第44話・ロックジャベリンの脅威
アリシアが魔物の棲む森である封印の地【ルシオン】の外でまともに制御して使ってみた魔法は、アリシアと師匠にとっては非常に地味でビミョーでした。
五千に届くエルダーゴブリンジェネラル群の前衛百体と後詰めの精鋭アーチャー隊の五十体程が上空から高速回転しつつ降り注ぐ鋭い槍に貫かれて大打撃を受け、二次被害として石槍から飛び出す細かいスパイクや地面に埋没した鋭い石などで大怪我を負い、エルダーゴブリンジェネラル群の士気の大きな低下を招きます。
「こ、これは!?これが魔法の力なのですか?魔法使い殿…実に凄いですな!」(これが魔法…)
「ははは、これは凄まじい威力ですね。目算でゴブリンが100以上、ゴブリンアーチャーは50以上死んでおりますよ!昨日倒したゴブリンやゴブリンアーチャー達と同じ位の戦果ですね!」(魔法…すげぇ)
「うーん、久しぶりに使ったのでコントロールが甘いですねー。やはり少し調整しなければ……まだまだ威力と範囲が足りませんねー」(範囲を広げて密度も調整しないと…)
《ま、俺が封印されていた森の外ならば及第点だ。まぁまぁ良いとは思うが威力と範囲が全く足りんな……もう少し魔物の棲む森以外でのプラナとマナ、それと魔素の把握と撹拌をしっかりとするんだね》
(分かりました師匠!)
「「「えっ!?」」」(これでも威力が足らんのかい!)
エレノの東門の前のそこかしこに大量のゴブリン、そしてゴブリンアーチャー達の串刺し死体と高さニメートルほどの石槍が障害物としてそびえ立つ中、アリシアは思ったほど威力が無いロックジャベリンの制御の甘さを悩み、兵士達はその巨大な魔法の威力を見つつも納得していない様子の美少女魔法使いの様子を見て更に悩んだ。
流石、魔法使いは伝説級である……と。
そして、ゴブリン側も動き出し戦況は再び攻防戦へと動き出す。
エルダーゴブリンジェネラルの雄叫びで呆然と立ち尽くしていたゴブリン達が再び侵攻を開始した。
「ゴァーーーーーーー!」(突撃だ!)
「ぎゃぎゃ!」(前進せよ!)
「ぎゃぎゃ!ぎゃぎゃぎゃぎゃ!」(進め!人間を殺せ!)
ブシュッ「ぎゃぎゃ!」(この岩は危ない!)
プシュッ、プシュッ「ぎぎゃ!?ぎゃぎゃぎゃ!」(押すな!地面にも尖った石が有るぞ!)
「ゴァアアアーーーー!」(黙って突撃しろーー!)
プシュッ、プシュッ「ひぎゃっ」(痛い、無理だ)
「ゴアァアアアーーー!」(早く突撃しろと言っているのだ!)
ブォン!グシャッ!「ぎゃひっ!?」
「ゴアァアア!」(動かねばこうなる!)
プシュッ、プシュッ「ギャギャギャ!」(殺されたくなければ前進!)
アリシアの放つロックジャベリンの魔法で散々に叩き潰されたゴブリンの死体と、地面に突き刺さりトラップとして障害物となった鋭い石槍をなんとか乗り越え、エルダーゴブリンジェネラルの怒声を聞いた無数のゴブリン達が足や手を傷だらけにして東門の壁に攻めて来ている。
「さて、もう一度ロックジャベリンを……」
《うむ、次は魔法の制御をしっかりとだな……》
アリシアの身体からプラナが湧き上がりゴブリンの上空でマナと魔素が組み合わさり、細かな石が槍を形創ろうとしたが……。
ヒュヒュヒュヒュン!トン!トントントン!
「魔法使い殿!お下がり下さい!」
「ケビンさん?」
「はい!我々がゴブリンの矢を防ぎますので下がって下さい!」(アリシアさんは僕が守る!)
「あー、もう一回、魔法を試したいんですよねー」
《アリシア、戦局を見ろ。今はこれで十分だろう》
ロックジャベリンの魔法を唱え終え、再び威力を調整してプラナとマナを放出しつつ魔法を放とうとするアリシアの前に、後のアリシリアの英雄ケビンを含むエレノの盾兵と弓兵部隊がサッと割って入った。
「ここからは我等にお任せを!魔法使い殿は下がって下さい!」(貴重な戦力を無駄にせんぞ)
「あれ?威力を調整してもう一度ロックジャベリンをゴブリンの上に撃とうかと……」(あら?)
《ふむ……ここは下がれアリシア。前衛のゴブリンの後ろにスリング持ちのゴブリンソルジャーとアーチャーが居るぞ、狙い撃ちされる前に下がれ、今無理はするな》
師匠の助言を聞いてプラナの放出が止まった上空では空間に固定されたロックジャベリンの残滓が落下をはじめる。
「いえ、魔法使い殿、今日のところはこれで十分で有ります!盾持ちは前へ!弓兵部隊構え!」(この戦、勝てる!)
「射て!」(いけ~!)
ビュンッ!ヒュヒュヒュヒュン!
ドスドスドスドス!「「ぐぎゃー!!」」バタバタバタバタ……
エレノの町に侵攻したゴブリンのうち、多数の個体がアリシアの放った魔法の副次効果の鋭い石槍のトラップで動きを阻まれ大怪我を負う。
トラップで大怪我をしたゴブリンの大群とロックジャベリンで貫かれながらも、かろうじて息のあるゴブリンアーチャー目掛け、東門の櫓の上からは前日に攻め込み撃退されたゴブリンアーチャー達の死体から回収済みの大量の弓と毒矢が弓兵達に供給され、昨日よりも大量の矢が高所よりゴブリン群へと放たれた。
さすがにエルダーゴブリンジェネラルが率いるゴブリンの大群でも、初手のロックジャベリンの魔法の威力と副次効果の鋭い石のトラップの前には為す術もなく、次々とエレノの町の弓兵の高所弓射の餌食となっていく。
そこへ2度目のロックジャベリンの残滓で有る尖った石が降り注いだ。
「今日の戦、勝てるぞ!」
エレノの兵士達は勝機を見出していた。
今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!
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