第8話 奇跡



___いきなり少年と青年が空から降ってきたと分かった時には、人生で初めて腰が引けそうになったものだ。


とあるテレビ会社の記者、朝倉あさくらは目を仰天にしながら、目の前の光景を眺めていた。その光景とは、少年が体から赤い光を発しながら、完全に破壊され尽くした家屋を、まるで時間を戻すかのように修復している、というものだ。

率直に言って、顎が外れそうだ。それでもなお、記者として渡された撮影カメラを素早く起動し、その様子をカメラに収めることができたのは、1ジャーナリストとしての自分の運の強さを認めざるを得ない。


それにおそらく自分は今、奇跡の瞬間に立ち会っていると感じた。「奇跡」と銘打たれた場面には、何度か出くわしたことがある。熊と鹿に友情が芽生えたとか、末期癌患者が回復したとか、離れ離れの家族が再開したとか、そんなものだ。

だが、今目の前で起きていることは、そんな次元の出来事ではない。前代未聞という言葉はこの瞬間のために作られた言葉ではないかと思うほどに、それはあり得ざる景色であった。

これだ、と思った。これこそが、自分が追い求めていたものなのだと理解した。頭より先に、体がそれに反応したのか、カメラを握る手は小刻みに震えている。

だが、それは恐怖の震えではない。この震えはきっと___本物の奇跡を目の当たりにしたことに対する、喜びの震えだろう。


カメラの撮影なんかよりもずっと強く強く、この景色を己の記憶に焼き付けておこう。朝倉は一生忘れることのできないであろう出来事を目の前にして、心から湧き上がる衝動を抑えられずにいた。





___________





事件からおよそ1週間後。倒壊した建物で荒れ果てた「船橋爆発事件」の発生地点に、空から舞い降りた二人の男。一人は中学生〜高校生のような幼さを顔に残した少年であり、もう一人はやや背の高い細身の男であった。

既に数を減らしていた被害地域の報道陣だったが、二人が音と光と共に現れたのを見て、すぐさまカメラの用意を始めた。

二人はまず、被害地域の中心点に向かった。すぐ近くには、この事件が理由で亡くなったとされる8人をしのんだ献花がなされている。そのすぐ目の前に立つと、二人は手を合わせて目を瞑り、合掌した。


いち早くその様子を撮影した記者は、それが「死者を弔っている」ように見えた。


続いて、二人はその後ろにあった瓦礫の山に目を向けて5秒ほど眺めた後、またすぐ近くの瓦礫の山に向かって歩き出した。歩き出す中、少年から赤い光がほとばしった様子を、記者たちは見逃さなかった。その様子を確かにカメラで捉えつつ姿を追っていくと、少年が瓦礫に向かって手をかざし、赤い光が瓦礫に向かって動いていくのが見えた。記者たちの多くは我が目を疑ったが、カメラの映像にもその光が映っており、それが現実の光景であることを確かめさせられた。

瓦礫の山が赤い光を纏うと、瓦礫の山が突然宙に浮き、不規則な動きをし始めた。最初は単に散らばっているだけであったが、段々と動きが進展するうち、瓦礫が綺麗な形にまとまり、一つ一つが合わさって一つの構造物となっていった。やがてそれが綺麗な家の形となると、少年は再び歩き出し、また別の瓦礫に手を翳した。


カメラを向けた記者たちは、それが「建物を修復している」のだと気づいた。


やがて1時間ほどが経過し、撮影者も相当な数になった頃。少年は被害地域の最後の瓦礫の山を家屋の形に修復していた。報道陣は相当数が詰めかけていたが、話し声は一切聞こえてこない。誰もが、この瞬間をカメラに収めようと無我夢中になっていた。最初の方から撮影していた記者はカメラのバッテリーを気にしながら、後からきた記者は前にいる他の記者のカメラを恨めしく思いながら、ただ静かに、その様子を見守っていた。


