第7話・ゴブリンの罠に嵌まる犠牲者達

ガサガサ……カツ……


「う、ううぅ……頭が……」


「オルソンや、起きたのかい?」


「母さん!無事だったか、みんなはどうなったんだい?」


「オルソンや、少し静かにしてね。荷車に乗っていたガルフやアニス達はアリシアちゃんの傷薬でなんとか生きてるわ。だけど今私達はゴブリンに捕まっている状態なの。どうしましょうね?」


「ゴブリンか……何匹位居そうか分かるかい?」


「それがね……凄く強そうなゴブリンが率いる大きな群れかもしれないのよ。ゴブリンに立ち向かった瀕死の自警団の一人が連れていかれて生きたまま焼かれて強そうなゴブリンに食べられたわ。私達もああなるのかしら?」


「そうか、俺が寝てる間に自警団の人が……」


 オルソンは周りを見回すとどうやら広い洞窟であるらしいです。


 周りを血の匂いが漂っている事を考えると状況は極めて不味いようでした。


「おい!オルソン起きたのか!」


「お、おう、パスカルは大丈夫か?静かにしないで良いのか?」


「ああ、すまん。俺は問題無いが……既に何名かの村人は犠牲となっているぞ。主に自警団達だな」


「そうか、ここから抜け出す事は出来ないのか?ここは何処なんだ?」


「うーん、俺もこの洞窟内の脇道を調べてみたんだが……ことのほか守りが固いんだよ。このままだと全員食い殺されてしまうかもしれんが……まあ、アリシアがなんとかしてエレノの町に辿り着いてくれるのを祈るばかりだな」


「アリシアちゃんか……まさか魔法使い様だったとはな」


「まあ、アリシアが魔法使い様でも違和感は無いよな。そのくらいは普通に思える位には昔から利発な子だしさ」


「そうね。アリシアちゃんは魔物の棲む森で狩りが出来る腕前のハンターで薬を作れる調薬師でしょ?後は怪我の応急処置が出来てポーションで怪我も治せる医師と錬金術師なのかしら?」


「うーん……剣の腕は分からないけど剣士位には簡単になれそうなんだよなアリシアは……」


「オルソン、アリシアの話は後にして状況の把握をしたい。エルさんは村人の状態を確認して貰えますか?」


「良いわよ。二人はどうするの?」


「オルソンと俺は逃げれる道が無いか探してみます。良いよなオルソン?」


「あ、ああ、ちょっと頭が痛むけど問題無いよ」


「そうか、じゃあ別れよう」


 エルとオルソン、パスカルの3人は名もない村で別れたアリシアの話をしつつ状況の確認や逃げ道が無いか周りを探索し始めます。


 エルが確認した限りでは荷車にはそこそこ食べれる品が有り、斧使いのドラから奪ったオルソンの斧やパスカルの予備の弓矢に、赤狼団から奪った自警団の装備などが転がっていました。


 瀕死の自警団が6人居る以外、ガルフやアニスなどは重傷ですが容体は安定しており問題はありません。


 どうやら、この広い洞窟はゴブリンの住み拠の最奥に有るようで横道は有るものの全て行き止まりでした。


「とりあえず戦える武器は有るな」


「だが、俺達と一緒に運び込まれた荷車の幾つかは車輪が壊れていて使えないぞ?」


「脇道はどうだったのパスカル?」


「エルさん、脇道は行き止まりばかりですね。荷車を壁にして立て籠るなら飲めそうな水が染み出てる泉がある荷車が入れそうな少し大きな脇道は有りましたが……」


「どうしたの?」


「最低限の荷物も入れて、せいぜい入れて休めれるのは30人ほどです。現在の村人の数が35人……瀕死の人は最後までゴブリンに抵抗した自警団の6人でガルフ爺やアニスさんとかも重傷で、なんとか戦える者は8人ほどですから……」


「パスカル、まさか瀕死の自警団の人達は見捨てろって言うんじゃないだろうな?」


「オルソン、そこは分かってくれ……俺も誰も見捨てたくは無いが自警団の連中は意識も無いし何時死んでもおかしくないんだ。既に手遅れだよ。アリシアの渡してくれた薬も残り少ないし助かる命だけでも助からないと……それに食料も荷車に乗ってるだけなんだし仕方ないだろ?立て籠るなら食料も無駄に出来ないしさ」


「だけどパスカル!村の仲間だぞ?」


「オルソンや、私達も生き延びれるかどうかも分からないわよ?パスカルの意見もちゃんと考えてみてね。とりあえず脇道に食料の荷車と重傷のガルフ達を先に移動させましょ。話はそこからよ?」


「分かったよ母さん。パスカルすまん、何も分からないから声を荒げちまった」


「良いよ。俺も状況が分からなかったらオルソンと同じように言うさ、ここに連れてこられる時も酷かったしな……」


「そうか……本当にすまん」


 ゴブリン達に囲まれ罠に嵌められた際、荷車を押していた自警団の6人は村人を守る形で戦ったが、そもそもゴブリンは鉄級(一般的兵士の強さ)下位の魔物で有り位階も高く村人が勝てる筈もない。


 早々にオルソン達が無力化されてしまったのも不味い具合に働き自警団の6人は最後までゴブリンに抗い重傷を負う羽目となりました。


 早々に無力化されたオルソン達がほぼほぼ無傷で生き延びて村人達と共にゴブリンの巣穴で有る洞窟に運び込まれた際には既に血を流し過ぎており瀕死となります。


 しかも、ゴブリンの武器には拙いまでも弱い毒が塗って有り治療のしようがなかったのでした。


 オルソン達、名もない村の避難者達の受難は続きます。





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