主従関係 成立っ!
ぼく、三浦 殻斗は生物学的弱者である。
よって人生進む道ほぼ向かい風だった。どれだけ努力をしても、結局は強者に捕食され続けるだけだった。
そしてぼくはいつしか進むのをやめて、その場にうずくまった。
これまで自分は頑張った。けど仕方なかった。と、ただの気休めにしかならない言葉を自分に投げかけ進むのを放棄していた。
強者に抗うのをやめ、
素直に利用されようと、
それがぼくの運命なのだと、自分を悲劇のヒロインのように考えていた。
しかしそんなぼくの前に彼女は現れた。
ほとんど初対面でこれまであった誰よりも上からで、
学校でも電車でもぼくを馬鹿にして、蔑んで、
けど誰よりも自分の手下(自称)である、ぼくの可能性を信じてくれた。
なんでまだあってほんの少しの時間しか経ってないのに、こんなにぼくのことを信じてくれるのかはまだわからない。
それでもぼくはどうしようもなく思ってしまったのだ。
この人についていこう。
ついていけばきっとぼくもまた進み出すことができる。と
「ありがとうございました。ご主人様!」
三浦 殻斗→日野 由利香
「ありがとうございました。ご主人様!」
ええぇー!何でこんなことになったのよ!
私は真顔で三浦先輩(心の中ではちゃんと呼べる)
を見つめながらどこで間違えたのかもう一度考え直す。
約30分前。
「なかなか来ないわね 何をやってるのかしら?」
「そうですね」
私は今、今回の相談相手である、三神 蝶子と一緒に先輩の到着を待っていた。
私はなぜ遅れてるのか考える。
今日行った教室の日番の欄には先輩の名前が書かれてなかったし、まだ会って間もないが、何も言わずに約束を破るような人ではないと思う。
つまり何かトラブルに巻き込まれたのではないか?
この見解に至るのは容易だった。
「私探しに行ってくる。ちょっとまってて。」
私はそういうと同時に教室の外へ出て行く。
古い旧校舎の階段を降り、外へ出る。
まず探すなら校舎だろうか?と校舎の方に向かっていると、校舎裏の方から何やら声が聞こえた。
「...ぁくとくぅ〜ん.......」
これを聞いた私は即座にそちらの方は走り出していた。
理由は2つある。
一つはその声が学園で有名な不良の進藤の声であったからだ。
これまで関わらないようにしたたけど、何度か話している奴らとすれ違ったことがあり、特徴的な口調なのですぐわかった。
そして重要なのは二つ目だ。
その進藤に呼ばれたのがなんとなくだが先輩の名前である、殻斗に聞こえたからである。
私は校舎裏に着くと今まさに先輩がお金を出さされているところだった。
それを見た瞬間、私の頭はまっしろになっていた。
なぜなら、その金を渡そうとしている先輩の顔が、過去に出会った、何もかもを諦めているあの人の顔に似ていたから。
私は昔あった彼のことが好きだったけれど、嫌いでもあった。理不尽なことを我慢するのは素直に好きだったが、何もかもを諦めているような態度だけは小さい頃から嫌いだと思っていた。
そんな時に出会ったのだ。理不尽に耐えながらも諦めず、言いなりになるのではなく、言い返して、相手に冷静になってもらおうとする人に。
その時は感動した。初恋の人でさえ、小学生の時点でもう諦めていた体質を持ちながら、高校生になってもなお抗い続けている。
はっきり言っちゃうと、私は先輩に一目惚れしていたのだ。
しかし、たった今、目の前で、そう思っていた人が今にも全てを諦めようとしているのである。
私が一目惚れした先輩がどこかへ行ってしまおうとしているのである。
止めない理由なんてないっ!
「何わたしの奴隷に勝手にちょっかい出してくれてんのよ!」
そして今に至る。
二人の間に沈黙がながれる。
まさか本当に奴隷になるのを認めるとは......
そりゃ奴隷扱いしながらも助けたけど!予想外のことが起きすぎて頭がついていけないわよ!
助けてる時は先輩を元気付けるのに精一杯だったし。まさかの先輩はめちゃくちゃ強かったし。
何より、奴隷になるのを本人が認めちゃったし。
あぁぁ もうっ!わたしはただ、先輩と対等に仲良くしたいだけなのに!
とりあえず何か言い訳をっ!
「あなた、強かったのね」
「はい!中学の頃空手を少々やっておりました」
何でこんな上から目線で別に言いたくもないことを言っちゃうの!わたし!
ていうかもう先輩のこの態度は奴隷というより召使いとか手下に近いよね。わたしの中での奴隷って嫌々命令される人たちなイメージがあるし。
そんなことより先輩の地位を何とかしてわたしと同じくらいに上げなければ!
「いいわ 今回の手柄として、あなたを奴隷からわたしのボディーガードに階級を上げてあげる!」
あ もうこの口わたしのいうこと聞かないや。
「はいっ!僕がご主人様の身を守ってみせます」
こうして行き違いから奇妙な主従生活が始まった。
生物学的弱者のラブコメ @MOB150
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