やがて少年が最後の家を修復し終えると、もう一人の青年がスマホをいじり、何か操作をしていた。それが終わると、青年は無数のカメラの前に少年の手を引いて現れた。青年は少年に対してアイコンタクトを送り、少年はそれに対して頷きを返す。そして、初めてカメラに顔を向けた。

パシャパシャという音が鳴り響き、彼の顔に無数のシャッターが浴びせられる。常人では経験し得ない出来事を前に、幼さの残る少年は確かな怯えを抱きながら___それでも、はっきりと聞こえる声で、こういった。



「初めまして。僕は斉藤正真______超能力者です」


「今回のこの事件の犯人は______僕です」


「だから______せめてもの償いをさせていただきます」



言い終えた少年は微かな緊張を抱きながら、そして青年は微笑みながら、無数に浴びせられるシャッターの前でしばらく立っていた。





___________





この日、平日の昼間であるにも関わらず、テレビでは他のありとあらゆる番組を中止して、生中継が行われた。どの放送局でも視聴率は驚くべき数字を叩き出している。

動画投稿サイトの中継では同時視聴者数が80万人にも達し、一部ではサーバーダウンが発生した。

生中継が終了した後も、その熱は止まるところを知らなかった。掲載された動画は掲載されて1時間で再生回数100万回を突破した。あらゆるSNSのトレンドで「超能力者」「斉藤正真」が1位、2位を締め、圧倒的な速度で人々の注目を集めていった。

この報道は瞬時に海外にも飛んでいき、翻訳され字幕をつけられた動画が大量に拡散されることとなった。


誰もが驚いた。誰もが興味を抱いた。誰もが好奇心を抱いた。

そして彼の___斉藤正真の行動は、それまであちこちで渦巻いていたありとあらゆる疑念を吹き飛ばした。彼の言葉が全てを教えてくれたのだ。


この日を経て、”超能力者”斉藤正真への世間の印象は一変することとなる。





___________





翌日。


ありとあらゆる情報が「超能力者」という言葉で埋め尽くされる中、とあるSNSにて「斉藤正真」を名乗る人物の投稿が確認された。


『昨日はお騒がせしました、斉藤正真です。僕は今、神奈川県の湾岸地域にいます。もし何かお困りのことがあれば教えてください。必ず助けに向かいます』


その投稿は瞬く間に拡散され、一瞬にしてまたネット空間にブームを引き起こした。昨日よりもさらに大きな歓喜が、声が届かぬ世界で響き渡る。

そしてその日の夕方ごろ。とある一般人がSNSにて中継を始めた。対してフォロワーが多い人間ではなかったが、この中継には何十万もの人間が参加した。

中継の内容は、神奈川県南部の海岸にて、”超能力者"斉藤正真が、海難事故にあったサーファーを超能力を用いて救出する、というものであった。サーファーは窒息状態にあり危険な状態であったが、赤い光がサーファーを包んだかと思うと、勢いよく水を噴きかえしながら意識を取り戻した。


その中継の様子はテレビでも取り上げられ、多くの人々をテレビの前に釘付けにした。老若男女、誰もがその報道を見たがっていた。





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そのまた翌日。


『今日は富士山の近くにいます。お困りのことがあれば、すぐに呼んでください』


朝の8時に投稿されたその投稿。昼の12時近くには既に50万を超えるハートマークが付いていた。

『斉藤正真』というアカウントのフォロワー数は既に200万を突破し、今なお急速に増えつつある。


その日は休日でもあったことから、富士山付近には多くの観光客が詰めかけていた。その多くは一時的な遊楽を目的としたものだが、一部には何かを探してこの場所を訪れる人間もいた。

そして夕方。数多くの目撃者の中で、崖に落ちそうになっている登山家を、赤い光が抱えて救出する出来事があった。


夕方ごろに公開されたとある動画には、崖に落ちそうになっている人を助け、登山家のグループから涙を流されながら感謝される超能力者の姿が映っていた。顔もくっきりと映り、目の前で感激する登山家を前に若干困惑しているのが見てとれた。


この様子は多方面から動画が撮影され、ネット上には大量の動画が散らばることになる。ここにおいて、もはや誰も「超能力者」という存在を疑わなくなっていた。その存在は、ただただ衝撃のとして、ひたすらに世に広がっていくこととなる。





___________





『斉藤正真』がSNS上での投稿を開始してから1週間後。



"超能力者"という言葉は、世界的なブームと化していた。


He is genuine彼は本物だ !』『믿을 수없는信じられない!』『¿Estoy soñando?夢を見てるんじゃないのか?

