第2話
目が覚めるとそこは見慣れた天井だった。
ベッドから起きあがろうとすると、額に痛みが走る。
「痛い!これなに…?」
包帯が巻かれているようで、痛くて涙目になった。
「起きたか少年、傷は痛むか?」
この声は、確か…と思い出していると
「危うく死にかけたのだ、大人しく生を噛み締めると良い。」
なにやら難しい言葉を話すのは、グルータイガーから守ってくれたお姉さんだった。
「せいをかみしめる?ごめんなさい…難しいや…あ!あの…助けてくれてありがとうございました!」
「難しかったか…噛み砕いて話さねばな…って噛みすぎか」
と小声で何やら話し、一人で笑うその人は僕の目を見つめコホンと咳払いし、声を張り言う。
「紹介が遅れたな!私の名前はスズカ、出身は訳あって話せぬが…少年、君の命の恩人だ!」
「僕の名前はアラタ…です!」
「アラタ…か、いい名前だな!」
お姉さんはとても力強く僕の手を握って上下に振った。
「これは握手というものだ、仲良くしようと手を握るのだ!」
「アクシュ!僕これ大好き!」
「そうか、私もだ!」
2人で何度も握手をしていると、
「アラタ!!?目が覚めたのか?!」
お父さんの大声が部屋に響く。
慌てて仕事着のまま部屋に飛び込んできて僕を抱きしめた。
「傷は痛むのか?身体は?!馬鹿野郎!」
となんとも言えない感情で抱きしめてくれた。
「平気だよ!お父さんごめんなさい。」
僕にはお母さんがいない。
お父さんと2人でずっと暮らしてきた。
しかしこんな取り乱す姿は初めて見た。
「ごめんなさい、お父さん…」
僕はたくさんお父さんの胸で泣いた。
傍で見ていたスズカさんも何故か泣いていた。
僕と目が合うと恥ずかしそうに両手で顔を隠した。
落ち着いた頃にスズカさんが口を開いた。
「父君よ、少し話がある。」
真剣な眼差しでお父さんを見つめる…
お父さんは何かを飲み込むように頷き。
「わかりました…。アラタ、まだ休んでいなさい。」
そう言うと2人は部屋を出て行き、僕はもう一度眠りについた。
これが僕と師匠の出会いだ
物干し竿から伝説へ @tenthuku
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