第62話・静かに怒れる居残り組
アリシアが鉄級冒険者達とエルダーゴブリンジェネラルの追撃に出た後、殺気を放ちブチ切れる者達がいた。そう、エレノ防衛の為にゴブリン追撃を衛兵隊に阻止された上位冒険者達である。
「おい、今回のエルダーゴブリンジェネラル襲来で俺達なんか仕事したか?」 (俺らは亀か!)
「いいえ、アイオス団長、我々は北門で一戦したものの、どうやら何もせずに終わりそうな感じです」 (はぁ、疲れた)
「くそ、鉄級ランクの連中、喜んで魔法使い殿の後に着いて行きやがって!」 (クッソ羨ましい!)
「はあ、出来れば我々も何か見せ場が欲しいところですな…」 (あー、なんか憂さ晴らししたい…)
「まあ、あんまり経費が掛からないで助かったっすね!」
「おい!ジャッシュ!そこは問題じゃねぇわ!」
「え?西門と北門のゴブリン討伐報酬と剥ぎ取りした武器、カードと魔石だけでもクラン運営が楽になる金額っす」
「あー、もう良いわ。なんか釈然とせん!イラッとするな」
「そうっすか?俺っち的に仲間の損害無しで必要経費が少なくて助かるんすけど……」
エレノの衛兵隊に待機を言い渡された銅級ランク以上の既に人外な冒険者達はこの状況に完全にダレていた。
北門と西門でゴブリン群と一戦したものの、その後ほぼほぼやる事が無く、クランの中では半人前の下っ端鉄級ランク冒険者達が全てアリシアと共に嬉々としてエルダーゴブリンジェネラル追撃に向かってしまった為、町にはソロや石級冒険者しか残っていない。
つまり、居残り組は数がカツカツなので交代でポンチョの酒場に遊びにも行けない。
衛兵隊が仕事中は禁酒と五月蝿いので酒が切れ、ポンチョの店から新米冒険者達が持ってくる冷え切った飯を食うしかない時間を鬱々と過ごし、完全にブチ切れた居残り組のアイオス達は溜まった鬱憤を何処で晴らすかを考えていた。
そして思いつく。
「よし、コレが終わったら俺は鉄級ランクの連中をシバく!シバいてシバいてシバき倒す! みんなはどうする?」 (ガチでシバき倒す!)
「そうですね。鉄級ランクの連中をギルドの訓練所に呼び出して訓練しましょう! あくまでも訓練ですね。徹底的に手加減無しで……」(うん、殺ろう)
「そうっすね! 連中、泣いて喜ぶでしょう。ええ、絶対に泣かせるっすよ! どんだけ泣いてもやめません!」 (泣かす!絶対泣かす!)
「しかし団長、ほんと暇ですな……」 (めんどくせぇ……)
「ああ、ほんと暇だな……酒も飲めんし、飯は冷えてるし、鉄級ランクの連中マジで〆るわ」 (めんどくせぇ……)
ちなみに、この一昼夜、交代要員の鉄級ランク冒険者がエルダーゴブリンジェネラルの追撃を行ったため、銅級ランク以上の6パーティー36人は陣地を離れられず、冷えた飯を食う時や仮眠する以外は各陣地内で警戒体制を余儀なくされている。
冒険者達はゴブリンとの戦闘が全く無い事や普段の酒盛りが出来ず、冷や飯を食わされ既にストレスが限界に近い。
そう、冒険者達の闘いと酒と飯の恨みは恐ろしいのだ。
エルダーゴブリンジェネラル追撃に参加した鉄級ランクパーティーの面々は、エレノの町に戻った後にアイオス達の楽しい戦闘訓練に強制参加させられ、涙と鼻水と汗を流し尽くしたのはまた別の話となる。
話はゴブリンジェネラルを追尾していたアリシアと鉄級ランク冒険者に戻る。
アリシア率いる鉄級ランク冒険者達の追撃部隊はエルダーゴブリンジェネラルを追尾し、いつの間にかゴブリンシャーマンを排除して相当のペースで、はぐれゴブリン達を討伐しつつ前に進んでいた。
あまりのはぐれゴブリンの数と、そのハイペースな討伐に鉄級ランク冒険者達は疲れを感じつつも、アリシアを先頭にして次々とエルダーゴブリンジェネラルの支配を離れたゴブリン達を叩き潰しては剥ぎ取りを行っていく。
アリシアの指揮能力は上がり、指揮下に置かれた者達に戦意高揚のバフを与える鼓舞の技能を獲得するに至った。
「鉄級ランク冒険者の皆さん、調子はどうですか?」(あれ?皆さん疲れてます?)
「まあ、そこそこです。少し疲れてきましたね」(うん、疲れた)
「まあまあです。もうちょいならいけますよ」(もう少しはなんとか…)
「私はなんとかって感じ。お姉さん正直休みたいわ」(いやいや、休もうよ?)
「俺も休憩に一票!重装備は疲れるよ」(完全武装、苦しいっす)
エレノでダレている上位冒険者と対称的に、アリシアの後ろから着いていった鉄級冒険者達は、昨日から、ほぼほぼ休憩せずにゴブリンジェネラルの追撃をし、アリシアの指揮の元、陣形を作り散発的な戦闘で数百匹近いゴブリンを討伐している為、実はクタクタである。
一応、鉄級ランクのそこそこベテランな冒険者達にもプライドが有り、同じ鉄級ランクだが新米冒険者の魔法使いであるアリシアが元気に先頭を走る為、なかなか休憩を切り出せずにいたのであった。
鉄級ランク冒険者が子供の体力に負けるってどうよ?って考えながらも休憩を取ることにしたのだが、実はアリシアは身体強化技能があったりする。鉄級冒険者でも身体強化の技能持ちは少ない為、アリシアの体力に負けても当然なのだ。
先行していた斥候部隊もエルダーゴブリンジェネラルを捕捉し報告してきた。いよいよエルダーゴブリンジェネラル討伐も佳境に差し掛かる。エルダーゴブリンジェネラルとの戦闘も近いだろう。今は鉄級ランク冒険者達の体力を回復させる事を優先した。
今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!
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