第147話 宝探し
「おっ、アルフレッド!!そっちも片付いたのか?」
「ああ!!」
「よ〜し、アジトを漁るぞ〜!!」
「た、楽しみなのです!!」
「貴重な魔道具があれば嬉しいですね。」
ペンシルゴン家に侵入しようとしていたのだ。
レアな魔道具の1、2個は期待できるだろう。
粉砕した家屋の床を見てみると、真新しい鉄製のドアが取り付けられていた。
鍵がかかっていたので、剣で無理矢理こじ開けた。
「うわっ!!残党だ!!」
「落ち着けクレア…サリーちゃんが向かわせた斥候だよ。」
「そういえばそんなこと言ってたな…」
『危なかった…斬り殺す寸前だったぞ…』
斥候は眠り薬でも飲まされているのか、身体を揺らしても目を覚まさなかった。
生命体は“アイテムボックス“にしまえないので、彼は俺が担いで運ぶしかないだろう。
「地下はなかなか広いみたいだな。さて…俺は賞金首の死体を探すから、宝探しは4人に任せた。終わり次第俺も始める。」
「おう!!」
「任せて〜!!」
「アイリス、監督よろしくな。」
「分かりました…」
少し嫌そうな顔をしたような気がしなくもなかったが、気のせいだと判断して死体回収を始めた。
『人を殺しても…死体を見てもなんとも思わなくなったな。』
この世界に転生した時からだが、今日は大量殺戮をしたので改めてそう感じた。
きっと魂というものがこの世界に順応した結果だろう。
『…おっ、賞金首1人目発見!こいつは確か金貨1枚と大銀貨2枚だったな!!』
自分に向かって何か物が飛んできた時、咄嗟に顔を隠す人がほとんどだ。
そのおかげで、顔の部分は綺麗に残っていた。
…顔以外の部分は粉々に斬られて無惨な姿だが。
『装備品も売れば金になったのに…失敗したな…』
どれも傷だらけか穴だらけになっているので、売ろうとしてもほとんど値段がつかないだろう。
次から盗賊退治クエストを引き受けた時は、首を落とす等でなるべく綺麗に仕留めることにしよう。
『…おっ、2人目と3人目発見!!』
落ちている金を拾うように賞金首の生首を拾い上げ、次々“アイテムボックス“に収納していった。
詳しくは良く分からないが、全員が同じ紋章が彫られた石を持っていた。
『盗賊団の証か…?まあいいか。』
ここは街道沿いなので、血の匂いに釣られた魔物が集まる事態を避ける必要がある。
死体は全てギルドに提出しても良いとのことなので残りの死体も全て収納し、飛び散った血は地面を掘って土に埋めておいた。
数十分後
『ふぅ…これで全部か…』
4人が地下室に潜ってから何の音沙汰もないので少し心配だったが、“仲間探知“に反応があったので問題はないだろう。
『さて…俺も宝探しと洒落込むか!!』
胸を躍らせつつ、扉から地下室に入った。
そこはヒカリゴケが壁一面に塗られており、歩くには十分な光で満ちていた。
『松明は窒息死するからな…あの盗賊は地下室を作り慣れてたみたいだな。』
周囲を見てみると、左右に伸びた道から更に複数の道に分かれていた。
4人は左の道に向かっていたので、俺は“罠探知“を行使しながら右の道を進んだ。
『罠はないな。分かれ道が左右に2つずつ…右側から順番に回るか。』
右手前の道を進み、草の暖簾を抜けた。
そこには祭壇が置かれているようだが、どこか禍々しい雰囲気が漂っている。
この世界の神は俺を転生してくれた創造神の他に商人の神や鍛治の神など複数存在する。
どの神も創造神を頂点としているので、祭壇にはそれぞれが信仰する神と一緒に創造神にまつわるものを置く。
だが、この祭壇には創造神にまつわるものが置かれていない。
『これは…まさか邪神教徒か!?』
師範から聞いたことがある。
邪神教は文字通り邪神を崇める教団で、異教徒は死ぬことで救われると口にして虐殺を行うたちが悪い集団だ。
謎の紋章が彫られた石を全員が持っていたのは盗賊団の証ではなく邪神徒の証だったというわけだ。
『ただの盗賊じゃなかったのか…これはサリーちゃんに報告だな。』
創造神様から下賜された“アイテムボックス“に邪神教を崇める物は入れたくない。
“鑑定“によると祭壇には貴重なものや魔道具は無かったので放っておいても大丈夫だろう。
『さて…気を取り直して次行くか。』
右奥の道を進み、草の暖簾を抜けるとそこには食料保存庫が並んでいた。
食料庫の中には魔物の肉や調味料、野菜など様々な物が入っている。
もちろん食料庫ごと全ていただいた。
『魔物の肉は余ってるけど…調味料と野菜は買い出しに行ってなかったから助かる!!』
次に左奥の道を進むと、そこは武器庫だった。
盗賊達はLvが高かっただけのことはあり、武器は綺麗に磨いて種類別で箱に収納していた。
もちろん箱ごと全ていただいた。
『“鑑定“によるとレア武器はないみたいだな…全部売却してパーティー資金にするか。』
最後に左手前の道に進むと、そこは木製の板で塞がれていた。
地下室の扉と同様に剣でこじ開けた。
「おぉ…おおおお!!!!」
目の前に広がった光景に思わず歓声が漏れた。
そこにはキラキラと光る硬貨の小山と、壁沿いの棚に置かれた大量の魔道具があったのだ。
「どうしたアルフレッド!!」
今の声を聞いたのか、左の道からクレア達が駆け寄ってきた。
そして、金銀財宝を見ると俺と同じ反応をした。
「これ…全部オレ達のものか?」
「ああ!!」
「よっしゃぁぁぁぁ!!!」
「ところで、そっちはどうだった?」
「様々な道具が置かれた倉庫と木箱だらけの物置、それと生活空間の3部屋でした。」
「全部アイテムボックスの魔道具に仕舞ったよ〜!!」
「了解。撤収するぞ!!」
「は、はいなのです!!」
俺達は満面の笑みで大熊宿へと帰った。
出迎えたソフィアに訝しげな顔をされたが、それも気にならないほど気分が高揚していた。
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