第68話・攻撃する少女と敗北する者
「もう、誰も殺させないと言った!」(師匠!私に力を!)
『アリシア……あと10分だよ。闘気を更に練り上げて魔力を纏え!』
「はい!行きます師匠!」
自らに刻まれた浅い傷の数々を見てエルダーゴブリンジェネラルが咆哮する。そして、再び凄まじい勢いでパニッシャーがアリシアの身体を切り刻まんとする。
「ゴアアァァァァアアアア!グガァーーーーーーー!」(小娘が!殺す!)
ヴォン!ドドドドォォォン!バギギギギギ!ドドドドォォォン!
右に左に嵐の如く振るわれる魔剣パニッシャーが光の線を残してアリシアの周りの木々を薙ぎ倒す中、アリシアは限界を超えてキリングフィールドを展開して闘気を纏い加速していく。
アリシアの凄まじい動きで千切れ飛ぶ装備達、そして死線を越えて異常なスピードで上がる体術、回避、体術、回避、身体強化……などのスキルの数々。
「ぎぃぃぃ……うぐ……」スパン!
ボトッ、ブシューーーーーーーー!
怒りに判断力を鈍らせたエルダーゴブリンジェネラルの力任せの一撃が空振りし、アリシアは僅かな隙を捉え回転し、強大な付与魔法と限界を超えた闘気の力で全身ボロボロになるまで底上げされた筋力で斬り上げ、魔法剣パニッシャーで攻撃して伸びきったエルダーゴブリンジェネラルの半身をすり抜けて銀の盾を持つ左腕を下から切り上げ二の腕辺りを半ばまで断ち切った。
「グアアアァァァァアアア!ギャアアアアア!!」(腕が…俺の腕が…)
突然襲ってきた激しい痛み、エルダーゴブリンジェネラルは愛剣パニッシャーを落とし、負傷した左腕を掴んで地面をのたうち回る。
この時、エルダーゴブリンジェネラルは致命的なミスをした。左腕を失った痛みで集中が途切れ、狂化スキルが解け、僅かにステータスが弱体化したのだ。
アリシアは激しい体内の痛みと攻撃、回避する度に引き千切れる筋肉と軋む全身の骨の痛みに耐え、更なる追撃を行っていく。
「グアアアァァァァアアア!」(馬鹿な!馬鹿な!馬鹿な!馬鹿な!)
「ゴアアァァァァアアアア!」(自分が小さな人間に負けるわけがない)
「ガアアァァァァァァァアアアアア!」(許さんぞ人間!)
アリシアの殺気を感じ、左腕の痛みに激怒しつつもパニッシャーを拾い上げて素早く立ち上がったエルダーゴブリンジェネラルはアリシアを睨み付ける。怒りに判断力が鈍り、自らの狂化スキルが僅かに弱体化している事に気付く間も無くアリシアに攻撃を仕掛ける。
ヒュン!ヒュン!
トス!ブシューーーーーーーー!
アリシアは闘う度にさらなる死線をくぐりスキルの精度を上げる。剣技、体術、回避……などのスキルが強化されていく。
エルダーゴブリンジェネラルの神速の振り下ろしの渾身の一撃、しかし先に攻撃を当てたのはアリシアだった。再び落とした愛剣パニッシャーを持ち直したエルダーゴブリンジェネラルに再び近付くと神速を越えた神速の突きを繰り出す。
僅かの差であったアリシアの闘気と自らの狂化スキルの差がどんどん開き、エルダーゴブリンジェネラルは自らが小さな少女に一方的に攻められている状況に頭が追い付いていない。
焦りが身体の動きを更に悪くし、狂化スキルが機能しないほどに弱体化していく。
ヒュン!ヒュン!
アリシアは濃密な戦闘により集中力が増していく。
トストストストス!
エルダーゴブリンジェネラルと剣を交える度にアリシアは闘いの中でスキルの練度を上げ続けた。
プシュ!プシュ!プシュ!
「グガァーーーーーーー!」(何故だ!何故攻撃をかわせんのだ!)
優勢に攻撃しているアリシアも限界に近い能力を使い満身創痍では有るが、自らの力の続く限り攻撃を続け、エルダーゴブリンジェネラルは身体中に無数の穴を開けられ血を失い過ぎて両膝をついて動く事が出来ない。エルダーゴブリンジェネラルは残った力を振り絞るが、そこをアリシアが更に追撃する。
身動き出来ない程に全身を切り裂かれたエルダーゴブリンジェネラルは濁った眼でアリシアを睨み付け、最後の悪あがきで、神速の速さで近付いて来たアリシアにパニッシャーを振り抜いた。エルダーゴブリンジェネラル渾身の一撃が放たれる。
ヴォン!ドドドドォォォン!
「グオオオオオオオオオオ!」(死ねぇぇぇぇぇ!)
ヒュン!ブシューーーーーーーー!
「グギアアアア!」(勝てない……)
アリシアは悪あがきで振り抜かれた渾身のパニッシャーを紙一重のギリギリのタイミングで避けて半回転し、その勢いでエルダーゴブリンジェネラルの胸部を掬い上げるように斜め上に深く斬り上げた。
この時エルダーゴブリンジェネラルは先だってセレニム近郊でオークキングに付けられた古傷を見てアリシアには勝てない事を理解した。
既に満身創痍のエルダーゴブリンジェネラルは戦意を完全に喪失して再び力無く膝をつくと、持っていたパニッシャーをアリシアの方へ投げ捨てた。
エルダーゴブリンジェネラルの心は既に完全に折れている。狂化が完全に解けてステータスが下がり満身創痍、目の前にいるのは小さな少女ながらも絶対的な強者、エルダーゴブリンジェネラルは涙を流して竦み上がった。
そこには自らを強者だと信じ、暴虐の限りを尽くした古より生きる伝説の化物の姿は無く、ガタガタと震える瀕死のゴブリンがいた。
今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!
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