メイドの過去---③
「...............」
黒い格子が並ぶ玄関で、零とメイドと私が彼を迎えた。格子の隙間から見える庭は、草木が程よく生えており、バックにはそれが霞むくらいの屋敷がそびえたっている。
「いらっしゃいませ、陣様」
メイド喫茶に行っても着ていないような、古典的なロングスカートのメイド服を纏うベテランメイドが、洗練された動きで軽く礼をする。
「お...おじゃまします...」
だんだんと門に近づくにつれて、口をぽかんとしていく陣を見て、零はご満悦みたい。にまにまとした口を彼にバレないように両手で覆い隠している。以前は失われていた、少女のあどけた笑顔が浮かんでいた。
「待ちくたびれたんだから!早く行くわよ!」
そう言って、無理矢理陣の右手を引っ張っていく零を見て、私は無意識に微笑む。
彼は、規模が大きすぎて理解が追い付いていないようだったが、零様の雰囲気に引っ張られて調子を取り戻している。そして、彼は零に引っ張られて、屋敷の中に消えていった。さっきまでいた執事ももういない。
改めてだが、零にも心を許せる友達ができたんだ、と感慨深い反面、彼と仲良くなったなら私と遊ぶこともなくなるんじゃないかと不安になった。ぬるい風が吹く曇り空の下で、雨を避けるように俯く。
私も一緒に遊びたい。
そう思う。でも...でも私は社交的じゃないし、一緒に遊ぶほどの友達も零以外できたことがない。
そんなコミュ障な私が、自分から入ることはできない。
諦めるしかない。
そもそも彼は零の友達。私と遊ぶ義理などない。明るくて可愛くて、お姫様みたいな零と違って、私は平凡以下だ。
陰気だし、面白いこと言えないし、話してると緊張するし、うまく話せないし、陰気だし、緊張するし、零に迷惑だし、男の子怖いし、もうタイミング逃したし、場違いだし、
言い出したら止まらない。負の連鎖は止まらない。そんな私も嫌いだ。またさらに湧いてでた自己嫌悪を消化しようとしたその時、
「あのさ、お前は零の友達じゃないの?」
ハッと顔を声の方向に上げ、潤んだ目を見張った。
なんで......もう屋敷に入ったはずじゃ...
「お前、みたところ同級生だろ。友達なんだったらお前も一緒に遊ばね?多い方が楽しいし」
その言葉を聞いて、私は生まれて初めての感情に出会った。何かは分からないけど。ふわふわする感じ。思わず涙が零れそうになった。必死に拭いとり、答えた。
「...っ......うん!!」
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ご読了ありがとうございます!
最近、どんどん一話が短くなっている気がしますが、その分投稿頻度を増やしていきたいと思いますので今後ともよろしくお願いします!
ブックマーク、フォローって何?と思っていた人間なので、強く言えませんが、フォローよろしくお願いします!
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