第38話・エルト小国の暗黒期
リアナ大陸歴百七十八年頃のエレノア半島のエルト王国は後に暗黒期と称される位には魔物に因るスタンピードやマナ災害が多発した時期でした。
この時期にエルト小国に現れた英雄で有る蒼の万魔将アリシア、赤髪鬼のアイオス、巨盾将ケビン、炎熱姫セシリア達を筆頭として正体不明の蒼の剣師、蒼の魔導師、蒼の聖女などの傑物が現れるきっかけとなるような災害級のモンスターであるエルダーゴブリンジェネラル、オークキング、ジャイアントオーガ、カオスレギオン、アンデットドラゴンなどのモンスターによってスタンピードやマナ災害が多発します。
大陸歴百七十八年初頭、エルダーゴブリンジェネラルがエレノを襲撃している頃、エレノア半島南東部中央にあるグラントの街から北東の山脈にある鉱山都市のセレニムまでの街道近くの森に表層でオーク達が出現する巨大なダンジョンが生まれていたのを当時は誰も知りませんでした。
このダンジョンは長く放置された為にモンスターがダンジョン内に過密してオーバーフロウを起こして各階層のモンスターが下層から表層へと徐々に追われ、ダンジョン外に押し出される形でオークが溢れて大量に近くの森に放たれる事となります。
これは事実上のモンスターのスタンピードに当たり、グラントからセレニム間でゴブリンの国を造っていたエルダーゴブリンジェネラルがオーク達との闘いで敗走し、エレノの町に向かう原因となるオークキングやオークジェネラルも、このダンジョンから押し出されたモンスター達でした。
この時代にスタンピードが重なった理由の一つには銘無しの覇王の死去が有ると云われています。
数十年行方不明となっていた覇王は実はエレノア半島のルシオンの地に封印、幽閉されていた事が後に当事者の覇王本人と弟子である蒼の万魔将アリシアから伝えられてますが、どうやら悪しき神々はエレノア最東部一帯の魔物の棲む森の魔素と覇王の巨大なプラナを相殺させる事で膨大な規模の陣を形成して覇王を外界から封印していたようです。
覇王が死去した為、覇王の凄まじいプラナがアリシアに流入し、覇王の真名で相殺されていた魔物の棲む森の魔素が陣から溢れだして多数の大小ダンジョンを形成し、気付かないうちにモンスターのオーバーフロウやスタンピード、マナ暴走などの大災害へと発展したのでした。
そうして形成された幾多のダンジョンが後に数多くの悲劇を生むのですが、先ずはエルダーゴブリンジェネラルよりもオークキングが厄介な存在です。
エルダーゴブリンジェネラル襲来の報せを持ったエレノの町からの早馬の内、殆どがエレノア半島南東部中央に位置するグラントの街近くに居を構えたオークキングに捕えられて餌食となったとされ、エレノの町がグラントの街からの支援を受けれなかったのも、このオークキングの出現に因るところが大きな要因でした。
生き延びた一部の早馬がグラントの街にエルダーゴブリンジェネラル襲来の凶報を伝え、グラントから追加で出発した早馬と共にグラントの街を抜けて北西の畜産の街スレトを経由してエルト小王国の王都に向かいます。
その頃、エレノの南西の港町サティナでは更なる厄災が巻き起こっていました。
そして舞台はエルダーゴブリンジェネラル退却の頃の東の洞窟内に戻ります。
エルダーゴブリンジェネラルの古巣で有る巨大な洞窟には、現在エレノ斥候部隊十五名とオルソンとパスカルを加えた自警団八名の計ニ十三名が交代で防衛に当たっていました。
ガシャガシャ……「ギャギャー!」
ギィン!ギィン!ザシュ!
「ギャシャアアアーーーー!」バタン……
「くそ!ゴブリンがまだまだ来るぞー!」
ギィン!ギィン!「ギャギャ!ギャギャギャギャ!」
ギィン!ザシュ!ザシュ!「ギャシャアアアーー」
ギィン!ゴス!「回復したヤツから前線に復帰を!傷薬と毒消しは有るか!」
ビュンッ!ザシュ!「ギャヒ!?」ドサッ……
「ち、今は朝なのか夜なのかも分からねぇ!ポーションも傷薬も毒消しも倒したゴブリンから手に入れたヤツが有るだけだ!もう残り僅かだよ!」
「パスカル!矢の数は大丈夫か?」
「ああ、ゴブリンのお陰で毒の付いた矢がたんまり有るよ!オルソンは陣地の修復を頼む!」
「はいよ!母さん達は飯を頼むよ!」
「分かったわオルソン。無理をしないでね」
大量のゴブリンが押し寄せる中、斥候部隊の生き残りである新米兵士達は数少ないベテラン兵士達に闘い方を学び、ゴブリンを倒しつつ、倒したゴブリンの装備を剥ぎ取りながら位階を上げ続けて更なる侵攻に対応します。
破壊された陣地には即座に自警団達が木材を嵌め込み、大工のオルソンが簡易陣地を強固に増築していきました。
避難民のストレスは少しずつ溜まっていくものの、ゴブリン討伐によるカード獲得でのブックへの加筆と放出されたプラナ吸収により兵士達の位階は上がり続けている為、オルソン達は新たな技能や天職を手に入れ洞窟内の陣地の防衛能力は確実に上がっていきます。
そして洞窟の北東部の名もない村跡では赤狼団の残党六十名を撃退したエレノ兵士隊百名がテントを張って夜営の用意をしていました。
そこに洞窟から脱出した斥候部隊の三名とセレニム方面からの斥候部隊三十名が合流して計百三十三名の兵士達は緊急会議を開きます。
「よし!先ずは現状確認をするぞ!先ずは名もない村派遣の百人隊長の俺からだ!名もない村は見た通りの焼け野原である!こりゃ廃村確定だな」
「ふぅ……次はセレニム方面派遣隊の俺達だな。正直、セレニム方面はオークの大群が居て話にならんよ。中にはオークキングやジェネラルも居たし、避難民がセレニムのドワーフに救援を求めるのは無理が有るな。セレニム方面には避難民は行って無いと断言出来るね」
「こちらは東の洞窟に行ってたんだが……あれは洒落にならん……隊長は討ち死にして俺達だけが生き延びたんだ……畜生、情けねぇ……」
「うん?あのベテラン斥候隊長ホグデンが討ち死にだと?ちょっと待て、東の洞窟では何が有った?」
「知らんのか?避難民は東の洞窟に居たが……ついでにゴブリンの大群に襲われたんだよ!」
「「「ゴブリンの大群だと!!?」」」
「ああ、三千を軽く越える群れだったぜ。うちの隊長は最後まで闘って討ち死にした!俺達を名もない村に送るためにな!」
ゴブリンの情報を聞いた名もない村派遣の百人隊長で有るデュプレ・デュランは即座に魔物の森に有る洞窟に百三十三名の捜索隊全員での偵察する事にしますがどうなる事でしょう。
ここからリアナ大陸戦記・蒼の万魔将アリシア伝の序章、エルダーゴブリンジェネラルとの闘いが加速していく処となります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます