第6話
声がした。可愛らしい声だった。
その声のした方を見ると、剣を持ったこれまた可愛らしい子がいた。その顔立ちから一瞬女の子と見間違えるが、恐らく男の子……いや女の子? やべぇ自信ないわ。
「あ、あっきゅん! あっきゅんじゃないか!」
おっさんが驚いたように声を上げる。ってコイツが例のあっきゅんかよ!?
「あ、おじさん! 僕もやっとここまで来れるようになりましたよ!」
そういってあっきゅんがおっさんに笑顔で手を振る。うん、さっきの『性別:あっきゅん』の意味が解った気がする。だが男だ。
「し、しかし君のランクはEではないか! どうやって一人でここまで!?」
え、この子最低ランクやんけ。
「ここまでモンスターは一匹もいませんでした!」
「あ、そういや我々が倒した後でしたっけ」
「え、お前らここにいた奴ら全滅させてきたの?」
何気に凄いなこのおっさん。
「だ、だがあっきゅん! 随分とボロボロじゃないか! 怪我は無いか!?」
おっさんの言葉通り、あっきゅんの見た目は埃やら擦り傷だらけだった。戦闘は無かった、と言っていたがどういうことだ?
「え、えーっと……何回も転んじゃって……」
あっきゅんがはにかんだ様に答える。ドジっ子かよ。
「可愛らしい子でしょう?」
「冒険者辞めた方がいいんじゃね?」
おっさんが微笑ましい顔して言うが、冒険者向いてないだろこれ。
「そ、それよりもおじさん達の方がボロボロじゃないですか! そのモンスターにやられたんですか!?」
あっきゅんはそう言うと、俺の方を見て剣を構える。
「……おじさんは逃げてください! 僕が……僕が時間を稼ぎます!」
「ま、待て! あっきゅん駄目だ! 君では危険だ!」
「僕だって……僕だって冒険者なんです! おじさんを見捨てるなんてできません!」
「あ、あっきゅん……!」
おっさんから何か『トゥンク……』って聞こえたんだけど。え? 何この寸劇?
「おじさんには色々と助けてもらいました……剣の事、冒険者としての心がけ、お風呂に入った時の身体の洗い方とか……色んなことを手取り足取り教えてもらって、感謝してるんです!」
「おい妻帯者」
おっさんは思い切り目を逸らして口笛を吹いている素振りを見せるが、吹けてないぞ口笛。てか何やってんのお前?
「だから……今度は僕が恩返しする番なんです! 行くぞモンスター!」
そう言うとあっきゅんは俺に突っ込んでくる。
「駄目だ! 駄目なんだあっきゅん逃げるんだぁッ!」
おっさんが手を伸ばして止めようと叫ぶ。
「ふわぁぁぁぁぁぁん! らめぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
数秒後。触手で弄ばれ嬌声を上げるあっきゅんが出来上がった。
「まぁこうなるよなー」
流石Eランク。全く俺の敵ではなかった。
「だから言ったのにぃぃぃぃぃぃ!」
おっさんが膝を着いて慟哭する。
「あっあぁっ! そ、そこらめ! そんな大きいの入らないよぉ!」
あっきゅんから悲鳴のような声が上がる。まるで女の子のようだ。だが男だ。股間を弄ってわかった。
「やだぁ! 入れないでぇ! あっああぁぁぁぁぁぁ!」
「あ、あっきゅん! やめてくれ! あっきゅんをこれ以上汚さないでくれぇ!」
おっさんがあっきゅんの悲鳴を聞いて涙を流しながら叫ぶ。
「う、動かさないでぇ! そんな大きいの壊れちゃうよぉ!」
「な、なんてことだ……も、もう見てられない……ッ!」
そうは言うがおっさんよ。お前ガン見してるぞ? 後なんで前のめりなんだ?
「や、やぁぁぁぁぁ! そんなとこ弄らないでぇ! た、助けておじさぁん! ぼ、僕なんか変だよぉ! 変になっちゃうよぉ!」
「す、すまない許してくれあっきゅん……こんな無力な私を……!」
いや助ける素振りくらい見せろよ。さっきから股間押さえてるだけやんけお前。
「だ、だめぇ……止めてぇ……な、何か出ちゃう……漏らしちゃう……ふわぁぁぁぁん!」
あっきゅんの身体がビクンと大きく震え硬直するが、すぐに弛緩し大きく肩で息をする。
「あっ……ふぅ……」
おっさんの方はどうやら賢者へと転職したようだった。色んな体液まみれで凄く汚い顔だった。
「はぁ……はぁ……ぼ、ぼく……よごれちゃった……」
一方あっきゅんは息も絶え絶えの様子で、恍惚とした表情で呟いていた。
その表情を見て、俺は俺の中にある考えが浮かんだ。
――男でもいいか、と。
「というわけでおっさん。ちょっとこの子貰うわ」
「――はっ!? と、というわけとはどういうことですか!? あっきゅんに何をするつもりなんですか!? エロい事するつもりなんでしょう!?」
「はい、その通りです」
「そこは否定してくださいよ! あっきゅんは我々のアイドルなんです! お願いします何でもしますから! 私が代わってもいいですから!」
「いやおっさんはいらん。というわけでお引き取りを。この後お楽しみなんで」
そう言っておっさんを触手で引っ叩いて無理矢理魔法陣に押し込んだ。最後まで「せ、せめてプレイを見させてぇ!」とか叫んでたけど、どうしようもないな人間。
おっさん達は光と共に転移され、残ったのは虚ろな目をしたあっきゅん。まだ恍惚とした表情で荒い息をしている。
――うん、普通にイケるわ。滾るわ。
「というわけで、いただきまぁす」
「ふぇ……?」
何をされるか解っていない様子だったが、その直後身体を弄ばれたあっきゅんの嬌声がダンジョン内に響き渡る事になる。
――そのすぐ後、パーティ内に存在したというあっきゅんファンのアマゾネス軍団がダンジョンにもの凄い勢いで乗り込み、虐殺という言葉では生ぬるい目に遭う事を俺はまだ知らない。
-完-
触手もつらいよ 高久高久 @takaku13
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