第4話 僻み

そんなある日、麗子は最近の優香には珍しく、何か悩んでいる様子を感じた。


「なんか優香ちゃん、元気なくない?」


麗子は少し心配になって尋ねた。


「いや、大したことじゃないんです。ちょっとルームメイト…」


優香は話だそうとしたが、麗子のことを思ってか話を続けようとしなかった。


随分と優香は大人になったものだなぁ。


麗子はそう思い、そんな変わった優香だからこそ、素直に「どうしたの?」ということが出来た。


「実は、ルームメイトが私に僻んでいるようで…」


優香のルームメイトの愛菜は事あることに自分の方が優香よりも優れているということを示そうとしてくるのだ。


昨日は彼氏のスペックを比較し、自分の彼氏の自慢話ばかりしてきた。


「なんか愛菜が可哀想で。辛そうだなって思って、ルームシェアが心苦しんです。でも、その原因はきっと私で…私の存在が愛菜の心を暗くしてるんです」


麗子は驚いた。


愛菜に怒るのではなく、同情している優香に。


「そうなんだ。それは心苦しいよね。愛菜ちゃんのことを思ったら一緒にいない方が良いかもね」


「やっぱり、麗子先輩もそう思いますよね。今晩、愛菜ちゃんと話し合ってみます」


翌日、優香が会社に来ると、さっそくルームメイトとの話になった。


「麗子先輩、愛菜ちゃんと話し合った結果、ルームシェアをやめることになりました」


「そんなんだ。良かったね。でも、よく愛菜ちゃんは納得したよね」


そう言うと、優香の顔が少し暗くなった。いや、困ってるようにも見えた。


「実は、愛菜ちゃんかなり怒ってしまって、収集がつかなくなったんです。そんで愛菜ちゃんが彼氏を呼び出し、愛菜ちゃんの彼氏も含めて話し合いになったんですけど、彼が『普通に考えて悪いのは愛菜だな』って言い出したんです」


「えー!愛菜ちゃんの彼氏は愛菜ちゃんの味方にならなかったの?」


「はい、そして、彼がさっさとルームシェアやめるように言ってくれて…」


「それで無事に辞めれたの?えっ、ラッキーじゃん」


「はい、そうなんです。ただ愛菜ちゃんの彼氏が帰った後に、また愛菜ちゃんがキレだして、私のスマホを壁に投げつけて壊してしまったんです」


「愛菜ちゃん、やばいよ。でも、早くスマホ直さないと」


「今日仕事終わったらショップで直そうと思います」


麗子は、愛菜のあまりにも感情的な行動に引いてしまったが、彼氏がまだまともな人で良かったなぁと思った。


「うん、そうだね。早く直してもらった方がいいよ。不便だもんね」


麗子は優香があまりにも冷静な人間に変わったことに喜びを感じた。

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