創作集

@thinktribe

言葉の箱

人は喋る。

文脈という高速道路を走りながら。


ここは人間の気持ちが運ばれてくるおおきな倉庫だ。

言葉という包装をされながら、毎晩そのドアをノックしてやってくる。


箱の中は開けてみるまで分からない。

どのような気持ちが詰まっているかは、開けてみるまで分からない。


実は、送り手も何を入れたかわからない。

そのうえ、いろいろなものがごちゃ混ぜで入っている。


感情に任せて手を動かすと、中身がぐちゃぐちゃになることもある。

理性のカッターで慎重に、ライナー紙のダンボールを切り裂いていく。


倉庫の窓に目を見やる。

夜気混じりの霧の中に、あたたかい搬入トラックの光たちが踊っている。



今宵もまた、言葉の箱たちが運ばれていく。



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