Did is een revoluこれは革命 tionaire gebeurtenis的な出来事だ !!!』『这是个大问题これは大変だ !』『أليست هذه كذبة؟嘘じゃないのか ?』『Ini cerita gila狂った話だ』『Exist em muitas evidências証拠はたくさんあるぞ !』『je deviens fou頭がおかしくなりそうだ』『कुछ गड़बड़ है何かの間違いだ』『Что происходит в Японии日本で何が起こってるんだ ?』『È un grosso incidente大事件だ !』


ありとあらゆる人が驚いた。あらゆる人が疑いを向けた。あらゆる人が興味を抱いた。そして、あらゆる人が、それを知った。

わずか1週間にして、全世界のメディアにて"超能力者”斉藤正真は一躍有名の大スターとして躍り出ることとなった。いつしかその呼び名は変化していき、超能力を持った日本の少年「ショーマ(Shouma)」という名で報道されるようになる。

ショーマはお茶の間の会話でも、何気ない若者の会話でも、住民同士の井戸端会議でも、全世界の全ての人の会話に彼は現れることとなった。


会話の方向性は多種多様だ。歓喜する者、賞賛する者もいれば、疑い、注意深く注視するものもある。

そして___確かな憤怒と嫌悪を露わにする者もいた。





___________





『”超能力者"ショーマは殺人鬼です。私は彼に、自分の父を殺されました』


このような投稿がSNSになされた。

人々が正真の善行に歓喜をあげる中での、この投稿。その投稿者が船橋爆発事件の被害者であることが明るみになると、一気にこの投稿は拡散されていった。

同情の声が多数届き、手のひらを返して正真を非難する声が次々に上がった。


『彼は人を殺すのか?』『不安だ』『彼は人殺しをしておいて、なんでこんなことができるんだ』『ひどいですね』『可哀想……』『なぜそんなひどいことをするんだ?』『早く捕まればいいのに!』


ものすごいスピードでこの情報は拡散される。多くの人の憶測が飛び交い、情報の錯綜が発生した。これに準じる形でその他の被害者も声明を出し、ショーマを批判する動きが一気に加速した。


だが___これに呼応するかのように、『斉藤正真』はこんな投稿を行った。



『私がたくさんの人の命を奪ったことは事実です。ですからどうか、被害者の方に直接謝罪をする場を設けていただきたく思います。明日の昼12時ごろ、私は被害者が集まる避難所に向かいます。私に会うことを望む方は、避難所に来ていただけますと幸いです』





___________





翌日、昼ごろ。


おびただしい人が集まり、多数の警官などが警戒にあたる避難所付近。その近くでは「ショーマ反対運動」のデモが発生し、そのまた近くでは「ショーマ擁護運動」のデモが発生していた。一人の少年の扱いをめぐり世論が2分する様が、上空から景色にて克明に描かれていた。


やがて時間となり、空から赤い光が飛んでくる。徐々に速度を落とし、避難所の入り口付近、メディアが集まる中心地点にやってきた少年と青年の二人組は、無数のシャッターを浴びながら、堂々とそこに佇んでいた。青年は少年の肩を叩くと、ギリギリ聞こえる声で少年を鼓舞する。


「……落ち着いて。大丈夫さ」

「……はい」


外では大きな歓声と怒号が入り混じった声が木霊している。少年、正真はそれらの声を遠くに聞きながら、ドアを開けて前に入ってきた被害者たちと顔を合わせた。


まず最初に、とある女性が走ってきて、正真の頬を叩いた。

パンッという音がなり、ざわざわとしていた空気が一転、緊張を孕んだ静寂に包まれる。

正真は叩かれた衝撃で後ろへとよろけ、それを青年___シンジが支えた。


「この、人殺し!私の家族を返せ!」


女性はこう叫ぶと、掴み掛かろうとさらに歩を進める。周囲の人があっけらかんとしてる中、シンジは手を女性の前にかざした。


「誰よあんた。どきなさい!」

「僕は彼のだ。法律上の、ってわけじゃないけど」

「保護者ですって……?じゃあ、代わりにあなたが責任を負ってくれるの?」


女性はボロボロと涙を流しながら、今にも暴れ出しそうな表情で、精一杯シンジを睨みつける。


「あなたが、私の家族を返してくれるというの……?」

「…………」

「ふざけないでよ……そんなこと、できない癖に……!」

「はい、できません。……それは、彼も同じです」

「何言ってるのよ。超能力者なんでしょ。家だって直してたじゃない。どうして、どうしてのよ……!」


女性は事件で、夫を失っていた。二人で仲睦まじく暮らしていたろところに、突如あの忌まわしき赤い光が襲ったのだ。女性も骨を折る大怪我を負う中、彼女の夫は必死に彼女を助け出そうとしてくれた。しかし、皮肉にも夫の上に瓦礫が落下。彼女はギリギリのところで助けられたが、夫は救助された時、既に息絶えていた。


「返してよ。……夫を返してよ。人助けをしたからって、私の夫が返ってくるわけじゃないのよ……?」

「…………」

「ねぇ、どうするのよ。どうやったら返してくれるの?時間は巻き戻せないの?」

「……できません。僕は、そこまで万能じゃないので」

「殺す力は持ってるくせに、生き返らせられないの……?何よそれ……そんなの無責任よ……!」


シンジが守るまでもなく、正真は自ら一歩前に出た。

いつもの自分なら、逃げ出してしまいそうな局面だろう。しかし、女性の涙が自分のせいだと改めて思い知り、絶対にここから逃げてはいけないと理解していた。隣で励ましてくれるシンジの思いを、踏み躙りたくなかった。そして、これ以上自分の心に嘘をつくのが、嫌だった。

だから、向き合った。


「……はい、そうです」

「はいそうですじゃないわよ、ふざけないで!よ。あなたのせいで、私たちはこんなに苦しい思いをしているのよ?!なんであなたは、そんなに平然としているの?!どうしてそんな、落ち着いていられるの?!」


女性の後ろからやってきた他の被害者も、皆涙を流しながら、そして怒りを顔に滲ませながら、この様子を眺めていた。彼らは誰一人とて傍観者ではない。全員が当事者であり、全員がこの場で裁定を下す権利を持っていた。


「答えなさい!!!あなたはどうして、!!!」


一斉に、全ての人の視線が正真に集まった。それは、その場に集った人だけの話ではない。テレビを通して中継される様子を視聴している、幾千万の人々。ネット中継を通してスマホやPCでその様子を眺める、数多の人々。海を隔てた先でこの中継を眺める無数の人々。

