第57話・怒り狂うゴブリンと煩い避難民
エレノへと侵攻してきたゴブリンを半数に減らせば東の洞窟の仲間を助けられると云う言葉を信じたアリシアは、その全ての能力を開放、師匠のサポートを借りて強大な戦術級魔法を連発して行使し戦略級魔法を形成、ゴブリン群五千匹の先鋒と次鋒である約三千のゴブリン達をアイスタイフーンの魔法で吹き飛ばして葬り、前線を指揮していたゴブリンシャーマンの魔法にカウンターで魔法を返し重傷を与える事に成功する。
その凄まじい魔法の威力にエルダーゴブリンジェネラル群は恐慌をきたし東の洞窟への速やかな退避を行うが、配下のゴブリンは散り散りとなり、古参のゴブリンナイト、ソルジャー、アーチャーなどが数百匹だけ従うだけとなる。
アリシアは気の良い冒険者の仲間と共にエルダーゴブリンジェネラルを追走、様々な勢力の援護により散り散りとなったゴブリン達の群れを次々と討伐していく。
ズシャッ!「ギャガッ!?」
「いっちょ上がり!次にいくぜ!」
「怪我は有りませんか!皆さん、戦闘後は速やかに回復を!」
「うちのパーティーは怪我は無し!」「こっちも問題ないよアリシア!」「了解!私達は傷薬を使うわ!」
「各パーティーは武器も手入れして下さい!業物のロングソードや弓矢、革の装備ならば用意してますから!」
《鉄級冒険者か、流石にベテランの兵士以上の働きをするな……俺はコイツらが気に入ったよアリシア。なるべく怪我をしないように指揮をとれ。出来るな?》
(もちろんです師匠!)
「皆さん!誰一人欠けずにエルダーゴブリンジェネラルを倒してエレノへ帰りましょう!」
「あいよ!」「おうさね!」
師匠の覇王時代の武勇伝や昔話を二年ほど聞かされて育ったアリシアには指揮の才もあり、エルダーゴブリンジェネラルの支配を外れたゴブリン達を倒しつつ前進していたが、味方の損害は全くといって良いほど無かった。
前線で崩壊したゴブリンシャーマンの群れを追尾して倒しつつ前進するアリシア達に、アリシアと追随する形で冒険者達達の前方に素早く拡がったエレノ斥候部隊の隊員達がゴブリン達の情報を次々と持ってくる。
「アリシア殿、ゴブリンシャーマンが直ぐ近くにおりますぞ!エルダーゴブリンジェネラルは東の森に陣を敷いております!」
「エルダーゴブリンジェネラルに捕まった人達はどうなりましたか?」(みんな…)
「そこはご安心を!先ほど東の洞窟を見張っていた者から連絡が有りました!先日、名もない村方面へ避難民捜索の為に先行していた大規模な斥候部隊百余名が洞窟前の見張りのゴブリン達を奇襲、洞窟内で避難民達と合流し、現状エルダーゴブリンジェネラルの洞窟側への移動を鑑み、森を北に大きく迂回しつつエレノに向かっておりますぞ!その辺りは我々にお任せを!」
「みんな助かったんですね!」(良かった!)
「既に町に伝令を向かわせており、エレノの町からも追加でゴブリン討伐隊と避難民への護衛が向かう手筈です!安心召されよ!」
「では、私達も心置きなく戦いましょう!」(もう二度は無いのですから!)
《ふむ、名もない村の連中は助かったか……アリシアよ、まずはゴブリンシャーマンを潰すぞ》
「おう、俺達も戦うぜー!」(小遣い稼ぎにも丁度良いからな)
「では、出発!」
事実上瓦解したゴブリン達は組織的な抵抗は全く出来ず、エルダーゴブリンジェネラルの指揮範囲からも外れており、瞬く間にアリシアと冒険者達に討ち取られていった。
鉄級冒険者はゴブリンを攻撃しては行軍に遅れない範囲で多少の剥ぎ取りをしているので若干追撃に遅れが出ているが、斥候部隊のおかげで瀕死のゴブリンシャーマンとエルダーゴブリンジェネラルを追尾出来ている。
リーダーを欠いたゴブリン達は組織的な行動は出来ず、エレノの町に対するエルダーゴブリンジェネラルの脅威は既に去ったと言えよう。
東の洞窟前では……
東の洞窟にエルダーゴブリンジェネラルが戻った時、洞窟内には避難民の姿は既に無く、エルダーゴブリンジェネラルは怒り狂った。
「グガァーーーーーーー!」(捕虜がおらんではないか!)
「ギャギャ!」(見張りの同胞が多数死んでおります!)
「グガァ、グギャギャギャ!」(仕方ない、追撃している連中に我等の力を見せてやろうぞ!)
「ギャギャギャギャ!」(ジェネラル様に栄光あれ!)
その頃、ぎりぎりのタイミングで難を逃れた衛兵隊は、死にかけの兵士やガルフを荷車の荷台に乗せて林道を北に大きく迂回して進んでいた。
まだまだゴブリンジェネラルの群れとの距離も近く、はぐれゴブリンとの戦闘は先行した斥候部隊がこなしている。
アリシア達がエルダーゴブリンジェネラルの率いるゴブリンの大群を戦術・戦略魔法の連発で撃破して追尾する頃、エルダーゴブリンジェネラルの巣を斥候部隊百三十名余りが急襲してゴブリンの残留部隊を撃破し、洞窟内に囚われていた名もない村の避難民と以前の戦闘で生き残った兵士達を連れてゴブリンの住む森を北に迂回してエレノの町に避難していた。
「ほれほれオルソン、もっと早く動かんか!」
「ガルフ爺静かにしろって、せっかく拾った命を無駄にすんなよ!」(頼むから静かに寝ててくれよ)
「オルソン!ワシを爺扱いするな!」(全く、若いもんは…)
「バスカル、なんとか言ってくれよ!」(ほんと頑固なんだよな)
「オルソン、アリシアが町に居るって言ってみたら?」(この爺はアリシアの言うことだけは聞くからな)
「なんじゃと!?アリシアちゃんも無事だったのか!」(おお、アリシアちゃんに礼を言わんうちは死ねんわい!)
「アリシアは無事でしたか……ゴホッ、ゴホッ……」(良かった)
「院長、今は背中の怪我を心配して下さい!」(それ、かなり重傷ですって!)
「皆さん、お静かに願います」
「「すいません……」」
こんな感じで一部の者は騒がしく、ゴブリンが至るところに居る森を精強な斥候部隊の隊員達が枝払いをしつつ、頑丈な荷車を牽いて進んでいく。
今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます