いつもの日常?②

 ぼくは教室に戻ろうと歩き出した。階段を降りていると、ちょうど教室から出てきた妹と目があった。すると妹は無言でスタスタスタとこちらに向かってきた。

 なになになに?もうぼく、さっきのことでHPほとんど持ってかれたんだけど!

 優菜も人気者なんだからぼくの評価が今日だけでおかしな方向に行っちゃうって!頼むからくっついたりとかはするなよ


「ちょっときて。」


 と妹は想定とは違う、ぼくを引っ張って連れて行くという行動をとった。

 え?どこにつれてかれるの?何されるの?

ていうかさっきもこんなことがあったような....もう考えないでおこう。

 連れてこられたのはさっきと同じ場所。


「で?何のよう?優菜」


 そう聞くと、


「大丈夫?!お兄ちゃん!?」


 と言って肩をガシッと掴んできた。

 えーもう何が何だかわからん。

 それにぼくも高二だから妹とは言え高一の女子とここまで顔を近づけられると、ちょっといろんな意味で困る。


「優菜さん?!どうかなさいましたか?!」


「だって!なんかニヤニヤしながら由里香が出て行った後おにいの教室に行っておにいを連れて行ったって言ってたから!」


 あーなるほど優菜は優菜なりに心配してくれてたんだな。 


「お前信じてくれてたのかよ。

でも大丈夫だ。けど、なんか友達の悩みを解決するのを手伝えとかそんなんだから。」


「まぁこれまでそういう話を聞かない由里香が自ら男を呼びに行くなんて絶対何かあるからね。それにおにい、おにいが思ってるほどその相談、簡単じゃないと思うよ。」


「え?そうなのか?てっきりちょっとした悩みを解決するだけだから簡単だと思ってたんだけど。」


「いや。確かにそうなんだけど、おにいは由里香が友達の中でなんで呼ばれてるか知ってる?」


「え?知らないけど?」


「由里香お姉様って言われてて、悩みは由里香お姉様に相談すれば助けてくださるという考えがあるの。けどそれは悩みを丸投げしてるんじゃなくてみんな尊敬した上で頼ってるだけなんだ。

けど人が多くて最近由里香はかなり忙しそうにしてたんだよね。

 しかも由里香の悩み相談の予定はもう1週間後まで決まってるらしいから。」


 有名人みたいな生活をしてんなー。ていうか自分の放課後をほとんど人の悩みに使ってあげるとはどんだけお人好しなんだよ!由里香お姉様!


「まぁ、そういうことなら手伝ってあげんとな」


「おにいはなんだかんだ優しいねーさすがわたしのおにい!」


「おおう、素直に褒められると照れるなー」


「ていうかおにいまた不良に絡まれたって本当?」


「あ、あぁ」


 バツ悪く答えると、


「全くおにいは、なんで相談してくれないんだよ〜?ていうかお兄ちゃん本気出せば不良くらい倒せるでしょ」


「、、、」


「道場では神童とも言われてたんだから」


「優菜に面倒かけたりするかもしれないし、兄として頼るのはちょっと気が引けるし」


 ぼくは一個前の質問に答えて無理やり話題を変えた。

 確かにぼくは空手の有段者である。多分進藤のグループぐらいなら一人でも勝てるだろう。しかしぼくはあることをきっかけで喧嘩をするのが怖くなったのだ。


「ま、おにいが戦えないうちは妹である私が守ってあげるし、頼られても私はぜぇーたい私の中のおにいの評価は下がったりしないから!むしろ頼ってくれて可愛いってなって評価上がるかも?やったね!」


「そういうのが兄として嫌なんだよ!このブラコンめ」


 そう言って頭を撫でてやると優菜は

「えへへー」と喜ぶ

 そんなバカ兄妹のやりとりが終わると、ぼくはやっとの思いで教室に戻るとやはりというかなんというか話題の中心になっていた。

 この学校は中学も高校も同じ建物の中にあり中学と高校にあまり隔たりがないため、うちのクラスでも日野さんは有名人なんだろう。

 そんな人がクラスではあまり目立ってない男子に会いにきたとなれば話題になって当然だろう。

 しかしわかっていても、こちらをチラチラ見ながらこそこそ何かを言われるのはいい気分じゃないな。

 先に戻ると隣の席の一ノ瀬が


「殻斗くぅ〜ん?なんで行ってくれなかったのかなぁ〜?優菜ちゃんは妹ってことで許したけど、由里香ちゃんは妹でもないでしょ友達なら紹介してくれればよかったのに〜」


 と言いながら、にこやかな笑顔でぼくの肩を掴み握りつぶそうとしてくる。


「ちょ?いたい!いたい!違うんだよー!一ノ瀬くん!昨日妹がうちに彼女を連れてきたからそのお礼を言われたんだよ!」


 日野さんを庇うのはなんか癪に触るがこの際仕方ない。

 このことを言うと、一ノ瀬は勝手に納得して、「家に行っただけでわざわざお礼を言いにきてくれるなんてっ!なんていい子なんだっ!」なんて言っている。

 他のクラスメイトも聞いていたらしくこれを言ったら、

なーんだ。とか、

やっぱいい子だな。とか、

そりゃあんなパッとしないやつじゃ釣り合わないよな。とか、

 色々言って納得したようだ。

 おい!最後!確かにぼくじゃ釣り合わないってわかってるけど、そんな本人に聞こえるくらいの音量でパッとしないなんていうなよ!ちょっと気にしてたのに!ほんのちょっとだけだけど!

 そこから授業終了までは本当にいつも通りの1日がだった。

 そして地獄の放課後がやってくる。

 

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