第66話・猛威を振るうエルダーゴブリンジェネラル
「爆炎よ! 我が敵を薙ぎ払え! エクスプロージョン! 」
ゴブリンナイトが方陣を敷く中、アリシアの戦略級爆炎魔法のエクスプロージョンが方陣の中央に炸裂した。エルダーゴブリンジェネラルも魔法使いが来るかもしれないと予想していたが、むしろ自らの威厳を保つ為に前面に配置した五十五体のナイト達の九割を失う結果を生む
《うむ、精鋭のゴブリンナイト四十七匹が手に入ったな。魔素でレプリカのナイトを配置したからトドメを刺してやれ》
「今です! ゴブリンナイトを各個撃破して下さい! 」
「うおおおおおおーーーー!各パーティーはそれぞれ瀕死の敵を討て! 」
「まだ動いている手負いのナイトは八体だ! レベルの低いパーティーはニパーティーで囲め! 」
「手負いのモンスターは手強い! 油断するなよ! 」
冒険者達はアリシアの魔法攻撃で数を減らし、爆炎魔法で怪我を負ったゴブリンナイト達に突貫した。銅級間際の強いパーティーから鉄級成り立てのパーティーまで、全パーティーがゴブリンナイトとの戦闘を繰り広げる中、アリシアはゴブリンナイトのレプリカに神速でトドメを刺していく。
「グオオオオーーーー!!」
ゴブリンナイトの後方で仁王立ちで睨むゴブリンジェネラルは、古参の精鋭ゴブリンナイト達が人間に各個撃破され、不甲斐なく倒れる姿を見てはらわたが煮えくり返っていた。冒険者達は自分達の勝利を確信していたが、そんな中、魔法使いのアリシアだけはゴブリンナイトにトドメを刺しつつゴブリンジェネラルの動向に神経を集中している。
そして、仁王立ちしていたゴブリンジェネラルが遂に動いた。あっという間の出来事、自らの親衛隊たるナイト達の死にエルダーゴブリンジェネラルは完全にキレた。冒険者達の各個撃破戦法で次々とナイト達が死んでいくのを見たエルダーゴブリンジェネラルが魔剣パニッシャーを抜き、手近にいたパーティーに凄まじい勢いで正面から突撃する。
アリシアが叫ぶ。
「みんな避けて!」
ドン!ドドドドドドドド!
「何!?」
「何だと!?」
ゴブリンナイトとは違う圧倒的なステータスの差、怒り狂ったゴブリンジェネラルが突撃して来る。かろうじて反応した前衛の盾持ちの冒険者がゴブリンジェネラルの体当たりの一撃で軒並み吹き飛ばされた。
「ぐぅ…」
「かはっ」
エルダーゴブリンジェネラルは流石に単体脅威度金級ランク相当のモンスターである。そもそもが鉄級ランクの冒険者達とは格が違う。盾持ちの戦士は先のゴブリンナイト戦と同じく次々と傷薬とポーションで回復しては前に出たが、その悉くが戦線復帰する端から吹き飛ばされて倒れていった。攻撃力も防御力も素早さも異次元の相手に六十人の鉄級ランク冒険者達は翻弄された。
再びの悪夢、満身創痍の剣士達がなんとか前に出て牽制し、満身創痍の血だらけの盾持ちの戦士がふらつきながら遠巻きにゴブリンジェネラルを囲んだ。
「グォーーーーーーーー!」(皆殺しだー!)
次の瞬間、冒険者の中心でゴブリンジェネラルが愛剣パニッシャーを振り回す!最悪な魔法剣が凄まじい腕力で冒険者達を吹き飛ばし、装備は破壊され次々と戦闘不能にさせた。
ブォン!ドガ!
ブォン!ガキン!
