第37話・説明回かもしんない

 改めて説明すると、リアナ大陸は地球が丸々1つは入る位に巨大な大陸です。


 菱形の形に東西南北の地域に別れており、大陸中央には最高神の天獄と呼ばれる巨大な山型のダンジョンと巨大な塔が立ち並び、その周りを白金ランク災害級以上の高ランクモンスターが生息する深い魔物の棲む森と大地神の壁と呼ばれる天まで届く巨大な壁で囲まれており、女神の光幕と呼ばれる光のオーロラ状の結界が壁の周囲を守っていました。


 リアナ大陸の西側は古の種族で有る神々の子孫で有るハイエルフの神聖領域で有り、リアナ大陸の北部と南部の間にそれぞれ巨大な壁を作って暮らしています。


 北リアナには獣魔族が住んでおり、こちらも東西は高い壁に阻まれ戦乱の真っ只中だったり、大陸の東と南に有る国も戦乱の真っ只中で大小合わせて五百以上有りました。


 そして、魔法使いが八千人程居ても魔法学院都市以外の各国には数人~数十人程しかおらず、その中でも治癒魔法の使い手は聖者や聖女として崇められる存在であり、ほぼほぼが聖光教会や月光教会、銀月教会などの宗教団体に所属しており、その人数は100人以下(二流以下の手合いも含むと魔法使いの数は倍以上の2万人近くに増えますが、聖者や聖女候補は300人を切ります)となります。


 現在、エルダーゴブリンジェネラルとの戦いは苛烈を極めており、盾を構える衛兵二百人と毎分十五発の矢を放つエレノの弓兵三百人に対して、千匹近いゴブリンアーチャーが毎分十発程度の矢を放つ戦場に於いては、お互いに少しの油断が命取りとなりかねない状況です。


 アリシアの目の前にはゴブリンアーチャーの矢を受けた重傷の衛兵と弓兵が列をなし、次々と治療を受けては東門の櫓に戻ってゴブリンアーチャーに対抗しています。


「次の方どうぞ!これはまた痛そうですね。ちょっと我慢して下さいね」(うーん、痛そう)


「よろしく……お願いします……」(めっちゃ痛いっす)


 こうして、ゾンビの如く倒されては治療を受けて復帰を繰り返すエレノの弓兵達とアリシアの力によって、エルダーゴブリンジェネラル襲来による防衛戦初日は味方の損失が限りなく少なく、ゴブリンアーチャーに多数の消耗を強いた状況で終了しました。


「グガァーーーーーーー!」(退却せよ!)


「ギャギャギャギャ!」(退却!退却だ!)


 ゴブリンキングと同格である歴戦の強者であるエルダーゴブリンジェネラルも、かつてエレノを壊滅させた事を覚えており、まさかここまで人間が粘るとは思わず、苦々しい様子で怒りの咆哮を上げて森に退却していきます。


 エレノの町の兵士達に関しても残念ながら死人が0になる事はなく、防衛初日でエレノの町が陥落する事態はかろうじて避けられ、日没と共にゴブリンジェネラルは配下を連れて町から完全に離れたのでした。


 エルダーゴブリンジェネラルの退却を受け、エレノの兵士が一時的に緊張から解き放たれ、櫓の上で疲労で倒れ込む者、退却するエルダーゴブリンジェネラルを睨む者など様々で有り、喜びもそこそこに東門前の片付けと残務処理が行われます。


 エルダーゴブリンジェネラルの後ろからは熟練の斥候部隊が追尾を開始、東門前では討伐したゴブリンアーチャー達からの装備やカード、魔石などの剥ぎ取りが開始され始めました。


「敵が退却するぞ!東門の補修を急げ!」(やっと終わった…)


「ゴブリンジェネラルの動向を確認!斥候部隊は出発しろ!」(うーん、また来んのかね?)


「ゴブリンアーチャー達の装備とカード、魔石を回収!剥ぎ取った後の死体は外壁に吊るせ!」(よっしゃ、飲み代稼ぐぞ!)


「「了解です!」」


 リアナ大陸における『カード』は一定以上のランクのモンスターが倒された際に離れた場所に居る討伐者に分配されずに残ったプラナの塊で有り、魔石とは魔物に類する者達を構成する核であり第二の心臓とも言える物です。


※見た目が魔物っぽい動物でも魔石が存在しない動物は魔物ではないので、逆に体内に魔石が有ればなんでも魔物扱いとなります。


 各種魔石は錬金術で造られた魔道生命体(ゴーレム)や古代の魔法文明の遺産である各種の魔道具のエネルギー源や核となります。


 ランクを問わず魔物のカードなどは個人のブックに加えれば高い効力を発揮し、所有者に新たなる力や恩恵を与え、位階の上昇、各種能力やプラナの上昇、新たに天職が追加される事で魔法などの有用な技能などが獲得出来る為、かなりの需要が有り、魔石からマナとプラナを使用した後の魔石は粉末にして錬金術の素材となり、美しい物は研磨して宝飾品となるので基本的に倒したモンスターから魔石を抜かないのは常識的には有り得ない事でした。


 石級下位のゴブリンの魔石は一つで銅貨三枚前後で売買され、酒場で冷たいエールが三十杯は飲める程度には価値があり、さらに上位個体のゴブリンアーチャーのカードや魔石は一つが銀貨数枚前後の価値であり、10日ほど町での豪遊が可能な程度には価値があるので、ベテラン冒険者の日銭稼ぎにも丁度良い感じです。


 今回は安月給(衛兵の給金は月額で銀貨二枚から五枚位)のエレノの町の兵士の臨時ボーナスとしてゴブリンからのカードや魔石の剥ぎ取りは推奨され、そこそこの収入にもなるので士気の上昇に繋がり、その後の戦いでのモチベーションを上げる為、戦意高揚に大いに役に立ち、ゴブリンの装備で有るゴブリンソードなども素材としてはそこそこ役に立ち、拾い集めれば銀貨数枚と、ちょっとした小遣い稼ぎにはちょうど良いのです。


 そして、剥ぎ取りが終わったゴブリン達の死体は切り刻まれてエレノの東門の外壁に吊るされましたが、古来より敵の死体を吊るして恐怖を与える方法は、ある程度の知能が有る敵には有効でしたが、エルダーゴブリンジェネラル級のモンスター相手に効果があるのかは怪しいですし、逆に怒らせる場合もありました。


果たして、エルダーゴブリンジェネラル攻防戦の2日目はどうなるのでしょうか?







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