第20話 大人への第一歩、恋愛至上主義グループに学ぼう恋愛講座
「大人への第一歩、恋愛至上主義グループに学ぼう恋愛講座!」
私が二年三組の教室を朝七時ちょうどにガラリと開けると、松本さんが大きな声で叫びました。吉田さんと恋愛至上主義グループが笑いながら拍手をしています。楽しそうな雰囲気とは真逆の、扇風機が元気よく稼働するぶぅ~ん、という音が耳障りでした。
「何ですか、これ…」
足を踏み入れた教室は、いつもとは違う場所と化しています。明るい日の光が差す窓は黒い遮光カーテンで覆われていて、蛍光灯の灯りもつけられていませんでした。けれど教室は暗くありません。蛍光灯の灯りがつけられていない代わりに暖色の電飾が教室中に飾り付けられていて、何とも艶めかしい雰囲気を醸し出しているからです。教室の四隅に置かれたフランス人形は六十センチほどありそうな、大きなものです。三十一人分の机の上には大小様々なひょうたんが置かれていて、その中に花が生けてあるものもあれば、赤いリボンが掛かっているものもありました。黒板には「恋愛至上主義VS脱恋愛依存派」と書かれていて、その達筆なその文字が、電飾の淡い光に照らされています。
教室にいたのは、クラスの恋愛至上主義グループと松本さん、吉田さん、そして何故か古本屋「クイーンシャトー」の店長でした。
「もう、頑張ったんですよっ!」
「恋愛反対派なんてこのクラスにはいなかったのよ。なんてったって、皆、中二病なんだから」
「だからクイーンシャトーの店長が…?」
「そうよ。彼は世界が独身化または晩婚化になることを渇望してこの年齢になったのだと言ったわ。クイーンシャトーがオープンする九時までだったら協力できるって」
「なるほど…。ありがとうございます。皆さんも」
私はクイーンシャトーの店長に頭を下げ、クラスメイトの恋愛至上主義者たちにも頭を下げました。
クイーンシャトーの店長の店長は笑顔を浮かべて何度も頷き、そのたびに緑色のタコの帽子がふわんと前後に揺れます。恋愛至上主義者たちは
「遠慮すんなよ」
「加藤さんもこっちに引き寄せてやるわ」
などという言葉を口にしました。
恋愛至上主義者は八人いました。女子が三人、男子が五人です。女子の中には根崎さんもいて、彼氏というのは絶対的な味方である云々の話が、しっかりとした思想のもとに成り立っていることを私は確信しました。
中二病恋愛白書 @daruma_zipup
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