第146話 盗賊退治

作戦を練った後、俺は大熊宿の自室でアイテム整理を行った。


消費アイテムの数量などを確認する目的もある。




『…よし、これで終わりだな。』




明日の盗賊退治へ向けて、特に買い足すアイテムはないようだ。


それから夕食を取り、早めに眠りについた。




翌朝




いつも通り街の外で早朝訓練を行い、宿に帰ってきた。




「おはようございます。」




「お、おはようなのです。」




「おはよう。クレアとスーは…」




アイリス達の向かいを見ると、テーブルに突っ伏した2人がいた。


起きてはいるようだが、目は開いていない。




「…なるほど。」




アイリスから聞いたのだが、この1ヶ月でクレアとスーの寝起きが悪くなってしまったらしい。


冒険者になって自由度が高くなったせいだろうか?




「まあ…放っておくか。」




俺達が朝食を食べ始めると、2人もゾンビのようにノロノロとした動きで食べ始めた。




「まあ…宿を出るのは9時過ぎでいいから、あと1時間ちょいはゆっくりしてていいぞ。」




「そうするぜ…」




「あたしも…」




食事を終え、準備をしている間に2人の意識が覚醒した。


せっかくなので作戦な最終確認を行い、時間になった。




「お気をつけて…」




「ありがとうソフィア。」




門を出て、“闘気操術“を行使して走ること1時間と数十分。




「…止まれ。もうすぐ盗賊のアジトだ。」




「分かりました。では、私達は家屋を囲い込むように移動します。」




「ああ。イザベルとスーのところには見張りがいるから静かに仕留めてくれ。」




「りょ、了解なのです!!」




「りょうか〜い!!」




「よし…作戦開始だ!!」




そう言うと、4人は散開するように移動を開始した。


“盗賊探知“と新派生スキル“仲間探知“で様子を窺った。




『…おっ、盗賊の反応が2つ消えた。2人はうまく見張りを仕留められたようだな。』




待つこと数分、4人による包囲が完了した。


俺が家屋を襲撃すると同時に、4人は家屋の外にいる盗賊達を攻撃する算段となっている。




『さて…動くか。』




俺は“闘気操術“をTP100,000で行使し、吸血鬼の羽でアジトの上空まで飛翔した。


そして、羽をしまって武器を構えつつ垂直落下した。




『……今だ!!』




アジトに激突する寸前に両手剣Lv.4“インパクト“を行使して屋根を破壊し、中に入った。




「なっ、なんだおま…」




「て、敵しゅ…」




家屋の中にいた盗賊は突然降ってきた人に驚いている。


ある人は唖然とし、またある人は状況を理解して叫ぼうとするが…もう遅い。




着地と共に両手剣Lv.10“アトミックスターダスト“へスキルチェインし、捕縛された斥候のいる真下を除いた全方向に無数の斬撃を放った。


“闘気操術“のおかげで放つ斬撃数は倍増し、鼠1匹すら逃さないほどの嵐となって盗賊に襲いかかった。




「ぐぁぁ…」




「ぐぅぅ…」




斬撃を受けて苦痛の声を上げようとするが、声になる前に次々息絶えてゆく。


盗賊の身体を斬っても斬撃は止まることを知らず、30平米ほどもあった家屋を粉砕した。




一瞬の静寂ののち、パラパラと砕けた木材が散らばる音が聞こえる。


意外なことに、その音の中に1人の声が聞こえた。




“盗賊探知“を行使してみると、どうやら盗賊のリーダーが咄嗟に武器を前に構えてなんとか生き残ったようだ。




クレア達はそれぞれ家屋の外にいた盗賊8人1対2で対峙しているが…


突然アジトが粉砕したことに驚いた後ろを振り返り、全員その隙に片方を仕留めたようだ。




「ぜぇ…ぜぇ…この化け物め…!!」




赤の他人、それも盗賊に名乗る義理はない。


それに、死にゆく人に話しても無意味というものだろうが…




「気分がいいから特別に教えてやろう。俺はアルフレッド=ペンシルゴン…お前達が侵入しようとしていたペンシルゴン家の三男だよ。」




「お前がそうか…道理で…化け物じみてるわけだ。」




「褒め言葉として受け取っておくよ。さて…死ぬ覚悟は出来たか?」




「…そんな気は毛頭ねーよ!!食らいやがれ!!」




盗賊のリーダーがポーチから何か球体らしきものを取り出し、こちらへ投げつけてきた。


反射的にそれらを斬ると、中から白煙が出てきた。




「ちっ…!!」




クレア達は未だ外の敵と交戦中なので、援護は期待できない。


俺は即座に剣の刃が上下に向くように持ち、両手剣Lv.9“ノヴァディザスター“を行使した。




持ち方が異なるため斬撃は放てなかったが、その代わりに強風が発生した。


その強風によって白煙は瞬く間に霧散し、逃げようとしている姿が露わになった。




「この化け物がぁぁ!!!」




腰の短剣を取り、逆上して襲いかかってきた。


だが、その攻撃は恐怖と怒りで満ちていて隙だらけなものだった。




「…大人しく死ね。」




初撃をパリィして相手の体勢を崩し、一閃。


首が転げ落ち、ゴツンという音が聞こえた。




『ふぅ…こっちはこれで終わりだな。』




“盗賊探知“と“仲間探知“に意識を向けてみると、4人は既に盗賊を倒し終えて合流していた。




『…意外と簡単に壊滅できたな。』




“アトミックスターダスト“を行使した時、ほとんどの盗賊達が家屋の中に居たのが大きかっただろう。


微かな満足感を感じつつ、4人の元へ向かった。

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