第69話・満身創痍のゴブリンと漆黒の覇王
満身創痍、エルダーゴブリンジェネラルは魔剣パニッシャーをアリシアの方に投げ捨て膝をついた。
「グギャギャギャ、タスケテ……」(助けて…)ポタポタ……ポタポタ……
瀕死のエルダーゴブリンジェネラルは涙を流してアリシアに無様に命乞いをする。もはや、エルダーゴブリンジェネラルに戦う力や意思が無いことは明白だったがアリシアは躊躇しない。強大な魔力と闘気が混ざった最速の一撃をエルダーゴブリンジェネラルに振り下ろそうとした。
「他者を不幸にするエルダーゴブリンジェネラル、貴方はもう死んで下さい!」
《止まれアリシア》
ヒュン! ピタッ……
そして、アリシアが振り下ろす剣を師匠が止める。
(師匠! このゴブリンは生かしておいても犠牲者が増えるだけです)
《俺は敗北して武器を手放し命乞いをする者を殺す主義はない! それはアリシアも分かっておるだろ?》
(では……どうすれば)
《任せろ》
次の瞬間、アリシアの意識が落ちて銘無しの覇王が漆黒の鎧を着て現れた。その覇王の威圧でかろうじて意識のあった数名の冒険者や事態を監視していた斥候隊員達は気絶し、エルダーゴブリンジェネラルは更に竦み上がる。
「おい、そこの矮小なるゴブリンよ。お前生き残りたいか? 」
「ナニトゾ、イノチバカリハ」
「うむ、良かろう。お主の替え玉を魔素で造ってやるから貧相な装備を脱げ、速くするのだ」
「ワタシヲ、タスケテ、クダサルノカ?」
「そうだ!お前はこの辺の雑魚の中でもなかなかに強い。俺が直々に鍛え直してやるからこっちに来い」
ガチャガチャ……「ワガオウ、アリガタキシアワセ、オウニシュウセイノ、チュウセイヲ、ササゲマス。ワタシニ、ナヲ」
「あー、一つ言っとくが……この身体は先ほど貴様を叩きのめした少女の本来持つ力を借りて顕現したに過ぎん。王は俺ではないので間違えるなよ? お前の王はアリシアと云う少女だ。ま、貴様のような弱者は徹底的に鍛え直さねば兵士には出来ん」
「ワガオウハ、アリシアサマ? 」
「そうだ! お主らは世間的には邪悪で醜悪なモンスターと言われておるが、本来は大地の妖精族であるゴブリンは忠誠を誓った主を絶対に裏切らんのだろ? お主もアリシアの為に忠勤に励め。先ずは魔素で腕を治してやる。他の傷はポーションで癒やして訓練開始だ! お主の配下のゴブリンも可能な限りは助けておいたぞ。アリシアに忠誠を誓う群れのリーダーとして配下のゴブリン共を鍛えるのだ」
「カシコマリマシタ」
「うむ、では人形を創るか……丁度、処理に困ってた大量の魔素が有って助かったな。解き放てば災害級の魔物かダンジョンを生むところだった。ほれ、クリエイトフェイクモンスター」
覇王が魔法を唱えると魔素を帯びた巨大な肉塊が現れ人型のモンスターの形に凝縮されていく。
「コレハ……ワタシデスカ? 」
「どうだ? プラナの量に位階は全てお主と同じ、真に迫る人形だろう? コレをお主の代わりにする。お主は先ずこちらに入ってポーションでも飲んでろ。直ぐに修行開始だ! 」
シュッ!
銘無しの師匠はアリシアが大量放出した膨大な手持ちの魔素と森の魔素を使ってエルダーゴブリンジェネラルそっくりの意思の無い替え玉の身体を造り、人形の全身には鎧を脱いだエルダーゴブリンジェネラルの身体を見つつ、満遍なく切り傷をつけて治した。エルダーゴブリンジェネラルをマジックルーム内に収容するとアリシアに意識を戻す。
討伐直前だったアリシアは闘気と付与魔法に魔力を上乗せされたジルの形見の鋭い業物のロングソードを振りかぶると意思の無いエルダーゴブリンジェネラルの首をスッとはねた。
ボトッ、ブシューーーーーーーー!パリィーン!
どうやら、エルダーゴブリンジェネラル討伐完了をした事により称号ゴブリンバスターを入手し、狂化スキルを入手、初級剣技が中級剣技へ、初級体術が中級体術へ、初級回避が中級回避へ、初級対モンスタースキルを手に入れ、闘気の効果が強化されてエルダーゴブリンジェネラルから色々なアイテム入手した。
入手アイテム一覧
エルダーゴブリンジェネラルの首
エルダーゴブリンジェネラルの魔石
エルダーゴブリンジェネラルの身体
魔剣パニッシャー
破損した魔銀の鎧
破損した魔銀の兜
破損した魔銀の盾
破損した魔銀の小手
破損した魔銀のブーツ
破損したジェネラルマント
時知らずの魔法の特大袋
『良くやったアリシア……見事だったぞ……』
「師匠……」(ありがとうございました)
エルダーゴブリンジェネラルの首が呆気なく地面に落ちたと同時に膨大なプラナがアリシアに流れ込むが、短い時間を共にしたジルの形見の鋭い業物のロングソードや全身の装備が役目を終えたとばかりに砕け散った。
ーアリシア、俺の分までしっかり生きろよー
(ジルさん?)
ー村の仲間を頼んだぞ。オルソンやパスカル達に宜しくなー
《ふむ、お主がジルか、見事であったぞ》
ー誰だ貴方は?凄まじい力……神か?ー
《俺はアリシアの師である。ま、神では無いが弟子は任せよ偉大なる剣士よ》
ーそうか……俺が偉大なる剣士とは嬉しい評価だよ。素晴らしい師を持ったなアリシア……では、名残り惜しいがさらばだー
(ジル兄さん……安らかにお眠り下さい)
限界を超えたのはアリシアだけでは無かったのだが粉々になった剣からジルの魂がアリシアに語りかけ、師匠と話をすると昇天した。
こうして、アリシアとエルダーゴブリンジェネラルの戦いはアリシアに軍配が上がった。
アリシアは闘気を解いてぼろぼろとなった装備とポーションなどでは癒やしきれない満身創痍の身体を引き摺りながらも、全身血塗れで死屍累々の体を成した鉄級ランク冒険者達に駆け寄り声を掛ける。
「皆さん、大丈夫ですか?」(ぼろぼろ……)
「うぅ…」
《これは酷いな、その身体でこの人数を助けられるかアリシア? 》
アリシアの活躍により、エルダーゴブリンジェネラルは無事討伐されたが、回りは瀕死の鉄級ランク冒険者達で埋め尽くされていた。
いつ死んでもおかしくない冒険者達。
エルダーゴブリンジェネラルとの戦闘で限界などは既に超え闘気は既に解け、マナも残り僅かなアリシアはプラナの力を燃やして治癒魔法を行使する。
今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!
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