元はエルト王国の騎士団長の持ち物であったハイレア装備である聖剣パニッシャーはゴブリンジェネラルの強烈な魔素の力で汚染されて魔剣と化した。その魔剣パニッシャーがジェネラルの力を更に強化するが前騎士団長の魂が人間を殺す事を拒みパニッシャーの刃は切れ味を落とす。この圧倒的なステータスの差で未だに誰も死んでいないのが奇跡である。
「みんな、盾を構えろ!」
「「「おう!」」」
「ギャガガガガガガガ!」
ドガ!ガキン!ドガ!キィン!
ゴブリンジェネラルの凄まじい攻撃の前に鉄級ランク冒険者の前衛の剣や盾は次々に真っ二つに切り裂かれていく。冒険者の前衛達は圧倒的な力によって次々と倒されていった。
「ぐぅ…みんな下がれ」(勝てん)
「げふ…」(強すぎる)
重戦士達が次々とゴブリンジェネラルのパニッシャーの前に倒れ、なんの魔力もないロングソードで応戦する剣士達も徐々に倒れていった。
「みんなは殺させない!」
「キサマラ! イキテカエサンゾ! グオオオオーー! 」
「うおっ!? 」「ヤバい! 」「ジェネラルが来た! 」
ズドドド……「フン!」ブォン!ドゴゴゴゴン!
ドン!ドシャッ!バキッ!グシャッ!
アリシアの魔法で負傷したゴブリンナイト達をなんとか囲んで倒して疲労困憊、固まっていた冒険者パーティーがジェネラルの体当たりで一瞬のうちに次々と壊滅した。
エルダーゴブリンジェネラルは単体金級の実力があり、かたや冒険者達は数段下の鉄級ランクの力であり、アリシアの付与魔法の支援を受けてギリギリのラインで銀級のゴブリンナイトとの闘いを制して気が緩んでいた。
「ツギハ、キサマラダ! 」
強烈な魔素で黒く染まったパニッシャーを片手にエルダーゴブリンジェネラルは再び近くのパーティーに体当たりをかます。
「みんな、盾を構えろ!」
「「「おう!」」」
「ギャガガガガガガガ!ソンナモノ、ヤクニタタヌワ! 」
ドガ!ガキン!ドガ!キィン!
重戦士達が次々とゴブリンジェネラルのパニッシャーの前に倒れ、業物のロングソードで応戦する剣士達も徐々に倒れていった。
瀕死の鉄級ランク冒険者達、その様子にアリシアは焦りを募らせる。ゴブリンナイトのトドメを刺し終わってエルダーゴブリンジェネラルの方へ向かったアリシアは、死屍累々といった体の冒険者達を見る事になる。
(みんな…みんなが…)
《大丈夫だ。ポーションを飲んでいるから簡単には死なん。目の前のジェネラルに集中しろ》
パニッシャーに宿る前騎士団長の魂の人間は殺させない執念のおかげで、いまだ戦死者が出ていない事は救いであるが、いつ犠牲が出ても不思議ではない。
エルダーゴブリンジェネラルの体当たりで鉄級ランク冒険者達が壊滅するまで、そう時間は掛からなかった。冒険者達は皆倒れ、かろうじて息をしているが瀕死で有る事は間違いない。
そして、冒険者を蹂躙したエルダーゴブリンジェネラルと、ゴブリンナイト達にトドメを刺し終えたアリシアが向き合う。アリシアはゴブリンジェネラルを睨み付け、ジルの形見の剣を抜いて構える。
(許さ…ない…許さない…もう誰も死なせたくない!)
《アリシア! 冷静になれ! また力に振り回されるぞ! 》
小さな娘を見下ろすエルダーゴブリンジェネラル、その眼には全てを破壊する怒りが宿っていた。アリシアがジルの形見の鋭い業物のロングソードを斜めに構える。
「みんなは殺させない!」
ゴブリンジェネラルの前に冒険者を庇うようにアリシアが出た。ゴブリンジェネラルもパニッシャーを構える。向かい合う両者、アリシアとゴブリンジェネラルの壮絶な戦いが幕を開ける。
「グガァーーーーーーー! ミナゴロシダ! 」
今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!
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