第3話 中二病4タイプ

「お二人はいつ彼氏がいたのですか?」

「私は中一の春までいたわ。小六から付き合ってたんだけど、価値観が合わなくて」

 松本さんは寂しそうに首を振ります。もしかしたら、振られてしまったのかもしれません。

「私はね、小学校五年生の時に彼氏ができたんだよっ。でも中学校が別になっちゃって、そのまま自然消滅しちゃったんですっ」

 吉田さんはあまり未練を感じていないようです。今もくるくると踊っています。紺色のプリーツスカートがふわりと膨らんで、萎みました。

「彼氏いらないの?」

「えぇ、欲しいんですけれど、難しくって」

「そう?でもまあ、今のこの感じじゃあ無理よね」

 松本さんは控えめな目つきで教室を見渡しました。私もつられて教室でお喋りに興じているクラスメイトに目をやります。

「私も今のこの学年の男の子には魅力を感じませんっ」

 吉田さんはぴょんと跳ねました。可愛らしい動作に反して、顔は嫌悪感で引きつっています。


 今は恋愛の時期ではない。それは十分承知なのです。実は今、この学年ではとある疫病が蔓延していて、皆、とても正常な判断を下すことなど出来ないのです。特に男の子なんかは、この病にかかると一年ほどは抜け出せないらしく、疫病はじわじわとクラスメイトを襲ってきています。

この病の厄介なところは、感染経路が分からない、というところでしょう。飛沫感染をするわけでも、接触感染をするわけでもないのです。だから、この病には知らず知らずのうちに感染していて、また、登校も許可されていることから、知らず知らずのうちに人に移してしまうのです。

例外として、二重の病に侵されたら、さすがに学校を休んでも良いのです。例えば熱とこの疫病、インフルエンザとこの疫病、などです。二重発病の怖いところは、何とも学校に行こうとする正義感をもたらす疫病と、学校に行くことが出来ない病が同時に発生することでしょうか。

 もう、この病の名称はお分かりになったでしょう。そうです。この病は「中二病」と呼ばれています。

 いろいろな形の中二病があります。大きく分ければ四つほどでしょうか。


 一つ目は、正義感万歳、仕切りたがり俺が正しい優等生タイプ。

 二つ目は、悪ぶっている俺最高、マイルドヤンキータイプ。

 三つめは、闇の組織に追われているんだ、漆黒の闇タイプ。

 四つ目は、誰でも良いからくっつこう、恋愛至上主義タイプ。

 

 

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