第61話・防衛5日目の援軍と安堵
エレノの町での聖女と魔法使い二人の出現と加勢はエルト小国の将軍であるリンバルトを驚かせた。
何時の時代も優秀な人材の獲得には各国が熱を上げており、エルト小国には王弟のエルトール公デルバールに使える銀狼のマリクと呼ばれる魔法使いが居るのみと思われていた。一人で戦局を一気に覆す能力を持つ在野の魔法使いと聖女の獲得にはリンバルト将軍も当然興味をもつ。
「ふむ、その聖女と薬師、魔法使いの力はどの程度なのだ?」
「はい、件の聖女は高度な医療技術と治癒魔法を操り、薬師は素晴らしく調薬に長けているそうです。魔法使いも強力な魔法を操りゴブリンを数百匹まとめて倒せる素晴らしい人材との事。エレノの攻防戦でも最前線で戦っておられるとの事で、既に千に届く程のゴブリンを討伐した力、是非とも我が国に士官して頂きたいものですな閣下」
「ほう、こんな辺境に貴重な聖女と魔法使いに薬師が居たのか?聖女は医療技術の才も有ると?魔法使いは既にゴブリンを千に届く程討伐せしめたと?それはまた素晴らしい逸材だの。ふおっふおっふおっ!愉快愉快、それでは加勢するワシらの出番は有るのか?既にエルダーゴブリンジェネラルは尻尾を巻いて逃げ去ったのではないか?」
「ハハハ、そのような魔法使い殿が味方となればエレノは一先ず安泰でしょう。我らの出番が無ければ重畳、色々と助かりますが……なにぶん相手はエルダーゴブリンジェネラルですので勝敗は分かりかねますな。エレノの民の為にも我等もなるべく早く向かうべきかと、閣下も師の仇を討ちたいのでありましょう?」
「それもそうじゃな、早くエレノの民を安心させる為じゃ、今は兵士と馬を休め次第、我らも先を急ぐぞ。兵士には酒はほどほどにせよと伝えよ。ふおっふおっふおっ」
エレノの町からの伝令は毎日少しずつ日付と内容が異なって王都に伝わっている。これは一人一人で伝令を送った際にも誰か一人が王都に着けば戦況などが分かるようにする先人の知恵で有るのだが、今回は少しばかり情報が錯綜して聖女と魔法使いの情報が別々に伝わり、結果的に二人の傑物がエレノに現れたと伝わる事となる。
伝令の速さも問題があり、リンバルト将軍と副官が話しているこの時、アリシアの戦略級魔法アイスストーム三連発とアイスフィールド、続くアイスタイフーンにより、約三千ものゴブリン達が凍結して討伐され、エルダーゴブリンジェネラル軍は事実上瓦解して敗走していた。
「伝令、北より鉄壁のリンバルト大将軍率いる援軍が向かっています。明日到着する予定です」
「なんと!?あの鉄壁のリンバルト将軍が直々にいらしたのか?」
「は!騎兵五千を率いてエレノへと行軍中との事。今は町から少し離れた大河を渡河中であり、兵の休養を待って明後日には到着予定で有ります!」
「そうか、伝令ご苦労!君も休み給え」
アリシア率いる鉄級ランク冒険者達六十人による追撃戦が始まり、尚且つ多数の伝令の早馬によりエレノにも明るい話題が入って来ている。エルダーゴブリンジェネラル襲来当初、エレノは西のダンジョンにいた冒険者やグラントの街から見捨てられ、王都からの援軍が来なければ滅亡すると思われていたが、アリシアの登場で戦況は覆り、エレノの民が思うより早く王都エルトラからの鉄壁のリンバルト率いる援軍が近い事を先触れの早馬から知ったエレノの町は既に穏やかな朝を迎えている。
「みんな聞いてくれ! 先日、魔法使い殿の活躍にてエルダーゴブリンジェネラルの群れを撃退する事に成功した! 王都よりリンバルト将軍率いる五千の騎兵も大河まで来ておるらしい! みんなには普段通りの生活に戻ってほしい!」
「もうゴブリンに怯えないで生活出来るんですか?」
「普段通り? 戒厳令は?」
「うむ、皆の心配は分かる! だが、ゴブリンは魔法使い殿のおかげで散々負かされ逃げ散った! 安心して生活すると良いぞ!」
「はあ、やっと平和な生活に戻れるわ」ざわざわ……
「魔法使い殿って凄いな」ざわざわ……
「では、解散!」
エルダーゴブリンジェネラル群はアリシアによって壊滅、町の戒厳令は既に解除されて住民達はそれぞれの住居に戻り、ほぼ普通の生活を取り戻す。
一応、東門近辺は兵士と冒険者が陣を張っているが、主な仕事は東門の外の後片付けであり、東に向かった斥候部隊の報告により先日名もない村に派遣されていた兵士と避難民の無事も伝わり、エレノの町からは百人以上の兵士が食料や薬剤を持って避難中の名もない村の村人達の護衛に向かっている。
「ふむ、王都よりの援軍が近いか…これは有難いな」(助かった)
「ははは、今回のエルダーゴブリンジェネラル襲来は魔法使い殿のおかげでなんとかなりましたな」
「そうだな。奇跡的に戦死者も少ないし、怪我人も殆どいないしな」(ほんと奇跡だな)
エレノの兵士達は笑顔でお互いの顔を見る。しかし、少し離れたところに厳つい冒険者が渋面を隠さずにいた。
緊急依頼で召集され、一度は死ぬ覚悟で町の北門の防衛に臨んでいたが、防衛5日間、エルダーゴブリンジェネラルとは、ついに一戦もせずに終わりそうな銀級上位パーティーの面々と、リーダーを任された銀級上位ランク冒険者アイオス達である。
彼等は昨日、アリシアの魔法アイスストーム三連発とアイスタイフーンによって事実上は瓦解したエルダーゴブリンジェネラルの追撃に嬉々として名乗りを上げたものの、エレノの兵士隊長に拠点防衛の為に出撃を止められて渋々陣地を守り今に至る。
今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします
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