第9話 ジェントルマン、田中(2)

先ほども言いましたが、中二病には大きく分けて四つの種類があります。クラス三十一人中、田中君以外の男女は皆、多少なりとも中二病の種のようなものを持っていて、四つのどこかに分類されるのです。しかし、優等生タイプだけは、まひろ君一人なのです。クラスでも真面目過ぎ、厳しすぎ、で少し浮いてしまっています。別に悪い人ではないのですが、二人組を作ろうとすると、どこかのグループは三人になって(特にマイルドヤンキーの黒沢君、菊池君、関口君)、まひろ君は余ってしまうのです。

四月の下旬に行われた、五月からの委員会決めの際、田中君はクラスの中で二番目にマシな井上君と組もうとしていました。しかし、ひとりぽっちのまひろ君を見つけるとすぐに、マイルドヤンキー組に井上君を託し、まひろ君の元へ向かいました。井上君は、すでに一人に告白していた恋愛至上主義タイプだったのですが、マイルドヤンキーたちとも馬が合わないわけではありません。田中君はそれを見越して、まひろ君の元へ行ったのです。その時だって、

「まひろ、組もうぜ」

 と言い、とりわけ組んであげよう、といったお慈悲めいた言葉は一切掛けませんでした。まひろ君は少しプライドが高いので、

「まあ、いいけど」

 というように、少しぶっきらぼうに答えていました。プライドの高さと、一人じゃなくなった嬉しさが、同時に複雑な感情を生み出し、彼の中二病は随分刺激された事でしょう。

 それからというもの、田中君はまひろ君と二人組を組むようにしています。きっと一番仲が良いのは、今の時点で三人に告白している井上君です。しかし、理科の実験や体育のストレッチなど、二人組を作らなければならないときには必ず、まひろ君と組むのです。

 中学二年生で、こんなにも優しくて、顔も性格も男前で、体格だって男らしく、背だって高い彼を好きにならない女子などいるのでしょうか。いや、そんなことはあり得ないのです。実際に他クラスの女子からも告白されているという田中君ですが、彼女はまだいないそうです。

 

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