第70話・命を燃やす治癒魔法

《アリシア!自らの生命力を燃やしたマナを使うのは危険過ぎる! お前が死んだら元も子もないぞ! 》


(私は誰も死なさない!)


 アリシアは残る有りったけのマナを駆使して治癒魔法を掛け続ける。


「ローエリアヒール! 」 「ローエリアヒール! 」 「ローエリアヒール! 」……


 治癒魔法上昇、魔法強化上昇、魔力制御上昇、多重魔法スキル入手……淡い癒しの光が鉄級ランク冒険者達を包み込むが未だ瀕死の重傷、アリシアは更なる成長をしながら治癒魔法を次々と行使する。


「エリアヒール! 」 「エリアヒール! 」 「エリアヒール! 」……


 治癒魔法上昇、魔法強化上昇、魔力制御上昇、魔力増幅スキル入手……アリシアの無茶苦茶な魔法の行使で少しずつ強まる治癒の光が瀕死の鉄級ランク冒険者を包み、少しずつ傷を塞いでいくがまだ足りない。さらに進化していくアリシアの治癒魔法。


《アリシア!もう少しでマナが完全に切れるぞ! 今まで貯め込んだ魔力結晶を使え! 》


(はい!)


「ミドルエリアヒール!」「ミドルエリアヒール!」「ミドルエリアヒール!」……


 治癒魔法上昇、魔法強化上昇、魔力制御上昇……徐々に治癒魔法の力が増し、冒険者達が瀕死状態から少しずつ癒されていくがまだまだ瀕死状態。余力は無くなりつつあるが魔法を止めない。


《えーい、マナの消費が激しすぎる! 魔力結晶ではマナの回復が追いつかん! 》


(マナが切れても、魔力結晶が無くなっても、私はみんなを助けます!)


「ハイエリアヒール!」「ハイエリアヒール!」「ハイエリアヒール!」……


 治癒魔法上昇、魔法強化上昇、魔力制御上昇……瀕死状態から重傷状態に変化しつつある鉄級ランク冒険者達、魔力が尽き果ててもアリシアの詠唱は止まらない。今まで貯め込んだ魔力結晶と命を燃やして魔力に変換しつつ治癒魔法を行使し続ける。


《魔力消費に魔力結晶が全く追いつかん! アリシアのプラナがマナ変換されている。このままでは死ぬぞ! 》


(それでも……私は誰も死んでほしくない)


「エクスエリアヒール!」「エクスエリアヒール!」……


 治癒魔法上昇、魔法強化上昇、魔力制御上昇……魔法を行使するたび、アリシアの命がどんどん削られていく。重傷状態から脱して徐々に状態が安定していく鉄級冒険者達。既にマナと魔力結晶を使い果たし、プラナを削りながらも更に治癒魔法を行使する。


《アリシア! それ以上は死ぬぞ! 》


(師匠……)


「マキシエリアヒール!」パタン……


《クソ、お前が一番重症ではないか!》


 治癒魔法上昇、魔法強化上昇、魔力制御上昇……エリアヒールは治癒魔法の範囲系治癒魔法でローからマキシまでの段階まで威力が上がっていく。最低限のローエリアヒールでも簡単な傷や打撲などは完治する。マキシエリアヒールになるとそこそこの重傷もたちどころに癒す。


 喉が渇れ、魔力が尽きるまで治癒魔法を行使して朝日と見間違う程の凄まじい治癒の光が冒険者達を包み込むと……アリシアは全ての力を完全に使い果たして意識を失う。


そして数時間後…


 鉄級ランク冒険者はのそのそと起き出した。装備がぼろぼろになりながらも怪我一つ無い状態で目覚めた鉄級ランク冒険者達はお互いの姿を見て唖然とする。


「うん?俺達は生きてるのか?」(あれ?生きてる)


「えっ?傷が……無い?」(魔法使い殿は?)


「はっ?」(あの後、どうなったんだ?)


 次々と起き上がる冒険者の面々の前に、膝をつき首をはねられたレプリカのエルダーゴブリンジェネラルの亡骸と、無念の形相のまま跳んだ生首が転がっていた。


「ええ!?エルダーゴブリンジェネラルに魔法使い殿が勝ったのか?」(マジか?)


「ま、魔法使い殿!魔法使い殿!」(血だらけじゃないか!)


「魔法使い殿!大丈夫なのですか!」(酷い顔色だ)


 地面に横たわるアリシアの顔面は蒼白、エルダーゴブリンジェネラルの血を浴び、身に纏う装備はぼろぼろでぐちゃぐちゃである。弱々しく立ち上がるアリシアはふらふらしながらも鉄級ランク冒険者達に労いの声を掛ける。


「皆さん、お疲れ様でした…エルダーゴブリンジェネラルは無事に討伐完了。私は大丈夫です。皆さん、大丈夫でしょうか?怪我は有りませんか?」


 ふらふらするアリシアを見て近くの女冒険者達が駆け寄り小さな身体を支えた。改めて見ても酷い状態で有る。全身はエルダーゴブリンジェネラルの血と筋肉の断裂で赤黒く染まり、装備はほとんど原型を留めていない。ボロボロに破れた装備の下の皮膚は内出血で黒く染まり、エルダーゴブリンジェネラルとの死闘を物語る。


「魔法使い殿!?」(すごい血だ…)


「大丈夫です。皆さん、一人も死んでませんね?」


「魔法使い殿は本当に大丈夫なのですか?我々は奇跡的に死者は居ません!怪我も無いです」(顔色が悪い)


「ああ、この血は全てエルダーゴブリンジェネラルの返り血です、私は大きな怪我はしてません。もう疲れたので少し休んで良いでしょうか?」(もう、げん…かい…で…す)


パタン


「「「魔法使い殿!」」」


 鉄級ランク冒険者達の返事を聞く前にアリシアは倒れた。


 直ぐに女冒険者達がアリシアの様子を見るが…大丈夫なようだ。限界を超えた疲労で疲れきったアリシアはスゥスゥと寝息を立てている。


「大丈夫!魔法使い殿は息はしている」(冷や汗かいたよ)


「はぁ、ほんと心配したぜ」(頼むよ魔法使い殿…)


 封印解除に因る身体への負担、更に闘気の限界使用に付与魔法の重ね掛け、治癒魔法の命を燃やした行使、そこに極度の緊張と疲労による疲れが限界を越えていたのだ。


「よし、みんな魔法使い殿を木陰へ!」


「女達は魔法使い殿を直ぐに手当てしてやれ!」

「了解!」


「あとの連中は周りのゴブリンナイト達から剥ぎ取りを開始しろ!」

「了解!」


 鉄級ランク冒険者達のリーダー格の冒険者が指示を出すと、冒険者達は次々と動き出した。




 


今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!

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