第56話・追撃と避難民の脱出
アリシアは鉄級ランクの冒険者達を率いて森を進んで行く。アリシアの魔法で五千匹の群れの過半数以上の同胞を失ったエルダーゴブリンジェネラルは森を東に走り抜けた。
撤退時に多数の雑魚ゴブリン達は恐慌をきたしてエルダーゴブリンジェネラルの指揮を外れており、ゴブリン達の群れは半ば完全に瓦解している。
敗走するエルダーゴブリンジェネラルの後ろには精強なゴブリンナイトが数十匹、古参のゴブリンソルジャーやアーチャーなどが数百匹着いて来ているが、他の雑多なゴブリン達は散り散りとなったようだ。
「グォーーーーーーーー!」(人間め!)
「ギャギャギャ!」(ジェネラル様、我等が足止めいたします!)
「ガアァアアーー!」(足止めは要らん、我等はねぐらで人間でも喰らって待てば良い!)
「ギャギャギャ?ギャギャ!」(しかしジェネラル様よろしいのですか?人間が追って来ておりますぞ!)
「グォー、ガガウ!」(ねぐらまで誘い込み、洞窟内に捕らえた人間を人質にすれば良いのだ!)
「ギャギャ!」(畏まりました!)
ゴブリンジェネラルは尚も敗走を続け、先行して東の洞窟近くにいたエレノの町の斥候部隊に捕捉された。アリシアと鉄級ランク冒険者の部隊はレイドを組んで追撃にあたる。
「ゴブリン発見!剣士や戦士は前へ!」「おう!」
「狩人や盗賊は援護と警戒な!」「了解!」
「サポーターやポーターは薬や物資の受け渡し頼むぞ!」「あいよ!」
「先を急ぎます!ウッドスパイク!」
《コラコラ、冒険者達の仕事を奪うなよアリシア》
(時間がありませんよ師匠!)
ドスドスドスドス!「ギャガッ!?」
「おっし、先に進むぞー!」
「アリシアちゃんは体力と魔力?マナだっけか?まあ温存しといてくれよな!」
「分かりました!」
《ほらな、言われただろ?他人の仕事を取ると怒られるからな?反省しろよ》
(分かりました)
その後も逃げ遅れたゴブリンの小集団はアリシアと冒険者の連携の前に次々と敗れ去った。
この逃げ遅れたゴブリン達、実はエレノの町からの要請を請けた黒狼団が先回りして散布した臭い草の汁に巧みに誘導され、煙で燻されて寸断されていたのだがアリシア達はそれを知らない。
しかし、陰ながら支援する人々の力が有ってアリシア達六十一名が安全に、小集団に別れて散り散りとなりながらも二千に届くエルダーゴブリンジェネラルの群れを追撃出来たのも歴史に埋もれた事実であった。
そして、その頃……エルダーゴブリンジェネラル不在の東の洞窟には、名もない村からの帰還組の斥候部隊百三十名余りが洞窟前で居残り組となっていたゴブリン数十匹に奇襲を掛けていた。
「オラオラ!雑魚のゴブリンなんざ俺達の敵じゃねぇ!」
「洞窟内の仲間を助けろー!」
ダダダダダダ……ドス!グシャッ!ブシュッ!「ギャガッ!?」
洞窟の外で数の暴力に押されて洞窟内に侵入してきたゴブリン達は洞窟内で完璧な陣地を形成していた斥候隊と避難民の生き残りであるガイソンの親父さん率いる新人部隊に次々と討たれた。
そして、名もない村からの帰還組と洞窟内に立て籠もった斥候隊と名もない村の避難民の生き残り達は、洞窟内部に築かれた見事な陣地で無事合流に成功する事となる。
「おーい!そこに名もない村の避難民と斥候隊の生き残りは居るかー!」
「おう!そちらは援軍か!斥候隊分隊長のガイソンだー!ここに避難民と斥候隊の生き残りが居るぞー!助けてくれー!」
「おっ、なんだよ。ガイソンの親父さん生きてたのかよ!」
「ハハハ、助かったよ。俺達も既に限界でなー、避難民の中にオルソンとパスカルと云う斧使いと猟師が居てな、うちの新米兵士達よりも数段使えて助かったんだよ。後で紹介するが今は取り急ぎ洞窟から速やかに脱出したい。避難民には動けない者が多いが兵士は何人位居るんだ?」
「だいたい百三十人位だ!」
「おいおい……そりゃ凄いな、外のゴブリンは大丈夫なのか?」
「ああ、今んとこは大丈夫だぜ。昨日の夜までは三千なんざ軽く超える位のゴブリンが居てビビってたんだがな、連中エレノに向かって行ったらしい。親父さん、直ぐにここから逃げる事は出来るか?」
「そうだな、オルソン君!エルさん達に直ぐに出れるか確認頼む!」
「分かりました親父さん!」
「お、あれがオルソンって奴か?凄い筋肉だな!」
「ハハハ、今が何日かは分からんが、今までわしらと一緒にゴブリンを叩きに叩き潰しておったからな!位階はかなり高いぞ!」
「そうか、エレノの衛兵には是非とも欲しい人材だな。後でスカウトしてみるか」
「ハハハ、そうしろ」
百三十名余りの斥候部隊と親父さんのガイソン達が合流して半刻、エルやガルムなどの避難民達を荷車に載せた二百人近い一団がエルダーゴブリンジェネラルの到着までギリギリのラインで東の洞窟を出発する。
別任務を与えられ東の洞窟を見張っていた斥候兵と情報を交換し、危険を避ける為に進路を少し北に修整してエルダーゴブリンジェネラルの群れを回避しつつ、斥候部隊と避難民はエレノの町へ急いだ。
それを確認した別任務を受けた見張りの斥候兵がエレノへと単身走り出す。
今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!
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