第64話・冒険者達、ぎりぎりの闘い

 奇襲攻撃してきたゴブリン達との戦闘開始から約一時間が経過するとアリシア率いる冒険者とゴブリンナイト率いるゴブリンソルジャーとアーチャーの混成部隊には兵力差がほぼ無くなり、お互いの前衛と前衛による超接近戦がメインとなる。


 この間、アリシアの中に居る師匠の采配をアリシアが実践したおかげで一人の死傷者も出さずに戦闘は続く。


 こうなると範囲魔法を使うタイミングが難しくなる為、アリシアや間接攻撃役の狩人も武器を近距離用のスリングショットに切り替えた。


 しかし、流石に銅級下位ランク相当のゴブリンソルジャーと玉石混合の鉄級ランクの冒険者では強さに少しだけ差があった。そのせいで鉄級ランクの冒険者達は少なくない傷を負いながらも重戦士と剣士が交代で前衛を守り、スイッチのタイミングの合間を後衛のスリングショットの間接攻撃がフォローしていた。


「ギャギャ!」(人間ども!)


キィン! キィン!「くそ、コイツら強いぞ!」


キィン! ガス!「ギャギャ!」(ソコだ!)


ガス! ガス! キィン!「ぐあぁあ!」


「戦士隊はあまり前に出るな!前衛、剣士隊とスイッチしろ!」(ちっ、これは不味いな)


「怪我をした方は下がって下さい!早くポーションを飲んで!」

《うむ、怪我人は下がらせて即時ポーション、敵とは二対一になるように気を配れ!奥のゴブリンナイトは冒険者では敵わん。アリシアが倒せ!》


「前衛は二対一を心掛けて!ゴブリンナイトには迂闊に近付かないで下さい!」

「了解!」「あいよ!」「任しとけ!」


「グガ!」(突撃!)


 二対一とはいかないまでも、なんとか有利な状況で戦いが続き、最終的には指揮官のゴブリンナイトと数匹のゴブリンソルジャーのみが戦場に残った。ゴブリンナイトはゴブリンソルジャーの上位種の一種であり銀級の力を持ちエレノに残ったアイオスよりは若干弱め、一般的なゴブリンやゴブリンソルジャー達とは根本的に体格と強さが違う。


 武装面でも冒険者から剥ぎ取りした物を厳選して装備しており非常に優秀であり、エルダーゴブリンジェネラルの指揮により単純に強い。


「私に任せて下さい」

《やるのかアリシア?》

 

 前衛の鉄級ランク冒険者達からすれば相手は数段格上であり、ゴブリンソルジャーを率いるゴブリンナイトの群れと冒険者達双方の数はほぼ同じでゴブリンナイトはそのスキル構成全てが前衛である為、ほぼほぼ数は互角ながら冒険者は包囲される形となった。一進一退の攻防の最中、ここで優秀な薬師であり魔法使いのアリシアの有無が勝敗を分ける。


 アリシアが間接的に付与魔法のアクセルやパワー等で冒険者をサポート、怪我をした冒険者にはエリアヒールを唱え、スイッチした冒険者達はアリシアから配布されたランクの高いポーションを次々と使用して戦線に復帰し、ウッドバインドの魔法でゴブリンナイト達の動きを鈍らせ味方をアシストした。


 ちなみにアクセルは付与魔法に分類される素早さを約1,5倍近く上昇させる魔法であり、パワーも付与魔法に分類される攻撃力を1,5倍近く上昇させる魔法。エリアヒールは治癒魔法に分類され、ヒールの効果を単体から範囲に広げている。ウッドバインドは木魔法のトラップ系魔法で足元を木の根で絡ませて動きを阻害し、転倒させる。


 アリシアのウッドバインドで縛られては冒険者達に集中攻撃され、次々と各個撃破されるゴブリンナイト率いるゴブリンソルジャー隊、回復と攻撃を織り混ぜたアリシア含む冒険者達が遂に最後のゴブリンソルジャーを倒した。最後の一匹を討ち取り、一安心する冒険者達。残りはゴブリナイト一体、数の優位もあり、冒険者達は勢いに乗っていた。


(あとはゴブリンナイトだけだ!)


(数で押せば勝てる!)


 しかし、ゴブリンソルジャーの後方で仁王立ちで睨むゴブリンナイトは、ゴブリンソルジャー達が人間に各個撃破され、不甲斐なく倒れる姿を見てはらわたが煮えくり返っていた。冒険者達は自分達の勝利を確信していたが、そんな中、魔法使いのアリシアだけは目の前に立つゴブリンナイトに神経を集中している。


そして、仁王立ちしていたゴブリンナイトが遂に動いた。


「グガァーーーーーーー!」(皆殺しだ!)


ゴブリンジェネラルが凄まじい勢いで正面から冒険者に突撃する。


アリシアが叫ぶ。


「みんな避けて!」


ドン!ドドドドドドドド!


「何!?」


「何だと!?」


 銀級モンスターと鉄級冒険者の圧倒的なステータスの差、怒り狂ったゴブリンナイトが盾を前面に出し突撃して来る。かろうじて反応した前衛の盾持ちの冒険者がゴブリンナイトの体当たりの一撃で吹き飛ばされた。


ドスン! 「ぐぅ…」


ゴスッ! 「かはっ」


 このゴブリンナイトはエルダーゴブリンジェネラル配下の精鋭である。流石に単体脅威度が銀級ランク相当のモンスターに成長しており2ランク下の鉄級ランクの冒険者達とは格そのものが違う。盾持ちの戦士は次々と傷薬とポーションで回復しては前に出たが、その悉くが戦線復帰する端から吹き飛ばされて倒れていった。そもそも攻撃力も防御力も素早さもアイオスクラスの異次元の相手に六十人の鉄級ランク冒険者達は翻弄された。


 そもそもの攻撃力が低い狩人などのスリングショットによる間接攻撃もゴブリンナイトの装備の前には全く役に立たず、超近距離の戦いにより、前に出て闘おうとしたアリシアも付与や治癒魔法で仲間が死なないようにするだけで精一杯であり、攻撃魔法でのアシストが全く出来ない。


 満身創痍の剣士達が前に出て牽制し、血だらけの盾持ちの戦士が遠巻きにゴブリンナイトを囲んだ。


「グォーーーーーーーー!」(皆殺しだー!)


 次の瞬間、冒険者の中心でゴブリンナイトが剣を振り回す!凄まじい腕力で冒険者達を吹き飛ばし、次々と戦闘不能にさせた。






今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!

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