第138話 冒険者学校 卒業

卒業試験が終わってから3日が経った。


ついに結果開示の日がやってきた。




「アルフレッド…オレ卒業できるかな…?」




「実技はいい感じだったし大丈夫だろ。」




「意外と評価は優しいと思いますよ。」




「そうだね〜」




十分に合格できる自信はあるのだが、それでもそわそわしてしまう。


前世の事象で例えるならば、大学受験のようなものだ。




そんなことを話しながら歩いていると、学校に着いた。


結果は教室で担任の口から、総合点の高い生徒から順番に発表されるらしい。




なかなか自分の名前が呼ばれないと恐怖を感じるやつだ。


胃をムカムカさせながらも、自席に座った。




数分後




「…よし、全員集まったな!!それじゃあこれから結果を発表するぞ!!」




「きゅ、急だな…」




「最初に話とかないのか…」




クラスメイト達も緊張しているようだ。


皆いつもより口数が多い気がする。




「まずは第1位!!筆記186点、実技200点の…」




「実技満点ってことは…?」




「ああ、あいつだろうな。」




「そう、アルフレッドだ!!」




『よっしゃぁ!!』




特例を設けてまで休学して修行の旅に出たので、これで1位ではなかったらどうなっていたのやら…


本当によかった。




「第2位!!筆記197点、実技188点のアイリスだ!!」




「1点差で負けましたか…」




「危なかった…内心冷や冷やしてたよ!!」




「いつか必ず勝ってみせます!!」




「ああ!!」




「第3位!!筆記174点、実技194点のスーだ!!」




「お〜!!思ってたより筆記高くて良かった〜」




「相変わらず緩いな。」




「卒業できれば何でもいいからね〜」




確かに俺も前世の大学ではそんな感じだった。


必要最低単位数だけ講義に出て、他は家で休んでいたものだ。




「第4位!!筆記176点、実技180点のイザベルだ!!」




「やっ、やったのです!!」




「良かったなイザベル!!」




「第5位!!筆記168点、実技162点のサマト!!」




「やったぁーー!!」




4位と5位の点差が26点もあるとは…




「お、おい…オレだけ呼ばれてないぞ…」




「ま、まあ大丈夫だろ!!…多分。」




「第6位!!筆記152点、実技175点のクレア!!」




「よ、呼ばれた…呼ばれたぞ!!」




「良かったなクレア!!」




「ああ!!」




筆記の点数があまり良くなかったせいだろう。


…良くないと言っても7.5割は取れているが。




『ふぅ…これで一安心だな…』




それから楽な気持ちで他のクラスメイト達の結果を聞いた。


全員実技はともかく筆記の点数が高かったので、喜ばしいことに留年する人はいなかった。




「これで結果開示は終わりだ!!各自身なりを整えて移動してくれ!!」




「…?アラン、この後は何を…?」




「ああ、そういえばアルフレッドには伝えていなかったな。今から卒業式だ。」




「えっ、えぇ!?」




「主席挨拶があるから考えておけよ!!」




「まじか…」




内容を考えつつ移動したが、なかなかまとまらなかった。


だが入学式同様、俺の前に教授達がありがたい言葉を長々と話している間に整った。




「続きまして、主席挨拶。主席アルフレッド。」




「はい。」




心臓をバクつかせながら壇上へ上がった。




「今日は私達のために卒業式を開催していただきまして誠にありがとうございます。(中略) 皆様がたのご活躍をお祈りさせていただき、御礼の言葉とさせていただきます。」




最後に深くお辞儀をすると、盛大な拍手が沸いた。


テンプレ通りで感動する要素などは無かったが、上手くこなせて良かった。




「これにて、卒業式を終了いたします。卒業生、退場!!」




司会の合図と同時に1、2年生が素早く移動し、道を作った。


俺達はアランの先導の元、その道を通って学校の門を出た。




俺は卒業式について何も説明を受けていないから困惑しているが…


クラスメイト達はそうではないようで、しみじみとした雰囲気が漂っている。




「…お前ら、今までよく頑張ったな。」




「ありがとうございます…!!」




「お前らは俺の自慢の生徒達だ。」




「はいっ…!!」




アランの言葉を受け、何人も感極まって涙を流している。




『…俺だけ部外者感あって気まずい。空気に同化してやり過ごすか…』




それから1人1人にアランが話をしていった。


話を終えると共に、何やらバッジのようなものを手渡していた。


前世で言うところの卒業証書のようなものだろう。




「…最後にアルフレッド。ついに負けちまったな。」




「ああ…」




「俺に勝ったんだ。S…いや、SSSランク冒険者になれよ?」




「ああ!!」




そう言うと、例の通りにバッジを渡された。


ただし、クラスメイト達がもらったバッジより豪華な装飾がついていた。




「…お前らは立派な冒険者候補生だ!!冒険者ギルドに登録するときにそのバッジを提出すれば、本来はGランクのところEランクで登録される!!」




「おおおおおお…!!」




「アルフレッドは主席だからDランクからだな!!」




『よっしゃぁ!!』




G〜Eランク冒険者は初心者扱いなので、薬草採取や危険度G〜Eの魔物討伐などクエストが簡単で報酬が少ないのだ。


対してD、Cランク冒険者は中堅扱いなので、危険度も上がるがその分報酬も高くなる。




大量に魔物を狩り、魔物素材を売却すれば低ランク冒険者でも報酬が良くなるという裏技を師範に教わったが…


その裏技は不要になってしまった。




『…まあどのランク帯でも使えるし不要って訳ではないか。』




「それじゃあお前ら!!立派な冒険者になれよ!!」




「はい!!」




ついに念願の冒険者になるときがやってきた。

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