第二夜(主従の日)

「お嬢様。ずいぶんと張りきった装いですが、どちらへいかれるのですか?」

「あんたに関係ないじゃん」

「そうおっしゃられましても、お嬢様の行き先もわからず見送ることはできません」

「……コンビニ」

「はあ。新品のワンピースとお気に入りのパンプスで、コンビニ……でございますか。さすがお嬢様。どちらへいくにも最高の装い。まさに女性の鑑でございます」

「なによ、悪い?」

「いいえ。お嬢様の行動に、いち執事であるわたくしが申しあげることはございません。しかしコンビニで済む用事ならば、お嬢様がわざわざ赴くことはないかと。なにをご所望でしょうか」

「き、季節限定のスイーツ、とか?」

「それならシェフにお願いすればよろしいのでは?」

「コンビニにしか売ってないのが食べたいの!」

「左様でございますか。それではわたくしが代わりにまいりましょう。どちらのスイーツをご希望ですか?」

「えっ。あ、いや。そういうのは自分で選ぶから」

「そうですか。お嬢様は最近、コンビニスイーツがお気に入りのようで。これで今月に入って四回目でございましょうか。シェフの神崎かんざきが嘆いておりますよ。自分の実力はコンビニより劣るのかと」

「んぐ……」

「……ときにお嬢様。そのコンビニの名はもしや「早坂くん」でございますか?」

「なっ、なんで……!」

「やはりそうでしたか。……あのクソガキ、今度こそシメる」

「は? なに?」

「こほん。いいえ、もちろんなにもございません。しかしお嬢様、ひとつ問題が」

「なによ」

「わたくし先程うっかりして、お嬢様のスマホで、「早坂くん」にメールをしてしまいました」

「……は?」

「わたくしてっきり、お風呂にいるお嬢様に送ったつもりでして。「替えの下着は、キ〇ィちゃんの柄でよろしいですか」と」

「はあ!?」

「その後、すぐに謝罪のメールをお送りしたのですが……なにか返信はございましたか?」

「あんた絶対クビにする」

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