第136話 後継の儀式

「はぁ…はぁ…疲れたぁぁ!!」




「アルフレッドーー!!」




「クレア…うわっ!!」




今の戦いを見て感極まったのか、闘技場に上って飛びついててきた。


アランとの戦闘で疲れ切った俺はその勢いに耐えられず、クレアに押し倒されてしまった。




「すごかったぞ!!あれはどうやったんだ!?オレにもできるのか??」




「ちょっ…一旦落ち着け!!」




『胸が当たってる!!こんなに柔らかいのか…って、違う!!』




「そ、そうですよクレア!!不埒です!!」




「ん…?わ、悪いアルフレッド!!」




「あ、ああ…」




クレアは顔を赤らめ、勢いよく俺から身体を離した。


柔らかな胸の感触が無くなり、どこかもったいないような感じがしたが気を取り直した。




「クレアはえっちだな〜」




「ち、違うぞ!!」




「ひ、人前でそういう行為は良くないのです…」




「イザベルまで!?」




「まあまあ、皆さん落ち着くのですわ。」




「ジェシカ教授…」




「アルフレッドさん、久しぶりですわね。」




「お久しぶりです。お元気そうで何よりです。」




「貴方も元気そうで何よりですわ。ところで…最後の攻撃は“ファイナルストライク“ですわよね!?」




「えっ?あ、はい。」




「ど、どどどどうやって習得したんですの!?」




「ちょっ、ジェシカ教授!?」




今度はジェシカ教授が俺の手を掴み、胸を押し付けてきた。


教授は獅子人族であり、まだ見た目が若くて美しいので俺としては全然アリだ。




『…って、違う!!そうじゃない!!』




やはり師範と2人で旅をしていたので、その弊害だろう。


心なしか人付き合いが苦手になった気がする。




「おいおい…アルフレッドを離してやれ…」




「アラン教授…!!」




魔道具の効果で痛みと共に闘技場の外に出されたアランが闘技場に戻ってきた。




「痛ててて…アルフレッド、強くなったな。」




「アランこそ…また負けるかと思ったよ。」




「はっ!!とか言ってまだ余裕あったんだろ?何か切り札があるように感じたが…」




「まあな。…けど、それはまだ実戦には程遠いんだよ。」




「そうか…まだ実力が伸びそうだな。」




アランはどこか哀愁漂う表情でそう呟いた。


自分の限界を悟ったのだろうか?




「…これで卒業試験を終了する!!結果開示は3日後だ!!忘れるなよ!!」




連絡を伝えると、アランはこちらへ一瞥して帰っていった。




「さて…俺たちも寮に戻るか。」




「そうですね。帰ったら旅の話を聞いてもいいですか?」




「あっ、オレも聞きたい!!」




「もちろん良いぞ!!」




「楽しみだね〜!!」




「た、楽しみなのです!!」




「じゃあまた後でな!!」




男子更衣室で制服に着替えていると、今まで話したこともないクラスメイト達から称賛を受けた。


悪い気はしなかったが、反応に困った。




「…おっ、やっと来たか。」




「悪い、待たせたな。」




「気にしないで〜」




「うむ。気にしなくていいのじゃ。」




「…っ!!師範!?」




「エ、エレノア様!!」




4人の中にひょこっと混ざっていた。


気が抜けていたのもあるが、気配に全く気付かなかった。




「弟子よ、後継の儀式を行うのじゃ。」




「っ!!場所と時間は…?」




「今晩0時、ここ闘技場でいいのじゃよ。」




「分かりました。」




「それまで妾はアインザスの食事を楽しんでいるのじゃよ!!また後でなのじゃ!!」




吸血鬼の黒い蝙蝠のような翼を出し、飛び去っていった。




「急に現れて急に消えたな…」




「嵐のような人ですね。」




「そうだね〜」




『後継の儀式…ついに吸血鬼になれるのか!!』




クレアは龍人族、アイリスは白狼族、イザベルは天使族、スーは鳥人族と亜人だが…


俺だけ人族なのは少し、ほんの少しだけ気になっていた。


これで俺も寿命が伸び、クレア達と長く一緒に居られるようになる。




それから後継の儀式を楽しみにしつつ、4人に旅の思い出を話しているうちに夜を迎えた。


俺は興奮が抑え切れず、そわそわして早めに闘技場へ着いた。




『これは…っ!!』




闘技場の舞台を見ると、巨大な魔法陣が描かれていた。


そして、その魔法陣の中央に師範が立っていた。




「予定より早く来るとは…流石妾の弟子じゃな!!」




「ありがとうございます。」




「ふむ…じゃが小娘4人に尾行されてあったようじゃな。」




「…っ!!」




「ほらっ、やっぱりバレたじゃないですか!!」




「だって気になるし〜」




「オレも気になる!!」




「と、とりあえず出て謝るのです!!」




後ろを見ると、クレア達が頭を下げながら出てきた。


俺は全く気付かなかったが、そんな予感はしてたので苦笑いせざるを得なかった。




「ふむ…まあ良いじゃろう。弟子よ、この陣の中央で跪くのじゃ。」




「分かりました。」




階段を上がり、魔法陣の中央で跪いた。




「これより、後継の儀式を執り行うのじゃ。」




『…っ!!魔法陣が…』




「おい赤く光ってるぞ!!すげー!!」




「こらクレア!!静かにしなさい!!」




「……汝、妾の後継者として吸血鬼になることを認めるのじゃ。」




そう言うと、師範は俺の頭を抑えて首元に噛み付いた。




『痛っ!!吸血か…?いや、何かが身体に入り込んでくる…!!』




「…ふむ。これで儀式は終わりじゃ。」




「えっ…これだけ!?」




「思ってたのと違ったな〜」




「スー!!そ、それは言っちゃいけないのです!!」




「元から見世物でないから当然じゃよ。」




『俺もそう思う。すぐ終わったし。』




「弟子よ、調子はどうじゃ?」




「何というか…身体がもぞもぞします。」




「すぐに収まるじゃろう。今身体の組織が作り替えられておるのじゃよ。」




「なるほど…」




待つこと数十分




もぞもぞした感覚がなくなり、身体の奥から力が湧いてくるような気がする。


師範が渡してくれた鏡を見てみると、目は赤く歯は鋭くなり、そして何より黒い蝙蝠のような羽が生えていた。




「えっ…この見た目は元に戻るんですか!?」




「当然じゃ。妾はその見た目ではないじゃろう?」




「確かに…」




「おぉ…!!かっこいいね〜!!」




「ありがとう、スー。」




俺の厨二心が疼くが…


ここは堪えて、後で1人になってから楽しもうではないか。




「これでお主は妾の後継者じゃ。…といっても、特にやることはないのじゃがな。」




「師範、今までお世話になりました!!これからもよろしくお願いします!!」




「気が向いたらいつでも来るのじゃ。」




「はい!!」




『寿命が伸びたことだし…これでこのファンタジー異世界を思う存分謳歌できるな!!』

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