第53話・少女の涙と義侠心の強い冒険者

 エルダーゴブリンジェネラルの巣に囚われた仲間がいるかもしれない……その情報を聞いてしまったアリシアは直ぐに村人達の救出を兵士達に願い出るが、エレノの守備隊からは色良い返事は得られず、悔し涙を流しながらポンチョの酒場に入ったアリシアには暇潰しに交代で酒盛りをしていた気の良い冒険者達が何事かと集まってきた。


「みんな……」ボタ……ボタ……(ごめんなさい……ごめんなさい……)


「いらっしゃい♪アリシアちゃん?あれ?泣いてるのかい?」


「なんだと!?アリシア嬢ちゃんが泣いてる?おいおい、誰だ俺達の嬢ちゃんを泣かした奴は!」(どうしたんだ!?)


「何!?アリシア嬢ちゃん大丈夫か?誰に泣かされた!俺達が叩き潰してやる!」


「東の森の奥の洞窟にいるエルダーゴブリンジェネラルに……私の仲間が捕まってるんです!みんなを助けたいんです!でも、ゴブリンの数が多過ぎて助けにいけないんです!」


「なんだと!?嬢ちゃんの仲間が生きてんのか?」


「はい、たぶん、エルダーゴブリンジェネラルの捕虜にされてて、何人か喰い殺されてしまって……私、どうしたら……」


「くそ!なんだそりゃ。こっちは近場のダンジョンに居るはずの冒険者すら助けに来ねぇ!でも、ゴブリンの数が多過ぎて、こっちから打って出る余力もねぇ!嬢ちゃんは仲間だ!俺達も助けてやりてぇが……ゴブリンの数が減らなきゃ無理なんだよ畜生が!」


「せめて……ゴブリンが半分以下に減れば俺達が何とかしてやれるんだが……」


「ほんとですか!?ゴブリンを半分以下に減らせば助けてくれますか?」


「当たり前だ!このアイオスが直々にエルダーゴブリンジェネラルを叩き斬ってやんぜ!」


「団長~、俺達の事も忘れんで下さいよ。俺達もアリシア嬢ちゃんには色々と世話になってんですから」


「ああ、アリシアちゃんの仲間を助けに行く時は着いていくぜ!」


「ありがとうございます!よろしくお願いします」


 この数日、アリシアは傷薬やポーションを量産していたが、ほぼほぼエレノの守備隊に渡されていたため、暇になった昨日と今日の分の薬品が冒険者達にやっと配布された。


 冒険者達は今まで粗悪品の傷薬と劣化したポーションで凌いでいたが、凄まじい治癒能力が有る普通品質+クラスの薬品が配布された事により死亡のリスクは極端に下がる。


 その事を冒険者達は理解し命に直結した回復アイテムを作成しているアリシアは本人が思っているよりも冒険者達に可愛がられていた。


 この数日で得た信用と仲間意識はアリシアの容姿や性格も手伝ってうなぎ登りであり、冒険者達はアリシアがエルダーゴブリンジェネラルから仲間を救出する際の手伝いを快く引き受け、そのままアリシアを慰める宴会が開かれる事となった。


「お~し!今日はアリシアも呑め〜!」


「え~と、私10歳なんですよ?」


「少し位は良いだろー」


《そうだな、たまには呑んでみろアリシア》


「あ、はい」


 ちなみにリアナ大陸では働いたら一人前なので飲酒に関しては法律ががばがばである。一人前なら五歳でも飲酒出来たりもする。


「良し!甘くて弱い方の果実酒持ってきてやれ!ポンチョはなんか嬢ちゃんが元気になる料理を沢山持ってきてくれや!」


「ういーっす!」「あいよ♪」


わいわい……がやがや……


「アリシア〜!呑んでるか〜!」


「呑んれまふよ〜!」


《酒弱っ!?一口で酔ってる?》


「そっか〜!大丈夫か〜?気分は大丈夫か〜?もう泣くなよ〜!俺達が付いてるぞ〜!なあ、みんな〜!」


「おう!俺達ゃアリシアの仲間だ〜!」


「ガハハハハー!」


「誰か景気付けに芸でも披露しろや〜!」


「あ、わらひがしまふ〜!」


《これは……嫌な予感しかしない……》


「おい、アリシアがなんか見せてくれるぞ~!」


「何時もの隠し芸か〜!」


「やれやれ〜!」


「これに取り出したりまふは〜薬草でふ〜!そしてハーブもだひて〜!魔法で器を作りまふ〜!」


《おーい、ここで薬剤作るなよー!》


「おー、なんか面白い事やってんな〜」


「は~い!これを魔法で造った水とまぜまぜ〜!」


《こらこら!》


「おう?なんかグルグル回ってんな〜!」


「出来た水は容器に入れて〜!」


《あー……造っちまったよ》


「おいおい、嬢ちゃん……それはもしかして……」


「は~い!みんなにポーションプレゼントれふ〜!」


《あー……ま、いっか相手は気の良い冒険者だし》


「ちょ!?それ!スゲェポーションじゃね?貰って良いのか?」


「は~い!みんな並んで〜!」


《うん、普通に高品質のポーションだな》


「ウイーッス!」「アザーッス!」


「ちょっと!アリシアちゃん、それは困るっすよ!」


「良いじゃねぇかジャッシュー、東の洞窟まで仲間を助けに行く時の報酬って事で貰っとけー。ま、鉄級や石級の連中なら命と等価の逸品にしか見えんがなー。ガハハハ!」


「団長ー!困りますって!」


 その際、冒険者達に隠し芸として魔法の傷薬調合を実演して無料配布する。さすがに超高額な高品質クラスの傷薬やポーションを無料で配られるとは思わなかった冒険者達は面食らったが、妹分のアリシアの評価はますます上がっていく。


 そして、冒険者達のおかげで元気を取り戻したアリシアは身体を休めて翌日の戦いに備えた。もう手加減する気は無い。名もない村の仲間達を助ける為、アリシアは使える魔法の中でもゴブリンを倒しやすい魔法をチョイスして魔力の調整をして眠りについた。


 翌朝、まだ早いうちにエレノの町にゴブリンジェネラル襲来の鐘がなる。





今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!

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