第65話・一流同士の闘い

 アリシアは鉄級冒険者達を率いてゴブリンナイト率いる二百匹以上の格上のモンスターであるゴブリンソルジャーとアーチャーの混成群を一人の被害も出す事無く壊滅させた。しかし、最後に残った凶悪な銀級ランクモンスターであるゴブリンナイトによって仲間の冒険者達が蹴散らされてしまう。


ブォン!ドガ!「ぐぅ……」


ブォン!ガキン!「ガハッ」


 仲間達が次々と戦闘不能となるなか、アリシアはジルの形見で有る鋭い業物の魔鋼剣を背中から抜いた。


「みんな! 離れて下さい!」


「ぐ、アリシアちゃん、ゴブリンナイトは強過ぎる……逃げてくれ……」


「逃げません!誰一人死なせないと師に誓いました!」


《ふむ、ならば弟子よ。身体が壊れん程度に本気で戦ってみよ》


(分かりました師匠!)


「キサマガ、リーダーカ?」


「さすが銀級ランク、人間の言葉を話しますか」


「ギャギャギャ、キサマハツヨイナ?ムレノリーダーダロ?」


「私はアリシア! 一騎討ちで勝負しましょう」


「ヨカロウ」


 アリシアとゴブリンナイトとの闘いは、まさに一流と一流との一騎討ちとなる。アリシアが瞬歩で間を詰めればゴブリンナイトがシールドバッシュをし、それにアリシアが反応して盾に蹴りを入れて後ろに跳べば、それを追いかけるようにゴブリンナイトの剣が前に突き出された。


ズバッ! 「ギャガッ!?」


「遅い!」


ゴスッ!「グッ!?」バタ……


 しかし、アリシアはゴブリンナイトの突きを見切って伸ばされた剣を掻い潜り小手の無い部分にカウンターの一撃を入れ、次いで下顎から真上にジルの剣の柄で追撃の一打を入れる。ほんの一瞬の攻防、それで勝負が決まる。


カチャッ……「私はもう躊躇しません!仲間の為に死んで下さい!」


《そこまで!》

(何故ですか師匠?)


《人間の言葉を話せる魔物を殺すのは勿体ない。とりあえず魔法で攻撃したようにライト系魔法で冒険者達の視界を奪え》

(分かりました。師には何か考えがあるのですね?)


《うむ、名もない村での戦闘で溜まってた魔素で別の意思のないゴブリンナイトの身体を用意してやるから、それを殺せ》

(分かりました)


ボソボソ……「ストロングインセントライト」


ピカッ!!


「うおっ!? 目が」

「眩しい! どうなったんだ」


 カウンターで顎に一撃を喰らい白眼を剥いたゴブリンナイトにトドメを刺そうとしたアリシアを師匠が止める。


 師匠の指示でアリシアは強烈な光を放つだけの小手先の魔法を使って冒険者の視界を遮り、師匠の操る魔素がゴブリンナイトを包んだ。次の瞬間、アリシアの前に居た気絶したゴブリンナイトはアイテムルームに転送され、師匠が名もない村で溜め込んだ淀んだ魔素で創られた意思のないレプリカ的なゴブリンナイトに置き換えられ、アリシアはそれの首を一瞬で落とした。


「アリシアちゃん、強えわ」


「万能過ぎるだろ……」


「マジか……」


 あわや壊滅する一歩手前だった相手を瞬殺したアリシアの素の強さに閉口する冒険者達だったが、比較的にダメージが少ない者達が重傷者を運んで再度治療と補給を行う。


 本来ならば先に剥ぎ取りを行う筈の冒険者達も、今は命が惜しいので傷薬を塗りつつポーションを飲み、壊れて折れ曲がった装備を剥がして新しい装備と交換する。


ちなみに、新しい装備類はアリシアのマジックルーム内の倉庫番をしている師匠が戦闘後にマジックルームに収納して破損した装備を鍛冶部屋でせっせと修復して再加工を施しているので無駄に出来が良かった。


「皆さん、ゴブリンナイトは討ち取りました!」


《アリシア、直した装備とポーションを猫ポーチに送っておいたぞ。みんなに配布しとけ》


「うおーー!アリシアちゃんスゲー!さすが俺達の指揮官だぜ!」


「アリシアちゃん、お疲れ!」


「ありがとうございます。それと、これは一時しのぎの装備一式です。人数分以上の数がありますので装備が壊れた方や心配な方は交換して下さい。こちらに置いてあるのは予備の傷薬やポーション類です。こちらも自由に使って下さいね」


「マジかよ!?つ〜か、それって金貨何枚分?月賦払いでもよいかな?」


「今は非常事態です!たまたまゴブリンソルジャー達から剥ぎ取って整備した装備を持っていたので、お金の心配なく使って下さい! 」


「それは有り難いな、俺達は予備の装備なんて持ってきてないし」


「そのポーションも? 貰って良いのか? ホントに? 」


「私達は仲間です! みんなで生き残る為に今有る物資を有効活用しましょう! ポーションはまた作れば良いのです。皆さんの命には代えれませんよ。各パーティーのリーダーは必要な物資を持っていって下さいね」


「それは助かった……各パーティーのリーダーはアリシアちゃんから装備を受け取れ! みんな支給された傷薬とポーションで治療開始! 装備も換えろよ!」


「「了解!!」」


 冒険者達が装備と薬剤を受け取りつつ再び休憩に入ると、アリシアは周囲を警戒しつつ倒したゴブリンソルジャー達の身体を装備ごとマジックルーム内に収納していく。中には重傷ながら瀕死ゴブリン達もいたが問題無く収納する。


 収納内では精神体の師匠が収納に入ってきた物をせっせとスキルで分別し、生き延びたゴブリンソルジャーなどは治療してマジックルーム内の別空間へと転移させた。


 一通り周囲を見回るとアリシアも休憩を取り、装備を整えて体力を回復したパーティーから周囲を警戒しつつ陣形を組む。








今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る