第43話・一般兵士が驚く威力のヘッポコ攻撃魔法
ゴブリンジェネラル襲来により混乱するエレノの町、名もない村から避難していたアリシアは、赤狼団襲撃の際に生き別れとなり、ゴブリンの犠牲となったと云われる村の仲間達の仇を討ちたい想いから、エルダーゴブリンジェネラル侵攻時に弓兵として戦おうとするもエレノの軍には受け入れられず、ならば薬師や医師として役立つという条件で冒険者となり、素晴らしい傷薬やポーションを量産して負傷兵の治療を行った。
エレノの町にとって僥倖だったのはアリシアがまさかの治癒魔法を使う聖女だった事であり、辺境のエルト小国では半ば伝説化していた治癒魔法使いの登場により、エレノの兵達は倒れては戦場へ復帰し倒れては再度復帰するゾンビアタックのような戦いを敢行して数で大いに勝るエルダーゴブリンジェネラル率いるゴブリンアーチャー隊に大ダメージを与え襲撃初日を乗りきった。
そして、ゴブリンジェネラルからのエレノ防衛戦2日目である本日は、魔法使いのアリシアを中心にしてエレノ弓兵隊や盾を構える部隊が物見櫓でエルダーゴブリンジェネラル群襲来を待った。
ゴブリンの群れを追尾した斥候部隊の報告によれば、エルダーゴブリンジェネラルはエレノから離れた後、東の森の奥でなにやら騒いでいたらしいが、一通り騒いだ後にエレノの町に向かって侵攻を掛けた。
そして二日目の攻防戦が開始される。
「敵襲!ゴブリンジェネラルが来やがった!敵襲だ!」(また来たよゴブリン野郎!)
「ゴブリンが来るぞ!戦闘用意!」(また来んのかよ!)
「総員戦闘用意!敵襲!盾持ちは前衛、弓兵は後衛で配置につけ!」(ほんと勘弁しろよ!)
「「「おう!」」」
エレノの東門の内側、昨晩の侵攻で壊れた外壁は補強を済ませ、新たにゴブリンの死体をぶら下げた壁の裏側では兵士達が各々武器を構え、櫓には一晩で回復した弓兵部隊が立ち並ぶ。
昨日と同様にゴブリンの大群は東門前に大挙して押し寄せたが、壁に吊り下げられたゴブリンアーチャーの切り刻まれた死体を見て、前衛のゴブリン達は若干怯んでいた。
「皆さん、今からゴブリン達に攻撃魔法を撃ちますので、追い討ちの程よろしくお願いします。敵の真ん中に範囲魔法を使います!」(さて、久しぶりの攻撃魔法の威力を確かめよう)
「了解です!」「一発かまして下さい魔法使い殿!」
《うむ、名もない村の時と同じ轍を踏むなよ?あくまでも冷静にな》
(分かりました師匠!)
《アリシアは返事は良いんだがな……威力や精度はちゃんと確かめろよ?ここは封印された魔物の棲む森では無いのだからな》
「では、攻撃魔法撃ちます!追撃に備えて下さい!」
「はい、魔法使い殿、よろしくお願いいたします!」(魔法か…ゴブリンアーチャーの5、6匹は間引いてくれるとスンゲェー助かるな)
アリシアは両手を広げプラナを放出し魔の森の魔素とマナと撹拌、空気中の大量のマナを物質化し始めると、空の彼方から結晶化した大量の石の槍が生成されては空に固定されていく。
東門の遥か上空に鋭いスパイクの付いた石の槍がピタリと留まる。
「では、行きます!宙空より我が敵を穿て!回転せよ!ロックジャベリン!」(範囲狭めで…)
東門上空に在った石槍達、アリシアが魔名を唱えたと同時に高速回転を開始、エレノの東門の前に押し寄せたゴブリンが怯んでいた瞬間を目掛け、高高度からの高速回転と自由落下で鋭いスパイクが付いた長さニ、三メートル程の石槍がゴブリンの群れの前衛を中心に大量に降り注いだ。
ロックジャベリンは空に大量の鋭い石の槍を形成して高速回転と高所からの落下運動エネルギーで敵を直上から破壊する空間系土魔法。落下した石の槍は鋭く、地面に突き刺さった後は障害物となって敵を傷付ける二度嫌らしい範囲魔法で有る。
キュルキュル……
ドス!「ぎゃひっ!?」
キュルキュルキュル……
ドスドスドス!「「うぎぎっ!?」」
キュルキュルキュルキュルキュル……
ドスドスドスドス!「「ぎゃぎゃ!?」」
キュイイイイ………
ズブッ!グシャッ!ドシュッ!
ズドドドド…………「「「ぐぎゃあーーーー!!!」」」
「「うおっ!?」」
次々と降り注ぐ鋭い石の槍達、その威力は凄まじく、エレノの東門の前はスパイクの付いた石槍に貫かれたゴブリンのオブジェが乱立して死屍累々の地獄絵図となった。
それはまさに共同墓地の墓標の如く、無数の鋭いスパイクの付いた石槍が高速回転して飛来し、効果範囲内のゴブリン達をズタズタに引き裂き串刺しにしている。
そして、アリシアのブックには大量のゴブリンアーチャー討伐が加筆され、倒したゴブリン達から放出されたプラナが集まり、土魔法の技能が上がり、初級対モンスター技能、魔力制御技能を入手して位階が上昇した。
これには初めて魔法を見たエレノの兵士達も度肝を抜かれて呆然とし、エルダーゴブリンジェネラルの率いるゴブリンアーチャーの大群も戦意を大きく削がれる事となり、これにより一時的にゴブリンの侵攻は止まり、奇妙な空白の時間が流れる。
そして先ずはエレノ側の膠着が先に途切れて時が流れ始めた。
今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!
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