第67話・全力の力と力
エレノの町の東門の前での戦いで、アリシアの放つアイスストーム3連発とアイスタイフーンを食らい瓦解したゴブリンジェネラル達は、東の森に有る自らの拠点の洞窟まで逃げ、捕虜を使って追ってくる人間達を倒そうと画策した。
しかし、数刻の差で捕虜はエレノの斥候部隊が解放して逃亡され、散り散りとなった部下のゴブリン達は悉く後方から迫る人間達に倒されてしまった。ゴブリンジェネラルは配下の精鋭ナイトに指揮を執らせて人間達が油断して休憩をとっている場所を奇襲しての乱戦の中、部下のゴブリンソルジャー達は不甲斐なく全滅してしまった。
怒りに震える精鋭たる指揮官のゴブリンナイト……正確にはゴブリンセンチュリオンと呼ばれる成り立てのゴブリンジェネラルと同等の力を持つ存在は怒り狂って鉄級ランク冒険者六十人を数刻の時も掛けずに壊滅させた。
その指揮官ゴブリンナイトを瞬殺し前進しエルダーゴブリンジェネラル配下の精鋭ゴブリンナイト達を壊滅させる事に成功するも冒険者達はエルダーゴブリンジェネラルに壊滅させられ、残るのは銀髪碧眼の少女アリシアのみとなり、壊滅した鉄級ランク冒険者達を守るため、アリシアは自らに施された師匠の封印を解除してエルダーゴブリンジェネラルと戦う覚悟を決める。
「何をしている魔法使い殿!?」(魔法使い殿…逃げてくれ)
「逃げてくれ!魔法使い殿!」(魔法使い殿…駄目だ)
「魔法使い殿は早く逃げろ!」(俺達は置いて逃げろ…頼む)
「逃げ……ません……私は……逃げません!」
《ふむ、このエルダーゴブリンジェネラルは強いぞ。鑑定した結果はゴブリンジェネラルの力はアリシアの三倍、アリシアの速さはゴブリンジェネラルの六倍だし、ヒットアンドアウェイでいくのだアリシア》
(分かりました!)
ゴブリンジェネラルへの最後の切り札として、魔法使いのアリシアには逃げて貰いたいのが冒険者達の総意であり、なんなら自分達諸とも魔法でゴブリンジェネラルを殲滅してくれても良かった。
冒険者達は勇敢なる小さな魔法使いの姿を見た。
そして願う。
(((頼む!今は逃げてくれ!)))
各々が薄れいく意識の中で少女の勇姿を目に焼き付けた。
(((魔法使い殿…)))
アリシアは泣いていた。
(また…自分は仲間を犠牲にするの? 師匠、私に力を下さい!)
『やれやれ……困った弟子だな。30分だ……30分で目の前の敵を倒せよアリシア……』
「師匠……私に力を下さい!」
『俺の技を思い出せ……万物に宿りし気を纏え、されば目の前の敵も恐れるに非ず……さあ、自らの闘気を解き放て!』
「はい!師匠!」
アリシアに施された師匠のエクストラスキルの「封印」が解除されていく。そしてプラナが放出され、闘気がアリシアの身体を覆っていった。そして、真なる能力を解放したアリシアは、涙を拭いてゴブリンジェネラルを睨み付けた。
(もう誰も殺させない!私はエルダーゴブリンジェネラルの首を狩る!)
ヒュン!
アリシアはキリング・フィールドの魔法で倍加したステータスを生かして神速の突きをお見舞いする。エルダーゴブリンジェネラルも狂化のスキルで全てのステータスが3倍に跳ね上がりアリシアの突きを避ける。
キリング・フィールドは付与魔法で一時的にステータスを2倍にするが身体に異常な負担が掛かる。
そして、エルダーゴブリンジェネラルを追尾するかの如く、アリシアの鋭い業物のロングソードがエルダーゴブリンジェネラルの身体に吸い込まれるように刺さった。
トス!パシュ!
エルダーゴブリンジェネラルは持ち前の狂化による神速スキルでアリシアの鋭い突きを避けようとするも僅かに反応が遅れて左胸を浅く突かれた。目の前の矮小な存在が自分の身体に傷を付けるのは面白くない。エルダーゴブリンジェネラルは頭に血が昇り、その眼が赤く光る。
「グガァーーーーーーー! キサマーー! 」
ビュンッ! 「遅い! 」
ズガガガガ!ドドドドォォォン!
狂化スキルを使い怒り狂ったエルダーゴブリンジェネラルの凄まじい腕力で放った一撃がアリシアの首を狙う。避けたアリシアの後ろの大木が鈍く光るパニッシャーで両断された。
エルダーゴブリンジェネラルの斬撃は2度3度と続き、微かにかするだけでアリシアの装備が破壊されていく。命の危険を感じる緊張がアリシアの更なる成長を呼び、凄まじい戦闘の中でスキルが次々と成長していく。
剣技、回避、身体強化、付与魔法……アリシアのスキルは次々と成長した。
「ガアアァァァァァァァアアアアア!」
ヴォン!ヴォン!「くぅ……まだ!」ドドドドォォォン!バギギギギギ……グシャ!
スパン!プシュ!「ゴアアァァァァアアアア!」
神速のパニッシャーがアリシアの頭上を通過して髪が数本パラパラと落ちる。その瞬間に、既に身を低くして半回転したアリシアの斬擊がゴブリンジェネラルの両脛を浅く切り裂く。左手の予備のショートソードは砕け散り、右手のジルの形見の鋭い業物のロングソードを構えなおした。
自らのステータスを縛る封印を解除し、ステータスを倍化する闘気を用いて、キリング・フィールドの魔法を重ね掛けをしてやっと互角……いや、まだ単純な攻撃力では敵わない。
アリシアは魔力を全て付与魔法に回してステータスをさらに上げていった。付与魔法による強制的な筋肉や骨、内臓への負担による地獄の苦しみと魔法使用の限界を超えた精神的疲労がアリシアの身体を蝕む。凄まじい攻防で装備が悲鳴を上げてぼろぼろになっていく。
今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!
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