星の声が聞こえる

五月庵

星の声が聞こえる



 星空に酔うこともあるのだと知ったのは、いつのことだっただろうか。


 


 確か、小学生の頃だったと思う。国内でも有数の星の名所だという場所に家族旅行に出掛けた時のことだ。見晴らしの良い野原にレジャーシートを敷いて、右から父、私、妹、母の順で寝転がって空一面に広がる星々を眺めた。じーっと美しい星空に目を向けていると、そのうち、天と地の境界が曖昧になっていった。あれ? と思っているうちにもどんどんと平衡感覚が薄れてゆき、全身がふわふわとして目が回る。このまま宇宙空間へ放り投げられてしまうのではないか。そんな妄想をしてしまうほど、私はその星空に圧倒された。それはなかなかの恐怖体験で、そうして、私は具合が悪くなってしまったのだった。


 


 その場所に私は今、妹と二人、夜行バスに乗ってやって来ていた。またあの体験ができるのかと思うと、少し怖かったが楽しみでもあった。しかし、そこで久方ぶりに見た夜空は、記憶のものとは大きく違っていた。あの日見た時よりもずっと朧げでちゃちな光がたくさん集まっているとしか、私の目は捉えることが出来なかったのである。昔と比べて目が悪くなっているのだからそれも当然といえば当然なのだが、そのことに浅からぬショックを受けた。一方の妹はというと、私の隣で頭上の星々にも負けないほどにきらきらと目を輝かせてはしゃいでいた。


「ね、あれって天の川だよね? 教科書でしか見たことない! すごい、ほんとにあるんだなあ」


「ふふ、そりゃあるでしょうよ」


「えへへ、来てよかったなぁ」


 私と違って目がいい妹にはこの夜空も異なって見えるのかと思うと、少し羨ましい。でもそれ以上に、ここまで楽しそうにしてくれるのが、なんだか嬉しい。遠路はるばる来た甲斐があったというものだ。


 


 このように、姉妹でもものの見方が同じだとは限らない。むしろ、同じであることなど滅多にないのではないだろうか。


 これから話すのは、そうした違いを抱えた、どこにでもいるような姉妹の、ごくありふれた話である。


 妹の名を、香織という。彼女は、星の声を聞くことができた。


 


 星の声が聞こえる。


 そのとっておきの秘密を打ち明けてくれたのは、妹が中学二年生、私が高校一年生の時のことだった。


 その日、リビングでだらだらしていた私の前に、いたずらそうな笑みを浮かべた妹が仁王立ちした。


「どうしたの?」


「ふふふ、聞いて驚くがよい。私ね、星の声が聞こえるようになったの」


「は、星?」


 思ってもいなかった言葉が妹の口から飛び出してきて、つい声が裏返る。妹は、中二病なのだろうか。そんな考えが頭に浮かぶ。邪気眼がどうとか右腕に秘められし能力(ちから)が云々とかそういうものの類だと思ったのだ。だが、得意そうな顔はしているものの、そこに嘘は混じっていないような気がした。


 次いで浮かんだのは、妹の頭がおかしくなってしまったという可能性だ。だが、その可能性は低いだろうとも思った。伝え聞きだが、家族の中でも飛びぬけて活発な香織は、中学でのバレー部の活動を全力で取り組み、友達も数多くいるそうであり、それらがすべて偽りの事実であったとは考え難い。また、それを姉である私に話す意味が分からないとも思った。


 ここまで考えて、妹の言葉にどう返答したものかわからなくなった。それでも香織はさらなるリアクションを求めて熱いまなざしを向けてくる。仕方なく目を合わせて曖昧な表情を浮かべて曖昧に頷くと、


「あーっ、信じてないって顔してるー! まあしょうがないけどさぁ、そうもあからさまだとちょっと傷つくよー」


 と、本当にショックそうな顔をしたのだった。


「いや、それはごめん。だけど、信じろって言われてすぐ信じられるような話じゃないでしょこれは。こちとら星に声があることさえ初耳なんだけど……。ねぇ、それは今も聞こえてるの?」


「聞こうと思えばいつでも聞けるよー。今ここで聞いてみよっか」


「それは是非に」


 そういうと、よしきた、と頷いた後、香織は目を閉じた。集中しないと聞こえないということなのだろうか。なんだかどんどんスピリチュアルな方向に進んでいるような気がして、少し怖い。新しい宗教を作れそうだな、と考える。妹の性格からしてそんなことはしないだろうとは思うが、もしそうなったらどうしよう。


「……んん、聞こえてきた聞こえてきた」


「なんかラジオみたいだね」


「あ、確かにそんな感じかもしれない。聞こうとしないと聞けない辺り似てるかもね。となると、私はかなり性能の悪いラジオってことになっちゃうけど」


「ねぇ、何て言ってるのか教えてよ」


「いいよー。ええっと……明日の午後三時二十五分、E市に竜巻が発生、十七分後に消滅。ああ、午後の二時四十二分から雨が降るんだって。天気予報だと晴れなのになぁ。お姉ちゃんも傘持ってったほうがいいよ」


 香織の言葉に、絶句した。


なぜならそれは予言、いや予知といったほうがいいものだったからだ。


 次の日。


 妹が言ったとおり、その日は雨だった。


 


 香織のいう〝星〟が予知できるのは、自然現象限定らしい。その理由を尋ねてみると、「私もよくわかってはいないんだけど、」と断ってからこう言った。


「星にしてみれば、人間がすることは気にするほどのことでもない、些細なことだからじゃないかな。私たちが細菌を意識して捉えようとしたりしないのと同じだよ」


 その考察に、ふうん、と一応納得したものの、それにしては使われている言葉が人間本位なものばかりなのが気にかかった。それを言ってしまえば、星が言語を用いていること自体がそうなのだが。


「どっかに発表したりしないの? すごいことだと思うんだけどな」


「考えないでもないんだけどね~……。でも、頭がおかしいと思われるのが関の山だと思う。たとえ信じてくれたとしても、それはそれでめんどくさいもん」


 その言葉にドキッとした。私も、わずかの間とはいえ香織の頭がおかしくなったのではないかと疑っていたからだ。


「どうして、私には話してくれたの? 私が信じるとは限らなかったじゃない」


「だって、お姉ちゃんなら私の話を信じてくれるって信じてたから。あと、信じさせる自信もあったからね」


 ふふん、と胸を張る香織に「なによそれ」と言いながらも、妹の中で私は特別な位置づけにあるのかと思うと嬉しかった。


 


 ある日のこと。


「あっ」


「なに、どうしたの?」


 突然大きな声を出した香織に驚きながら尋ねると、いやごめんごめん、と照れながら次のように言った。


「ちょっと今星の声を聞いてたんだけどね……。えっと、その、人類、滅亡するんだって」


「………………それは、いつ?」


「今から十三年後」


「……わあ」


 その後、私たちの間にしばしの沈黙が流れた。


 


 二人の間だけで共有するにはあまりに重大すぎる未来にどうするべきか悩んだ私たちは、とりあえず、ネット掲示板に書き込むことにした。誰かほかの人に相談するには色々とリスクが高すぎたからである。その際、新規のスレッドを立てず既存のスレに何の脈略もなく書き込んだものだから、妹の書き込みは荒らしとして完全に無視されていた。それでもめげずに手当たり次第ありとあらゆる板で書き込んでいくのがすごい。だがそれでは書き込む意味がないのでは、と心配になった私は、妹のスマホの画面を覗き込みながら、「新しくスレを立てたほうがいいんじゃない?」とありきたりなアドバイスをしたのだった。


「う、やっぱりそう思う? でも、こういうの初めてだから怖いんだよね~……。お姉ちゃん、せめて私の代わりにスレタイ考えて! パッと目を引くようなやつ!」


「んな無茶な」


 そう言いながらも私は妹に死ぬほど甘いので、うんうん頭を捻った結果、次のようなタイトルを考え出した。


 


【悲報】人類滅亡まで残り十三年であることが判明


 


「うん……よく見るよねこういうタイトル……。良いと思います」


「微妙だと思ってんならはっきり言ってよ……」


 クリックしたくなるかと言われれば甚だ微妙としか言いようがない。だがそのまま使われることになった。


 スレを開いた人の中に以前の書き込みを見た人がいたようで、タイトルの微妙さとは反して穏やかではない方向の盛り上がりを見せていた。ようするに、荒れたのだ。ソースは何だとか最近スレを荒らしてたのはお前かいい加減にしろ、病院に行けだとか刺々しい言葉がずらずらと並んでいるのを見ても、当の本人は「よし、これでどうしてあの時言わなかったんだ、って後から責められずに済むね」と快活に笑っていて、私は姉としてそのことを喜ぶべきなのかどうか悩んだ。それでも、一瞬後には、妹が傷付くよりかは何百倍もましだと思ったのだったが。


 


 その後、妹はより多くの人に自分の聞いた星の声を知ってもらおうと、ブログを開設した。そのブログの名前は、そのまま直球で『星の声』。序文に書かれた「このブログは、星の声を元に書かれたものです」という一文の胡散臭さが凄まじい。予知以外の情報は必要最低限のことを書くに留め、星の声に関しては、信じるも信じないも閲覧者次第、と判断を委ねた。スマホでぽちぽちとまめに更新していて、妹はこういう文章を書くのだな、と思うと見ていて中々興味深かった。


 


 ある日SNS上で香織のブログが話題に上がったのをきっかけとして、ブログの閲覧数は爆発的に伸びてゆき、ついには新聞やテレビ等各種メディアで取り上げられるまでになった。


「ほら、香織のブログが記事になってるよ」


「あ、ほんとだ。なんだかすごい騒ぎになっちゃったなぁ」


 私はこの騒動にどきどきと高揚していたが、とうの本人である香織は、自分のブログが話題となっていることに対してさしたる興味も感慨もないようだった。その落ち着きようを見ていると姉の私がはしゃいだ気持ちでいることが恥ずかしく感じられて、あまり妹との話に出さないようにした。それでも、なんだかんだ新聞の記事をスクラップしていたのだが、それは内緒だ。


 


 それにしても、未来のことを知れるというのはどういうことなのだろうと、今更ながら考える。私は、一般に予言とされているものはいずれも後世意味付けされたものだと思っている。一時話題になったマヤの予言も、最期の日とされた日を過ぎた後に本当の終末の日はこっち、とまた新たな説が浮上してきたのをおぼろげながら記憶している。冷静に考えなくても、これはちょっと信用できないぞと思ってしまったのだが、それでも懲りずに自分を含む人類(あるいは世界)が滅ぶ日を提示する強固さは凄いと思わないでもない。皆が皆本気で信じているわけではないにしても、不明確な予言で多くの人が盛り上がるのは、まるで世界の破滅を望んでいるかのようで、少し愉快でもある。


 このように、これまで話題になったいわゆる『予言』には、〝隠されたメッセージ〟を読み取れるだけの柔軟性、いってしまえば読み手の好きなように解釈し得る空白が存在するのに対し、香織のブログには一切そうするだけの余地がないのが異質と言えた。その時間、どこで何が起きるかを、何の装飾もなくごく簡潔に書いているに過ぎなかったのだ。しかも、ことの大小はあれども、そのすべてが寸分の狂いなく現実のものとなっていったのだから、やはり他の未来に関する記述と比べて異常であることは間違いない。


 そんな折、ネット上で、『星の声』は一体誰が書いているのかと管理人の身元を割り出そうとする動きが出てきた。そんなことで妹の人生を滅茶苦茶にさせるわけにはいかない、こうなったら何かしらの行動を起こさねばまずいかもしれないと、私は気が気ではなかった。だがそれも杞憂に終わった。


 香織が唐突にブログを閉鎖したからだ。


 理由を尋ねると、「だって私もう受験生だよ。星の声を聞く暇がなくなった、そういうことだよ」と英語の単語帳片手になんてこともないように答えたのだった。


 


 そうして、受験が終わった今も、香織はブログを再開することはない。星の声を聞くという能力は失っていないようだったが、そのことについて以前のように香織から話をすることはなかったし、私の方も話題に出すことはなくなったのだった。


 


 夜空に、一条の光が通り過ぎる。それを契機とするかのように、次々と星が流れ落ちてゆく。


 私には何もかもが曖昧にしか見えない星空の中で、流れ星だけがくっきりとした残像を残しながら目に飛び込む。とても、綺麗だった。思わずきれいと、声に出して言ってしまうほどに。私の声に、妹がふわっとした笑い声を漏らす。


「お姉ちゃん」


「うん? どうしたの?」


「ううん、なんでもない」


 それからまた二人黙って星空を見る。同じ空を見ていても、私と妹とではその見え方が違う。でも、それが当たり前なのだと再度思う。すぐ隣にいても、たった今香織が何を思っているかなんて少しもわからない。それは、香織にとっても同じことだ。それでも私は、許される限り妹の側にいたいと思う。


「星の声が聞こえる」というあの日の香織の言葉。


 あれが真実であろうとなかろうと、今となってはそんなことはどうでもよかった。私にとって妹の言葉はすべて真実で、この世の真理だった。私は、妹が幸せならば、そしてあわよくばこの先も共に居られるのならば、それで十分だ。それが私の、唯一の願いであり、望みなのだ。


 


◇ ◇ ◇


 


 私は、お姉ちゃんに嘘をついています。


 


 私のお姉ちゃんの名前は、詩織。妹の私にとても優しくて、よく勉強を教えてくれたり、私の買い物に付き合ってくれたりしています。私はそんなお姉ちゃんのことが大好きです。


 そのお姉ちゃんに、私は嘘をついているのです。


 私は、本当は星の声なんか聞こえていません。これまで話したことは全部、私が予知したことです。自然現象だけしか予知できない、というのも嘘です。私はありとあらゆる事象がいつ、どのように起きるのかを知ることが出来ます。もちろん、目の前にいる人が次の瞬間何をするのかということも。ただし、集中しないとわからないというのは本当のことです。


 予知できるようになったのは、小学五年生の夏のことです。最初のうちはごく直近の未来しか予知できませんでしたが、回数を重ねるうちに段々遠く先の未来のことまでわかるようになりました。自分の能力に気付いた時から、このことは人に言わない方がいいということは薄々感じていたので、嘘であるにしても予知のことを誰かに話したのはお姉ちゃんが初めてです。それまで、できることなら死ぬまで自分一人だけの秘密にしておこうと考えていたのに、なぜ突然お姉ちゃんに話そうと思ったのか。それは、次のことを予知したからです。


 


 大好きなお姉ちゃんが、五年後に死ぬ。


 


 そんなことは、あってはならないことでした。とてもじゃないけど、耐えられないことでした。だから、私は未来を変えることにしました。私を置いて、手の届かない遠くに行かないでほしい。その一心で。


 近い未来に人類が滅ぶことを知ったのは、その後のことでした。


 運命を変えようとどれだけ足掻いたところで、遅かれ早かれ結果は同じということを、私はこれまでの経験から学んでいました。明日枯れることがわかっている花に水をやったところで、『枯れる』という結末に至ることが不可避であるように、運命もまた不可逆で絶対的なものであるようでした。それでも、一時的にその進行を遅らせることは出来るということもまた、私は学んでいました。


 そこで、私は『お姉ちゃんが五年後に死ぬ』という結果を人類滅亡の日――つまり、私もこの世からいなくなる日――まで先送りにすることを考えたのです。多くの人の人生に関わる災害を予知して、それを世に知らしめれば、それが巡り巡ってお姉ちゃんの命を延ばすことに繋がるかもしれない。それは、あまりに都合のよい考え方でした。反対に、お姉ちゃんの最期が近付く可能性だってあったのです。それでも私は、その一か八かに賭けることにしたのです。そんなに上手くいくはずがないと、心の片隅で思いながら。


 しかし、未来は私の都合のよい方向へと変動していったのでした。予知した情報をブログに書き綴り、それを目にした人々が行動を起こす度、ほんの少しずつお姉ちゃんの最期は遠ざかり、それに反比例するかのようにして人類滅亡への道のりは日に日に短くなっていきました。そして、ついにその二つが同じ日にぴたりと合わさったとき、私はブログの更新を止めたのでした。しかし今も尚、人類最期の日は近づいてきています。その日まで、今からあと七年と八十三日。最初の予知ではお姉ちゃんに言ったように、確かにあと十三年の猶予があったのですが、あれから一年近く経っていることを差し引いても、そこから五年以上短くなっていることになります。


 これは、世界を巻き込んだ無理心中といっても差し支えないかもしれません。でも、私は何も、死にたいと思ってこうしているわけではないのです。できることなら、お姉ちゃんとずっと一緒に、何年も何十年も生き続けていたかった。でもそれは叶わないことだと痛いくらいにわかっていたから、だから私は、お姉ちゃんと共に滅ぶ道を選んだのです。


 


「……きれい」


 私の隣で、お姉ちゃんが呟きます。今日は何十年に一度の流星群が見られる日です。これが流星群を見る最後のチャンスだと知っている私たちは、バスで何時間もかけて星の名所であるこの地にやってきたのでした。光が幾筋も降り注ぎ、夜空を切り裂いていく光景は、確かに美しく、はっと息を呑むほどです。この景色を、お姉ちゃんも綺麗だと感じているんだなぁと思うと、胸の奥がぽかぽかとして、嬉しくて、つい笑ってしまいました。それに対して、お姉ちゃんは不思議そうな顔をします。目が悪いのもあって、私の顔がどこにあるのかよくわかっていないようで、話しながらこちらを向いても、その視線が私と交わることがありません。でも、私は目が良いのでそんなお姉ちゃんの様子を窺い知ることが出来るのが、何だか可笑しくて、あぁ、幸せだと、心から思いました。


 お姉ちゃんは、目が悪いくせにまだ大丈夫だからと面倒くさがって眼鏡をかけようとしません。眼鏡姿もきっと素敵で似合うだろうことが想像できるだけに、それがちょっぴり残念でなりません。なので、近いうちに、誕生日にでもプレゼントしようと思っています。二人で眼鏡屋さんに行って、視力を測って、眼鏡をどれにするか決めて……。考えるだけで胸がときめきます。きっとお姉ちゃんは、私が選んだデザインの眼鏡を喜んでかけてくれることでしょう。これは、予知ではなく想像です。でも、私にはその想像がそのまま現実になるだろうことが容易にわかりました。だってお姉ちゃんは、私がお姉ちゃんを大好きなのと同じくらい、私のことが大好きだから。


 私たちの未来は、限られています。その中で、お姉ちゃんと一緒にいろんなことをしてみたい。そのためにも、私は考えます。何をしたら、最期のその時に後悔しないで済むのだろうかと。でも、こうも思うのです。お姉ちゃんとなら、どんな選択をしたとしても決して後悔はしない。


 だから私は願うのです。最期まで、お姉ちゃんと共にあれることを。これだけ流れ星があるのだから、きっとこの願いは叶うに違いありません。これは私の予知でも想像でもなく、ただの、祈りなのです。


 


◇ ◇ ◇   


 


「ねえねえ、今度はどこに行く? 私は水族館に行きたいなぁ」


「私は、動物園にも行きたいな」


「あ、それもいいな~! ううん、悩ましい……」


 バスは私たちを乗せて私たちの住む町に向かう。窓の外に広がる空に、星の姿はもう見えない。だけど、その明るい青空の向こうに、昨夜見た流星の残像が透けて見えたような気がした。


 

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