達の安否を尋ねてから再度気絶してしまい、アリシアの介抱と並行して討伐したゴブリンナイト達の装備や魔石、カードなどの剥ぎ取りを行い、エルダーゴブリンジェネラル達が拠点としていたであろう巨大な洞窟を発見して中を調べた。


 冒険者達が3組に分かれ、アリシアの介抱、エルダーゴブリンジェネラルの巨大洞窟の探索、ゴブリンナイト隊やゴブリンジェネラル達の剥ぎ取りも終わり、巨大な巣穴から大量の宝物を見つけ、更に時知らずの魔法の特大袋から大量の食糧と酒樽を見つけた冒険者達は戦勝祝いの酒盛りを始めてしまう。


 最初はちょっとした息抜きの祝勝会的なノリもあった冒険者達であったが、ここ数日間のエルダーゴブリンジェネラル襲来での緊張感がほぐれ、ついつい深酒をする事となる。


 もともと鉄級ランクのベテラン冒険者には良くも悪くも馬鹿が多く、一部の真面目な女冒険者達の制止も聞かず、エルダーゴブリンジェネラルやゴブリンが人間の食べ物に興味が無かった為に貯め込むだけ貯め込んで放置していた高級な酒が入った酒樽を開けに開けた。


「よし、みんな杯は持ったか?」


「「「おう!」」」


「ぎゃはは、まずは一杯、エルダーゴブリンジェネラル討伐の魔法使い殿万歳!」


カチン!ぐびぐび……


「次は瀕死の重傷から生き残った強運に乾杯!」


カチン!ぐびぐびぐびぐび……


「あー!あんた達なにしてんのよ!私達の分は?」ギロリ…


「お、おう、ここにちゃんと有るよ」(姐さんの目が怖いわ……)


 女達は満身創痍で全身ズタズタボロボロになったアリシアを全身綺麗にし、傷薬を塗り込み、ポーションを飲ませ介抱し終わり、祝勝会を勝手に始めた男衆に遅れてやってきた女冒険者も加わり、冒険者達の騒がしい宴は深夜まで続く。


 アリシアは傷薬とポーションのおかげで見た目ほぼほぼ身体のダメージは抜けたものの、限界突破した疲れで気絶したまま眠り続け、鉄級冒険者達の宴は止まることを知らなかった。


ドンチャン♪ドンチャン♪ドンチャン♪ドンチャン♪


「ぎゃはは♪」


「呑め呑め~♪」


「みんな踊るぞ♪」


やんややんや♪


「よし、ドラゴンの真似!ブレス!」ブー!ボボボーー!※口から強い酒を松明に吹き付ける


「ぎゃはは♪やれやれ~♪」


「次はなんだ♪」


「よし、裸踊りだ!」


 当然、ドンチャン騒ぎの末に宴会芸が始まり、男衆が全員揃って裸躍りを始めた頃、女冒険者達は呆れ果てて早めに眠りについた。


(あんた達はナニしてんのよ?)


(馬鹿?馬鹿なの?)


(呑みすぎでしょ!)


やんややんや♪


ドンチャン♪ドンチャン♪


やんややんや♪


ドンチャン♪ドンチャン♪


(((もう、呑めましぇん)))


そして、夜は更けていく…


 



今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!

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