デート??
明日に月曜日を迎え、必ず一度は憂鬱になるだろう日曜日。俺は別の意味で今日を憂いでいた。なにせあの2人が帰ってきてから1度しか話していないのだ。どう接すればいいのか分からなくもなるだろう。ただ、思ったより人扱いしてくれているようで助かった。あんなに女王様気質だった零も成長したということか。本人に言えばどうされるか分かったものではないが。
今日は早く起きれなかった瑠奈に少し寂しさを感じながら、一階に下りた。
洗面台で一通りの準備を済ませ、朝食に向かう。
そこにはコーヒーを傾ける母親とバターが塗りたくられた食パンがあった。母親は一瞬俺に目配せしたものの、声をかけることはない。これがいつも通りのため乾いた喉を潤そうとお茶を一杯口に含む。
「前から思ってたんだけどさぁ。零ちゃんか楓恋ちゃんどっちと付き合うの?」
「ぶふぅっ!!!!」
何を言ってるんだこいつは!ギリギリのところで耐えたが、数滴口から零れてしまった。本当に俺の母親はたちが悪い。日曜日の朝から、俺がお茶を飲むタイミングで言うなんてもはや狙っているとしか考えられないだろう。本人は気にすることなく朝のコーヒーを堪能しているのだが。
「なんでそうなるんだよ」
ここはまた変なことを言われないように、あえて冷静を装う。約束の時間もあるし、無駄に時間を使うわけにはいかない。
「だって昔から2人とは仲良かったじゃない」
「いや、それは友達としてだろ?しかも今まで会ってなかったわけだし」
零のデート発言は気になるところだが、あの零がそんなセリフを放つわけがない。何かの気まぐれに違いないのだ。間違ってはいないし、何も恥ずかしいことでもない。少しずつ顔が赤くなっている俺が言えることじゃないが。
「まぁ、頑張りなさい」
何をだよ!そう反論しようとしたが、一言伝えると、満足したように自室へ帰っていった。
なんなんだあの親は...。本当に俺の親なのか...。あの天使のような瑠奈が、将来こうなると思うと一生お世話をしなければと危機感を感じる。どうにかあの愛らしいままで居てほしいものだ。
「はぁ。もう出発か」
家を出る準備ができたが、やはり憂鬱な気分になる。集合は市内のショッピングモール。ここから電車で約30分と、比較的近くに位置する。揺らぐ気持ちに覚悟を決め、玄関を出た。
さてどの道から行こうかと考えようとしたが、急に意識が戻された。目の前にはいつも通りの庭と、付近では滅多に見かけないリムジンが止まってあったからである。
しかもその長く美しい車の前には、今日約束していた彼女と、そのお世話役の楓恋が佇んでいたのである。
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ご読了ありがとうございます!今回の話より、日常パートに戻ることができました。引き続きよろしくお願いします!
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