第55話・瓦解したゴブリン群
アリシアが放つ強烈な魔法の連発により発生した氷点下の台風によってゴブリン群の先鋒と次鋒のほぼほぼ全てが壊滅していた。
先鋒集団後方にて指揮を任されたゴブリンシャーマンは夥しい数の同族が凍りつき、粉々に砕かれる様を見て驚愕する。
そして、圧倒的な魔法使いとしての力量差を見せつけられたシャーマンは最悪な選択としてエレノの壁を破壊するのを止めてアリシアを狙って魔法を放とうとするが、それは失敗に終わる。
魔法は術者のレベルによって発動時間に違いがあり、アリシアの魔法発動速度は一瞬で終わり、ゴブリンシャーマンがファイアーボールの魔法を生み出す前に反撃を受ける事となった。
「ギャギャギャ!」(アイツを殺せ!ファイア……)
《アリシア、狙われているぞ!》
「これは魔法!?穿て!エネルギーレイ!」
「グギャッ!」
繰り返し続く戦術級魔法攻撃で、さらに数百匹程の後続のゴブリンが凍りつき、先鋒指揮を執るゴブリンシャーマンが堪らずアリシアに向かってファイヤーボールの魔法を唱えようとした瞬間にアリシアがカウンターで無属性魔法エネルギーレイを放つ。
ゴブリンシャーマンはカウンターのエネルギーレイを感知し、咄嗟に少し避けることに成功したものの肩を貫抜かれる重傷を負い前線の指揮は崩壊、崩壊した先鋒と次鋒のゴブリンシャーマンの群れの中で比較的に強い側近の生き残り達が命掛けでアリシアの追撃の拡散エネルギーレイを身を以て防ぎ、瀕死の怪我を負ったゴブリンシャーマンや仲間を担いで戦場から逃亡した。
尚、エネルギーレイは無属性魔法の対単体、集団攻撃魔法であり、マナの動きを感知してカウンターで強力なエネルギーの熱線を対象に放ち破壊する魔法である。
アイスストームは3cm位の無数の氷の礫を内包した極低温の嵐を起こし、範囲内の対象を切り刻んで凍りつかせる広域範囲魔法で有るがアイスストームは連続で唱えた場合は攻撃範囲と威力が上がり続ける戦術級魔法と呼ばれる恐るべき魔法であった。
「さあ、更なる魔法をお見せしましょう!全てを凍らせるフローズンフィールド!凍てつく台風となれ!アイスタイフーン!」(村のみんなを助けるため、ゴブリンには全て消えて貰います!)
《アイスストーム三連続にアイスフィールドを固定、四つの魔法を合わせて超低温の氷の極地台風を創り出したか……見事だアリシア》
フローズンフィールドは広範囲の温度を極低温状態にするだけの状態変化の範囲魔法であり、それ自体には攻撃力はほぼほぼ無いのだが、先に使用したアイスストームを固定して次なる戦術級魔法のアイスタイフーンを使う際には重要であり、アイスタイフーンはアイスストームを重ね掛けし、フローズンフィールドで極氷点下まで気温を落として初めて使える戦略級魔法である。
本来のアイスタイフーンは広い平原などに配置された敵軍を凍りつかせる戦略級魔法であり、数千から数万の敵を氷像と化し完全に破壊する事を目的としている。
アリシアは魔力をさらに込め、三度目のアイスストームを放ち、追加で放たれた魔法でさらに極氷点下の世界を産み出す、そこから放たれたアイスタイフーンの暴風は凄まじい勢いで魔物の森に布陣したゴブリン達を覆い尽くし、低温魔法による追撃に次ぐ追撃で極地的に発生した極超低温の台風により、先鋒次鋒の後に続く千匹近いゴブリンが凍りついた。
これには流石のエルダーゴブリンジェネラルもなす術も無く、再度集結して五千に膨れ上がったゴブリンの大群も半数以下となり瓦解寸前となる。
ここに敵となった際の魔法使いの恐ろしさと一騎当万と言われる伝説の力が顕現する事となる。
「グォーーーーーーーー!」(撤退せよ!)
アリシアの怒涛の魔法攻撃を恐れたエルダーゴブリンジェネラルは配下の中でも精強なゴブリンソルジャーなどの大群を素早く撤退させ、先鋒を指揮していた参謀のゴブリンシャーマンは重傷を負って潰走、新たに合流した三千匹近いゴブリンの同胞達は皆殺しにされ、猛吹雪に恐慌をきたした雑魚のゴブリン達は我先にと逃げ出した。
そして、斥候部隊の追尾と共にアリシアと冒険者達が出陣する事となる。
「魔法使い殿!?」(何処に行かれるのか?)
「すいません!私も斥候部隊の兵士さん達と一緒にゴブリンジェネラルを追います。魔石の剥ぎ取りはお譲りいたします」(ゴブリンジェネラルの首は私が狩ります)
《ほれ、アリシアよ、面白い連中が来たぞ》
「アリシアちゃん!約束だぜー!俺達もまぜてくれや♪」(なんか面白そうじゃん♪)
「貴方達は…冒険者のアイオスおじさんの仲間の人達?」(怖い顔のアイオスさんの仲間?)
「アイオスおじさん?ああ、ブルーシールドのクランマスターのアイオスの事か?アイツは唯一の銀級上位ランク冒険者なんで銅級上位ランクパーティー3組やらとソロ連中とエレノで居残りだよ♪」(ぎゃはは、兵士に止められてやんの)
「皆さんは何故私と一緒に着いて来て下さるのでしょうか?」(それなら、心強いですけど…)
《ふむ……あの新種のオーガは来んか。まあ、仕方あるまい》
「まあ、ほら、昨日酒場で約束したろ?エレノの冒険者は約束は守る!俺達鉄級ランクが十パーティー六十人がお供するぜ。アリシアちゃんの露払いしてやるから雑魚のゴブリン共は俺等に任せな!」(溜まった鬱憤晴らしてやるぜ!)
「野郎だけじゃないよ!お姉ちゃん達にも任せんだよ!アリシア!」
「はい!ありがとうございます!お姉様達!」
「うん、姉ちゃん達に背中は任せな!」
《ふむ、律義な奴らよ。こういう連中は嫌いではないな。ハハハ》
こうして、勢力が約半数の二千匹以下に落ちたエルダーゴブリンジェネラルの大群に、斥候部隊二十人とアリシア含むベテランと呼ばれる義理堅い鉄級ランクの冒険者を含む六十一人がエルダーゴブリンジェネラルの追撃を開始した。
後に歴史書の英雄伝の一説、アリシア伝で書かれる辺境での英雄殺しの二つ名付きエルダーゴブリンジェネラル追撃戦が開始された瞬間であった。
今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます