信頼関係?
『さぁ、早く教えろ...。2人は何処にいる』
俺が問いかけると、トキの仮面をつけた人物はやや嘲笑的な笑みをこぼしながら、言った。
「ふふ、焦る気持ちは分かるけど、その前に...昨日も言ったけど、私達と手を組んでくれたら力を貸すことができるんだよ?...ほら、どうするの?」
『私達...?一人じゃないのか。それに、俺は何をすればいいんだよ。...いきなり手を組めって言われても無理な話だろ?』
次々と浮かび上がる疑問を言葉にし、目の前のこいつに説明を促す。すると、一瞬だけ思考した様子の仮面野郎は平坦な声で喋り始めた。
「...でもさ、君の目的はあの二人を探すこと。そして私は君に協力して欲しい。あの二人が今どこにいて、何をしているのかを私は知っている...。となると、ここは協力した方が良いんじゃないかしら?」
白々しく言葉を並べる女に、悔しいが反論できない。...確かに、俺とこいつの目的は利害が一致する。だが、こいつを信頼出来る情報が不足しすぎてる。
此奴はなんなんだ。一体こいつは何が目的なのか。
刹那、樹と天望の顔が頭をよぎった。
──────今迷っている暇は無い...か。
『はぁ...仕方ない。──────俺の出来ることなら、手を貸そう。だが一つ聞かせてもらう。お前達は何がしたい』
そう言うと、仮面からの視線が一瞬鋭いものになる。だがそれは直ぐにその視線は無を含んだ平坦なものに戻っていた。
『...そう怒らないでくれ。俺に何をさせたいのか、と聞いているんだ』
「...そうね、ある国の王を殺害して欲しい。これは君の得意分野でしょう?」
、、やはり俺の情報が漏れていたのか。しかも俺が殺し屋だということを知っている。
『王殺し...ねぇ。これまた物騒な依頼だな』
「まぁ、その話について聞きたいことは山ほどあるだろうけど、ちょっと待っといて。私からは説明しないから」
『...はいはい、分かりましたよ。ご主人様』
「えぇ、、その呼び方辞めてよ。気色悪い。...まぁ、もうすぐ三十分ね。彼女、来るんじゃない?」
その時、カランカランという鈴の音が鳴る。どうやら《彼女》の登場のようだ。
「あれ?もう皆居るんですね。ひあさんは兎も角、稲荷君は余程のしっかりさんみたいだね。話は大体聞いた?」
薄黄緑色のローブの様なものを纏った彼女は、入店早々にちょうど俺と対面する形で座席に座り、つらつらと言った。
『あぁ、ざっとな』
「じゃあ乗り気になってくれたかな?」
『...どうだろうな。』
条件は悪くない。だが、名前すらも知らないような奴らは信用出来ない。それが一番の壁だな。
「、、まぁ急にこんな話されても困るよね。ゆっくり考えてくれて構わないよ」
そういうと彼女は稲荷の肩を軽く叩き
「自己紹介がまだだったね。僕は月華 子鈴。そしてこっちが巫 ひあ。まぁ仲良い二人組。その認識で良いよ」
と言う。俺の目の前ではトキの仮面を付けた人物、ひあは優雅に紅茶を飲んでいた。
『そうか、なら子鈴。お前らは俺に協力して欲しいと言っていたな。その内容について詳しく聞きたい』
「ひあさんから伝えられた様に一つは王の殺害、そしてあともう一つは...革命の手伝い、だよ」
やや含んだ言い方と『革命』という単語。彼女の次の言葉に、意識を集中させる。
「この国のトップ達は皆権力に溺れてやりたい放題。平民は扱き使われ、幸せになれずに生涯を終える。こんな世の中、嫌じゃない?」
『...』
「だから君が王を殺し、僕が新たな国を作る。平等な国を。」
子鈴は、嘘などは言っていない。目で分かる。此奴は数少ない他人の幸せを願える奴なんだ。
『...分かった。受けてやる』
「あら、良いんですか?貴方には今から手を真っ赤に染める作業をやってもらうことになりますけど」
『知ったこっちゃねえよ。手ならもう子供の時から真っ赤だ』
「そうですか、ありがとうございます。こちらも貴方の仲間を助ける為に全力を尽くしましょう。」
『此方こそ宜しく。』
差し出された子鈴の手を強く握る。
これが新たな国が誕生する為の第一歩だ。
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