第5話 中二病:マイルドヤンキータイプ

このクラスの「マイルドヤンキータイプ」の代表格は三人いて、それは黒沢君と菊池君、関口君です。彼らは制服を着崩しています。ワイシャツは第二ボタンまで開けて、その下には派手な色のTシャツを着ていることが多いです。安っぽい銀色のチェーンを腰からぶら下げているのも、彼らの特徴でしょうか。

「うるせえなぁ。お前のその声の方がうるさいんだよ」

 椅子に座ったまま、足を机の上に放り出した黒沢君が叫びます。

「そうだよ。別に誰もやってねえだろ。勉強なんて」

「おめえは耳栓でもやってろよ、いいんちょ~」

 菊池君と関口君も、まひろ君を攻撃します。

「お前らみたいなゴミがいると、このクラスの評価も相対的に下がるんだよ」

 まるで本物のゴミを見下ろすようにまひろ君は蔑んだ目をマイルドヤンキーたちに向けるのです。

「あぁ?なんだと?やんのか?」

 ガタッと机を蹴飛ばして、黒沢君はまひろ君に掴みかかります。何事も力で解決しようとするのも、このマイルドヤンキーたちの特徴なのです。

 黒沢君がまひろ君に掴みかかれば、菊池君と関口君もニヤニヤしながら黒沢君の近くににじり寄っていきます。

でも半年間一緒に過ごして分かったことがあります。菊池君と関口君は、絶対に暴力を振るいません。ニヤニヤしながらその光景を見守っているだけなのです。

黒沢君は場所を選んで殴ります。まず目立つ顔はやらない。やるとすればお腹か、腕か、足です。腹から大声を出す癖に、パンチは少し弱めです。

彼らはいつも大きな声で、

「昨日二時に寝たわ」

「俺全然寝てねえ。まじだりい」

「俺もまじで寝てねえ三時間睡眠」

 という睡眠不足自慢を語り合っています。足を机の上に放ったり、意味もなく後頭部で指を組んだり、なるべく悪い姿勢で悪いと思うことを語らっているのが、マイルドヤンキーです。彼らの口癖はいくつかあるのですが、堂々第一位はきっとこの、睡眠不足自慢でしょう。その割に肌艶は良いのですから、ちゃんと睡眠不足を遂行していただきたいものです。

それから、三人が随分と苦手意識をもつ存在がいます。それが、先生です。先生の前ではきちんと膝に手を乗せて話を聞くし、授業も比較的真面目に受けます。

虚勢を張って、自分を強く見せようとする彼らはまさにマイルドヤンキー。実際の弱さを見られないようにと、懸命に努力する姿は、なんとなく涙ものです。よく頑張っているね、そう言ってあげたいものです。

こんな優等生タイプとマイルドヤンキータイプの攻防戦を無視して、自分の世界に没頭している人たちこそ、三番目の漆黒の闇タイプです。


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