翁の報告
藤右衛門たちがボーっと空を見上げていると、あぜ道から一人の
「お主たち…、ちょっと良いか?」
唐突に話しかけられて、村人たちは驚いて首をひねった。
「何だ!…ああ、
村人たちは驚いたが、長年の知り顔に気を休める。
その翁は同じ百姓の身分であって、
今では
「釣り竿も持たずに何の用だい?」
藤右衛門は遠慮もなく言った。
「ふむ、ちょっとの…」
「なんだい。あらたまってさ」
村の女が笑いながら言うが、庄屋は剣幕な顔で話し出した。
「主らも諸国の大名が合戦に奔走しているのは存じているじゃろうが、この領地もそろそろ怪しいようでな。城下では諸国の軍勢が攻め寄せるのではとの噂も耳にするようになったのじゃ」
「そんなこと町屋の者が何で知っとるのだ?」
「どこの国に睨まれている?」
村人たちは我も我もと問いかける。
「それは…のう。城下の町屋には諸国を訪ね歩く
庄屋は真剣そうな声色で皆に語りかける。
「じゃあ、城では戦の準備をしとるんか?」
「まだじゃが…。皆の者も用心に越したことはない」
「用心と言っても…」
どうしたら良いのか分からないので、村人たちは困惑している。
そこで黙っていた藤右衛門は言い返した。
「ちょっと待て。わしらは領主の首が入れ替わっても、これまでと同じように年貢米を取られるだけではないか?」
すると他の村人からも「そうだ!そうだ!」と、同意する声が聞こえる。
どうせ誰が支配しても高い年貢で苦労させられるのは変わらない。今より高くするのは難しいと思われるので、三城が憎い者はむしろ敗北してほしいと願うだろう。
庄屋は百姓の感情には敏感な人であるが、表情をこわばらせている。
「お主ら百姓は田んぼのことしか承知しないじゃろうよ。だが、
「だから、領地を支配する首が入れ替わるだけでは?」
村人たちは庄屋が何を言いたのか、皆目わからなかった。
「ううむ…、
庄屋の言葉から村人たちも何やら不吉な臭いを感じ取った。
「ほう…。ではどうするのだろうか?」
藤右衛門が問えば、庄屋はまじめな顔で話し出した。
「お主らが心配しなければならないのは
これを聞いた村人の半数近くは驚いて、もう半数はまだ半信半疑だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます