第4話 紡ぐ絆

 翌日、エレーナはというと。


訓練後にリオーラを探しに王宮を歩いていた。


あちこち探してみたが、リオーラらしい赤い髪の女の子をなかなか見つけられない。


途方に暮れかけた。


諦めて自分の部屋に戻った。


が、そこで衝撃的なものを目にする。


なんとリオーラがそこにいたのだ。


「……??? なんでリオーラがそこにいるの……???」


「それこっちのセリフだよ、勇者様!! もしかしたら部屋かなー、って思って行ったら居ないんだもん!!」


「……完全な入れ違いじゃん……」


「ねー……ホントだよねー……まさか私を探してたなんてねー……」


お互いため息を吐いて笑いあった。


「……てゆーかさ……リオーラ……『勇者様』って呼び方やめて……エレーナ、でいいから。」


「いや……でも……」


「年、一緒じゃん……メイドさんが言ってた。……私も12だから。」


「え!? 同い年だったの!?」


「うん。」


「そっかー……じゃあ遠慮なくエレーナ、って呼ぶ!!」


無邪気なところは相変わらずだな、とエレーナは思いながらリオーラの顔を見る。


同じ年頃の、高貴な家の出の娘、ということで、エレーナは羨ましく感じていた。


バンテルの同じくらいの女の子とは偉い違いの目。


希望しか感じられない、キラキラとした目が本当に羨ましいくらいに輝いていた。


「……あのさ、リオーラ……」


「? 何? エレーナ。」


「なんで……私に声掛けたの? 昨日。」


「え? なんでって……四日前に勇者が誕生した、見つかって王宮にいるって話だったからさー……アプローチかけとこう、って思って。勇者様のお付きの魔法使いになるのが私の目標だから。」


「そっか……今勉強中なの?」


「そうそう。炎を出す魔法が得意だからさ、今それを極めてる最中。」


屈託のない笑顔に嘘偽りは感じられなかった。


狸っぽい童顔が、余計に愛くるしさを感じさせる。


「……私でも出来るかな? 訓練だけだったら時間余るだけだから……魔法ももし使えるんだったら……」


「ああ、そこは先生に話しておくよ!! よかったら明日来て!!」


「うん……分かった……」


エレーナも軽くリオーラに笑いかけた。


と、ここでノックが。


開けるとそこには。


「え……お父様!?」


「お父さん??」


リオーラの父・ハンクスだった。


「リオーラ、探したぞ。勉強からなかなか帰ってこないからどうしたものかと思ったら……と、これはこれは勇者様……娘が失礼を……」


「いえ……私も探していたので……リオーラを。……あと敬語はやめてください。リオーラと同じ年なんで。」


「え、リオーラと……!? なんと数奇な運命でしょうかねえ……」


「だから敬語はやめてくださいって……あと、私の名前はエレーナです。」


「うーん、勇者様に敬語はナシ、かぁ……難しいけど努力はしてみるよ……ホラ、リオーラ……帰るぞ。母さんも心配してるから。」


「はーい、お父様。……それじゃあね、エレーナ!」


ハンクスとリオーラはそう言って、去っていった。


エレーナは貴族でここまで気さくな人物を見たことがなかったため、意外さを感じていた。


(……これが……「友達」ってヤツなのかな?? 今まで感じたことがなかった感じだったからな……でも……お父さんも悪い人じゃなさそうだったし……信じてもいいかも。)


エレーナとリオーラの、家族ぐるみの付き合いはここから始まっていくのであった。


そしてエレーナも、徐々に周囲に心を開いていくようにもなる始まりでもあった。r

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