第137話 吸血鬼 実験

「アルフレッド、どんな感じだ!?」




「落ち着けクレア…力が湧き上がってくる以外は特にないな。」




「吸血衝動はないの〜?」




「ない。…そういえば師範が吸血してるところを見たことがないな。」




「吸血は栄養補給ですからね。食事で代用が効くからです。」




「ア、アイリス詳しいのです!!」




「卒業試験のためだけに勉強しているわけではありませんからね。」




「流石アイリスだな。助かる!!」




「い、いえ!!」




アイリスが顔を赤らめて顔を逸らした。


どうやら褒められるのに弱いらしい。




「なあなあ、オレと1戦戦わないか??」




「い、今は自分の身体について知る方が大事なのです!!」




「イザベルの言う通りだ。今回は遠慮しておくよ。」




「分かった…」




クレアは尻尾を地面につけ、しゅんとした表情をした。


小動物のような愛くるしさがある。




「さて…では私たちは先に寮に戻ってますね。」




「ああ。」




『さて…色々と実験してみないとな。』




まずは自身を“鑑定“してみた。






名前 アルフレッド 種族 吸血鬼 Lv.217




名前 アルフレッド=ペンシルゴン 種族 吸血鬼 Lv.217




STR 300 VIT 210 DEX 200 AGI 250 INT 200 LUK 120




ユニークスキル


言語理解 鑑定 ……… 眷属化 再生 






種族は人族→吸血鬼に変化し、ユニークスキル欄に“眷属化“と“再生“が追加されていた。


また、ステータス値が若干上昇している。




師範には“擬態“のユニークスキルもあった気がするが、それは習得できなかったようだ。




『…“眷属化“と“再生“は師範を見てきたからよく知ってるな。』




ただし、“再生“に関しては再生速度や再生可能な損傷率について知る必要がある。


自傷行為はあまり気が進まないが、自身の能力について理解を深めるためにはやるしかないだろう。




『…それより命に関わる大事なことがあるな。』




日光や銀、聖水など一般的な吸血鬼の弱点についてだ。


“状態異常無効“のユニークスキルで防げるのか否か…




『…試してみるか。』




“アイテムボックス“から銀の短剣と鉄の短剣を取り出し、人差し指と中指をそれぞれ浅く切ってみた。


そして、その違いを観察してみた。




『ふむ…どっちも痛みは変わらないな。』




銀の短剣で血液が煙になったり、身体に火がつくことはなかった。


ひとまず弱点が増えたわけではなくて安心した。




『…おっ、2秒で“再生“したな。』




自身を“鑑定“してステータスを見てみると、HPは満タンだがTPが4減っていた。


“再生“はTPを消費して身体を修復し、HPを回復するからくりのようだ。




『損傷部位によるTP消費量の変化も調べないと…』




今度は“アイテムボックス“から聖水を取り出し、左手にかけてみた。


結界、特に効き目はなくただの水と大差なかった。




『…ってか銀の短剣といい聖水といい、我ながら旅の途中にアイテム集めすぎだな。』




それはさておき、次は吸血鬼の羽についてだ。




『…まずは羽を動かすところから始めるか。』




とはいえ、今までなかった部位の動かし方など分かるはずもない。




試行錯誤すること数十分




「…パサッ、パサッ」




『おぉ…動いた…!!』




何とも言葉に言い表しにくいのだが、強いて言えば肩甲骨あたりの筋肉を動かす感覚だ。


力を入れれば羽は早く、緩めれば羽は遅く動くのだが…




『なかなか難しいな。それに普段使わない筋肉だから攣りそう…ん?』




羽を上下左右に動かす感覚と違い、前後に動かす感覚を感じた。


試しに踏ん張って前に動かしてみた。




『ふっ…おぉ、仕舞えた!!』




今度な踏ん張って後ろに動かしてみた。




「…パサッ!」




『おぉ、羽を出し入れできるようになった!!』




後継の儀式が終わってからずっと羽が出続けていたが…


これで羽が仕舞えないという最悪な事態を回避することが出来た。




『飛ぶのは…流石に難しいか。』




反復練習は今後に回すとして…


残るは“再生“についてだ。




『…やるか。』




それから痛みに慣れる練習がてら、自傷を繰り返した。


結果は以下の通りだ。




1.どこを損傷してもTP消費量は一定である


2.失った血は元には戻らない


3.首を切り落としても心臓を刺しても、TPが足りてさえいれば死ぬことはない




といったところだ。




『…流石に3を試すには勇気が必要だったな。』




旅の途中、師範が魔物に心臓を貫かれても死ななかったところを見ていなければ実験できなかった。




『つまり俺はTPが無尽蔵にあるから、ほとんど不死ってことか…!!』




命の価値が低いこの世界で、死の可能性を限りなく排除できるのはこの上なく嬉しいことだ。


前世で言うなれば、一生遊んで暮らせるお金を手に入れたようなものだ。




『ふぅ…実験は大体終わったな。』




気が付けば3:00を回っていた。


この世界に転生してからここまで夜更かしをしたのは初めてなのではないだろうか?




『さて…帰って一眠りするか。』

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