全世界の人間の視線が、正真一人に集約された。


正真は、すぐには答えなかった。口を閉ざしたまま、まず一歩下がった。

そして、膝を地面につけた。


「……ちょっと、何よそれ」


女性は困惑していた。怒りはまだ全く収まっていない。だが、それ以上に目の前の恐るべき少年の行動が、理解できなかった。

正真はそのまま正座の姿勢になった。隣にいたシンジは視線が正真に集まるよう、あえて一歩下がり、その様子を見守った。


「……今の僕に、返せるものはありません」


口調は、とてもゆっくりとしていた。


「……言い訳もないですし……弁明できることも、ありません」


声は小さかったが、周囲の静寂も相まって、その声は周囲の全ての人が聞き取ることができた。


「今の僕にできることは……これで精一杯なんです」


そして正真は深々と頭を下げ___地面に手をつき、土下座をした。


再び無数に浴びせられる、カメラのシャッター音。その音はまるで雨打つ音のようで、曇った天気の影響もあり、その場はなんとも言えぬ厳かな空気に包まれた。

その光景は、世界中の人々のまぶたに強く焼き付けられることとなる。


正真の頭が下げられた先にいた女性は、困惑の表情をしながらヘナヘナと後ろに下がっていった。他の被害者が彼女の肩を支える。


「何よそれ…………!」


女性は再び自身に喝を入れ、強い口調でそう言い放つ。土下座を続ける正真に対して、ひたすらに言葉を浴びせた。


「土下座くらいじゃ、どうにもならないわよ……。教えなさいよ。一体どうやって、どうやって償うつもりなの……?」


女性の声は怒りに満ちているが、落ち着きを取り戻しつつあった。そしてそこには___微かな期待も、混じっていた。

正真は顔を上げ、正座した姿勢のまま、真っ直ぐに女性の目を見据えた。その目にはいっぺんの曇りもなかった。


「……僕は、これからもっと力をつけていこうと思います」


その決断がどのような心境でなされたものなのかを知るものは、おそらくいない。

例え長く同じ時を共にしてきたとしても、その心境を正確に察することはできないだろう。

どんな人間であっても、決して想像することのできない境地に、正真は確かに立っていた。



「もっと強くなって___いつか必ず、皆さんの家族を返してみせます」





___________





その後。


避難所のドアは閉まり、許可なしに被害者にインタビューをすることは禁じられ、この出来事は終幕を迎えた。

超能力者ショーマの姿も消え、映すべきものがなくなると、報道陣は速やかに撤収していった。周囲にできていた人の群れも、出来事の終幕を見届けると、徐々に移動していった。


避難所の周辺は多数の警察官が行き来し、厳重な警戒体制を敷いていた。


正真とシンジは、周囲の状況が落ち着いた時を見計らい、建物の陰から姿を現した。

駆けつけたたくさんの警察官の視線が降り注ぐ中、二人の前にスーツを来た刑事たちが現れる。

その中の一人、明石は静かに歩み寄ると、正真と顔を合わせた。自分が追い続けた少年が、目の前にいる。明石は正真の真っ直ぐな目を見て、安堵しながら話を始めた。


「……話をしてもいいかな。斉藤正真くん」

「……はい。用意はできています」


明石は、これほどまでに真っ直ぐな心を見たことがない。培われた彼の目が、斉藤正真が善人であることを告げている。


「あれだけのパフォーマンスをした上、今日こうして我々が見ている中で、君は空から飛んできた。我々は正式に、君を『超能力者』として扱おうと思う」


普通ならありえない明石の発言に異議を唱える者は、ここにはいない。誰もその事実を疑っていなかった。

明石の「我々」という言葉には、大きな意味が隠れている。国家機関、すなわち日本という国家そのものが、斉藤正真を超能力者として認定したという事実が、そこに隠されている。


「既に知っていると思うが、君が起こした出来事については、警察がしっかりと調べなければならない。これは国が定めたルールであるため、破ることは無理だ」

「はい、分かっています」

「君が被害者の方々に真摯に謝罪をしたことも、誰もが理解している。だが、それだけでは全員は納得しない。然るべき手順を経ることも必要だ」


明石はゆっくりと淡々と、そして話し相手である正真と、その横にいたシンジだけが理解できる優しさを含んだ口調で事実を告げる。


「署まで同行願いたい。できれば一緒にいた、君もだ」

「もちろん。僕も連行しちゃってください」


シンジは素直に両手を差し出す。自分の行った行為がどう扱われるか、彼は誰よりもよく知っている。明石は無言でその様子を一瞥すると、二人が乗るパトカーを案内した。



「空を飛べる人間には申し訳ないが、これは決まりでね。ちゃんとパトカーに乗ってもらうよ」




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